第10話 デート?

 瑞希と雪音の二人は歩いて……ではなく途中でバスに乗ってショッピングセンターまでやって来た。別に歩いて来ても良かったのだが、暑かったのだ。

流石八月というべきか、30度超えの中、そしてなおかつ燦々と降り注ぐ陽射しの中、数キロも歩くのは流石にしんどかったのだ。


「丁度バスが来る時間でよかったね。流石にこの暑さの中歩くのはボクも辛い。」


「昼飯食べる前は曇ってはいたんだけどなぁ。なんで晴れちゃったのかね……バスに関しては本当運が良かったと思うよ俺も。」


 バスに乗ることになったのはたまたまである。偶然バス停の時刻表を見たらもうすぐ来るのが分かったので、少し待ってバスに乗っただけである。時刻表なんて見ずにそのまま歩いてたり、あるいは来る時刻が遅かったりしたのであれば待つことなどせずにそのまま歩いて向かっていただろう。


「それじゃあ早速、服を見に行こう‼︎服を‼︎」


 そう言いながら瑞希の腕を引っ張っていく。


「あっ、ちょっと……引っ張るな、引っ張るな。早く行きたいのは分かったから。」


 瑞希がそう言うと引っ張っている腕を離す。

そんなに、はしゃぐことか?と思うが自分と彼女では考え方が違うんだろうなと自己完結する。


「あっ、ごめん……痛くなかった?

なんというかこうしてキミとお出かけしてるって思うとテンション上がっちゃってねこう見えてもボクは楽しみにしてたんだよキミと出掛けるのをさずーっとねだからまたテンション上がっちゃうかも知らないけど許してね。」


 早口だった。

それも息継ぎしないくらいに。


「お、おう。」


 このような彼女を見たのは初めてな気がする。だからといって特別何か思うわけでは無いが。というか逆にここまで自分とのお出かけを楽しみに想ってくれるのは嬉しいなとさえ思う。ただそれでも少しは困惑したが。


「?それじゃあさっさと行こう!キミの服を買いに‼︎」


 瑞希がこうして雪音と買い物に来たのは自身の服を買うためである。瑞希自身あまり服に対しては無頓着というか、着れればそれで良くない?と思っているタイプのは人間ではあるものの、もうすぐ秋なのでそれ用の服を買おうと思っていたのだ。

それにタイミングよく雪音と昼食の約束があったので、せっかくだし彼女に選んでもらおうと誘ってやって来たのである。

まぁもっとも、こんなに喜んでくれているとはおもわなかったが。

 

────


 そして雪音に連れられ、ユ、から始まる大手洋服店へとやってきた。……のだか、もうかれこれ1時間弱、服を見て回っている。


瑞希の手元にはそれなりの数の洋服がある。

まだ試着もしていなくて、一通り見て回ってからするということなのでまだそれなりに時間がかかるであろう。

 

(これは結構長引きそうだな……)


 瑞希の目の前で楽しそうに服を選んでいる雪音を見てそう思う。

 

 ただ瑞希としては別にこの時間が苦痛だと思っているわけではない。むしろ楽しいとさえ思っている。元々服選びには時間がかかると思っていたし、こうして彼女が必死に選んでくれているのだ。感謝こそすれ苦痛に感じることや、急がせるといったことはあるはずがない。

むしろこうして、ああでもない、こうでもないと選んでくれている姿を見ると微笑ましくなるくらいだ。


 それから、後数十分ほど見て回り、いよいよ試着っていうところまでやってきた。


 現在、瑞希と雪音の二人は店員に一言声をかけて試着室まで来ていた。


「それじゃあ着替えるまでちょっと待っててくれ。」


「うん。了解。」


 それなりに時間がかかるかもしれないと言って瑞希が試着室へと入っていく。

それから1.2分後着替えが完了した。


「着替え終わったから開けるわ。」

 

 そう言ってカーテンを開ける。


「えっと、どう?」


「……」


「雪音?」


「……決めるのは一旦全部見てからで良い?」


「別にいいけど。」


「そういえば瑞希。キミは何着、服を買うつもり?」


「うーん、そうだなぁ。3着?多くても、5着くらい。一応家に何着かあるからなぁ。」


「ん、分かった。じゃあ次の服に着替えてくれる?」


「了解。」


 そう言ってカーテンを閉める。


──それからしばらくして全ての服の試着が終わり、瑞希も元の制服姿へと戻り、長き?洋服選びは終わりを告げた。


「で、雪音。結局どれがよかった?」


「うーんそうだね……ボクとしては1着目と4着目、5着目、あと最後のやつかなぁ、思うよ4着になっちゃったけどね。」


「ん、分かった。じゃあそれ買うわ。」


 そう二人で話していると側に控えていた、20代くらいの女性の店員が声をかけてきた。


「お客様もうお決まりでしょうか?」


「あっ、はい。すいません、時間がかかってしまって。」


「いえいえ、私の方こそ本気で似合うものを選んでいるんだなぁと微笑ましい気持ちになりましたので、良いものを見させて貰いましたよ。あとは、お買い上げにならないものはこの場に置いていってもらって構いません。私が後ほど戻しておくので。」


「そうですか、ありがとうございます。」


 瑞希と雪音の二人は頭を下げる。


「それじゃあ、雪音。会計に行くか。」


「うん。」


 そのまま二人は買う服を持ってレジまで歩いき、会計を済ませる。


 店を出ると、瑞希は腕時計を見て時間を確認する。


「あれ、もうこんな時間か、結構時間かかったな。」


 雪音もつられて自身の腕時計を見る。


「あぁ本当だ。ごめんね。ボク、自分の予想以上に気合い入っちゃった。」


「あぁ、いいのいいの。俺も楽しかったからさ。……ありがとな、俺のためにこんな真剣に選んでくれて。」


「当たり前だよ?キミには普段からお世話になってるからね。」


「それをいうなら俺の方こそだと思うけどね。」


 そう言って苦笑する。


「それじゃあ暗くなる前にさっさと帰りますか。……雪音、今日は楽しかった。ありがとう。」


「それはボクのセリフだよ瑞希。」


──そして、歩いて駅まで行き、改札で二人は別れ、各々家へと踵を返した。



 

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