第16話 抱きつき
相合傘、それは二人で一本の傘を差すことである。多くの場合、それは男女が密着して傘を差すことを指す。
それをしようと、雪音は瑞希に提案した。
「えっと……何言ってんの?」
「えっ、だから二人で傘を使えば万事解決でしょ?キミはボクに帰って欲しくて。ボクはキミを待たせることなんてしたくない。
それなら二人で一つの傘を使って帰ればいいでしょ?だから、相合傘。」
確かに、雪音に帰って欲しい瑞希と、瑞希を置いて行くなど許容できない雪音。それを解決する手段としては理に適ってはいる。
けれどそれを瑞希が認められるかと言えば別問題である。
「言っとくが、だいぶくっつくことになるぞ、折りたたみ傘なんだからなおさら。」
「えっ、それが?」
だからなんだと言わんばかりに雪音が答える。
雪音にとって瑞希限定であるがくっつくことは嫌ではなく、むしろどんどんと来て欲しい。そう思っている。最初にこれを提案した時は、そんなこと考えてなく、ただ単純に解決策がこれしかないのでは?と思っていたのでこのように提案したが、よくよく考えてみると、だいぶ良かったのでは?なんてさえ思う。
「いや、あのなぁ。ほぼゼロ距離だぞ?めっちゃ密着するんだぞ?いいのかよ。」
瑞希としてはこの提案は受け入れられない。別に雪音とくっつくのが嫌なわけではない。ただほぼ抱きつく形になるのだ。それを彼女に受け入れろというのはどうかという話であって、認めるわけにはいかなかった。
「だからいいけど?うん、瑞希だったら別にいい。……ほら帰るよ。」
そう言って瑞希の腕を引っ張る。
「はぁ、わかった、わかったから。
腕を引っ張るな。バック……バック取りに行ってくるからちょっとまってて。」
瑞希の叫びにより雪音は腕を放す。
その後瑞希はバックを自身の机まで取りに行き、雪音の元へ戻ってきた。
「お待たせ。それじゃあ行こうか。」
「うん。」
教室から出て、昇降口へ向かうために歩き出す。
「ねぇ、なんでキミはそんな早く引き下がったの?」
「なんでって……別になんでも良くないか?」
「はぐらかすの?……実は内心でボクとくっつきたいとか思ってたり……」
「いや、違うからな?」
「違うの?別に言ってくれればいつでもどこでも抱きつくよ?……こんなふうに。」
そう言って雪音が瑞希に抱きつく。
「っ……⁉おまっ、何やって……」
急に抱き着いてきた雪音に瑞希が驚きの声を上げる。
流石に抱き着いて来るとは思わなかった。
「雪音、離れろ……」
「むぅ……仕方ない……」
瑞希がそう言うと不服そうに雪音が離れる。
そんなこんなで歩いていると昇降口までやってきた。
靴を上履きから履き替えて外に出る。
案の定まだ雨はザァザァと激しく降っていた。
──────
追記
今回は少なめで申し訳ない……
言い訳になるかもですがちょっと体調が悪くなってしまいまして、おかげで昨日も投稿できなかったです。
申し訳ない……
最後に読んでくださった皆様に感謝を
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