第9話 二度目の正直の昼ごはん

「……ここかぁ、キミの言ってたところ。」


 あるお店を見つめながら、雪音がつぶやく。

 

「そうだぞ、ここは見た目はこんな感じだけど、普通に美味いからな。」


 学校が短時間で終わり、雪音と瑞希の二人は先日、定休日でやっていなくて、次の機会にと、言っていたお店へとやってきていた。


 瑞希の言う通り何か、ボロ臭いというか、古臭いという感じのお店ではあるものの、オススメのお店は?と、聞かれて彼がこの場所だと答えるくらいには、料理がうまいと思っているお店だ。


「へぇー、キミがそこまで言うんだ。楽しみだねぇ。」


「じゃ、入るぞ。」


 そう言って、扉をガラガラと開ける。

すると奥の方から、


「いらっしゃいませー‼︎」


と、男の大きな声が聞こえてきた。

その数秒後、声の主が奥から二人の方へやってきた。


「二名様ですか?」


「はい。」


 瑞希が答えると、男は一瞬目を見開き、こう言った。


「⁉︎瑞希の坊主じゃねぇか‼︎半年ぶりくらいか?久しぶりだなぁ……」


「はい、お久しぶりです。欣治さん。」


「おう。元気そうで何よりだ。」


 そう言って彼は嬉しそうに笑う。


 何やら瑞希と彼は知り合いみたいである。


「雪音。この人は鷹松欣治たかまつきんじさん。

俺の両親の知り合いだった人で、小さい頃たまに来ててね、それで顔見知りではあるんだ。」


「へぇ、なるほどね。急に話し出すからびっくりしちゃった。

あっ、鷹松さん、どうも。

ボクの名前は桜花雪音と申します。」


 雪音も欣治へと自己紹介をする。


「おお、これはご丁寧にどうも。

一応さっきこいつから紹介があったと思うが、おれは鷹松欣治っていうもんだ。

一応ここの店長でもある。よろしくな雪音の嬢ちゃん。」


「はい、よろしくお願いします。」


「まさか、瑞希の坊主がこんな別嬪さんを連れてくるとはなぁ……珍しいこともあるもんだ。それで……お前らは学校の帰りで、わざわざここまで昼飯を食べに来たといったところか。」


「ええ、そうですよ。」


「わざわざここまで来る必要無いと思うけどねぇ。まぁ取り敢えず、座りなよ。」


 そのまま席へと案内される。

そして欣治は瑞希たちに、決まったら呼んでくれ、と言い残すと静かに厨房へと踵を返した。


「はい、メニュー。」


 席に座った後瑞希がメニューを雪音へと渡す。


「ん、ありがと。」


 渡されたメニューを開き、中身をみる。


「……ねぇ瑞希。どれがキミのオススメ?」


 一体どの料理がうまいのか、美味しい中が分からなかったので瑞希にオススメを問う。


「オススメかぁ、個人的には唐揚げ定食だけどね。大体いつもこれを頼んでるし。それに今日もこれを頼むからね。」


「唐揚げかぁー、ちなみにこれってどんくらい量あるの?凄く多かったりする?」


「量?うーん、少なくともめちゃくちゃ多いわけじゃない。ただコンビニ弁当とかよりかは全然多いぞ。」


「うーん、それならこれにするかぁ、多少多くてもいけるでしょ。」


「あぁ後飲み物とか頼むか?」


「飲み物ねぇ、どうしようかな、うーん……ボクはそうだね、りんごジュースで。」


「ん、了解。」


 二人とも頼むものが決まったので早速注文する。


「すいません!!注文いいですか。」


「はーい、今行きます。」


 すぐに二人の元へ欣治がやってくる。


「はい、注文どうぞ。」


「唐揚げ定食二つと、りんごジュース、それに、アイスコーヒーを。」


「はい、唐揚げ定食二つに、りんごジュース、アイスコーヒーね。お飲み物は先に持ってくるか、食事と一緒に持ってくるかどちらにします?」


「雪音。どうする?」


「うーん、一緒でいいと思うけど。」


「一緒でお願いします。」


「了解致しました。ではご一緒にということで。」


 それだけを告げると颯爽と戻っていった。


「っていうか瑞希。キミって本当にアイスコーヒー好きだね。」


「えっ、そうか?」


「うん、そうだよ?昨日も飲んでたし、今日学校でも飲んでたでしょ、なのにまた飲むんだなぁって。」


 雪音の言う通りである。

昨日彼女が来るまで飲んでいたし、ファミレスでも何杯か飲んでいた。そして、今日また学校でも飲んでいたのだ。それ故に雪音とってはアイスコーヒーを飲んでいるイメージしかない。


「うーん、そっか。そんなに飲んでたか。」


「うん、あまり飲み過ぎないでね?カフェインの取りすぎも良くないし……」


「あぁ、うん。心配掛けちゃったな。これからは気をつけるよ。」


────


 暫く雑談をしていると、遂に料理がやってきた。


「お待たせしました。唐揚げ定食です。」


 そう言って二人の前に置かれる。


「それと、りんごジュースとアイスコーヒーです。」


 りんごジュースが雪音の前に、アイスコーヒーが瑞希の前に置かれる。


「以上で注文の品はお揃いでしょうか?」


「はい、大丈夫です。」


 一礼して踵を返し、去っていく。


 雪音が前に置かれた唐揚げ定食をみる。


「大きいねこの唐揚げ。」


 ここで出される唐揚げはだいぶ大きいが、そのかわり個数は少なめなので量的に言えば一般的なものと大差ないのかもしれない。


「「いただきます。」」


 そう言って食べ始める。

最初は二人とも唐揚げから食べることにした。


「……熱っ!!」


 雪音が少し悲鳴を上げる。

まだ出来立てホヤホヤなので、熱がだいぶ残っていて結構熱かった。


「……でも、美味いね。うん、瑞希の言う通りだ。」


「そう言ってくれるならオススメした甲斐があったよ。」


 美味かった。それこそまた来ようかなと思うくらいに。


──あっという間に食べ終わってしまった。


「じゃあそろそろ行くか。」


「うん、あぁ今回はこないだの約束通りボクが払うからね?異論は認めない。」


「……分かってるよ。ありがとな、雪音。」


「いやいや、礼には及ばないよ、昨日奢ってもらったのはボクの方だしね。」


「それでもだ。」


「……そう。」


 二人で話しながら席を立ち、勘定場まで歩いていく。


「すいません!お会計良いですか。」


 雪音が少し大きな声で呼ぶとすぐにやってきた。


「お前ら、お帰りか。」


「はい、ご馳走様でした。」


「ご馳走様でした。美味しかったです。」


「おう。そう言ってくれると作った甲斐があるってものよ。あんがとさん。

それじゃあ会計は1680円になります。」


 丁度の額を雪音が渡す。


「はい、こちらレシートになります。」


 レシートを受け取りサイフの中にしまう。


「それじゃあご馳走様でした。」


 そう言って瑞希が扉を開けて外に出る。

それに続き雪音も外へ出る。


「それじゃあまたな。またお前らに会うのを楽しみに待ってるぜ。」


 二人は一礼する。

そして瑞希が扉を閉め終わると、一言。


「それで、次は買い物だっけ?」


「そう。まぁボクは場所が分かんないから瑞希頼りになるんだけどね。」


「それじゃあ行こうか。」


「うん。」


 二人して並び歩き出す。

昼ごはんを食べた後は二人で買い物。

 瑞希は認めないと思うが、買い物デートである。

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