第4話 お昼ご飯 そして……
「あらためまして、これからこっちでもよろしくね、瑞希。」
「あぁ、こちらこそよろしく、雪音。」
今日初めての言葉を交わす。
こうしてお互いに会って話すのは久しぶりである。それでもいつも通話だとしても喋っているのにも関わらず、こうして対面で話すのは少し緊張する。なんだかそれが可笑しく思えて笑ってしまいそうになる。
互いに話したいことはたくさんある、けれど、なかなか話し出すことができない。
数秒間の沈黙。
先に話し出したのは瑞希の方だった。
「……とりあえず場所を変えるか。」
「えっ……」
残りのコーヒーを飲み干し、席を立つ。
雪音も瑞希の後をついて行く。
外に出て、瑞希が一言。
「さて、これからどうするか……」
「何も決めていなかったの⁉」
雪音がそうツッコむ。
何かしら決めているのかと思っていた。
「いや、だってな……さすがにあそこに居座るのは迷惑になるからな。」
「……そうだけどさ、何かしら決めていると思ったんだけどね。」
「とりあえずもう時間が時間だし……」
言葉が止まる。
「昼ご飯にする?」
「昼ご飯にするか。」
二人が同時に口を開き、声が被る。
お互いに顔を見合わせる。
そして笑い合う。
「じゃあ昼にするか。」
「瑞希、キミに場所は任せよう。ボクはここら辺のこと知らないからさ。」
「任されました。とっておきの場所を紹介しよう。」
そして二人で歩いていく。
───────────
「……ここがキミのとっておきなの?」
ジト目を向けながら呆れたように瑞希へ問う。
「お前……この店を悪く言うなよな、学生にとってありがたいお店なんだぞ。」
主に金銭的な意味でだが。
「とっておきの場所を教えてくれるってキミが言うから、楽しみにしてたのに……ファミレスって。」
「いやぁ、向かってる途中に今日は定休日だったことを思い出してさ、急遽場所を変えたわけ、少なくともファミレスだったらハズレ無いし此処でいいかなと。雪音が嫌なら別の場所にするけどどうする?」
「ここで良いよ、嫌じゃ無いしね。」
嫌なわけでは無い。なんならファミレスはそれなりに行くことがあるし、結構好きだったりする、ただその落差に驚いただけであるだけなのだ。
「今回行こうとしてたところはまた今度な。」
「うん、楽しみにしてる。」
会話が終わると瑞希が扉を開き、店の中へと入る。
「いらっしゃいませ、二名様でよろしいですか?」
「はい」
店の中に入るとすぐさま店員がやってきて席へと案内される。案内された席は結構端の方であり、あんまり人の目につかないような場所だった。
早速座る。座った位置は互いの真正面の位置だった。
「まず注文してから色々と話すか。」
「うん、そうだね。あ、ボクもう注文する物決まってるから、瑞希が決まったらもう押しちゃって良いよ。」
「ん、了解。」
瑞希は頼む物を決めると注文ボタンを押す。
するとすぐに店員が注文を取りに来たので注文を頼む。
さて、もう注文し終わったし早速話そうかと瑞希は思ったがその前に
「飲み物取ってくるか。」
雪音が頷く。
勿論ドリンクバーも頼んでいたのでさっさと飲み物を取りに行く。偶然か必然か、奇しくも、二人とも同じ飲み物を選んでいた。
アイスコーヒーの入ったグラスをテーブルに置いて席へと座る。
「「……」」
互いにミルクとガムシロップを入れてかき混ぜる。
そして一口。
アイスコーヒーの入ったグラスを持ちながら瑞希が話し始める。
「……それで、ちゃんと説明してくれるよな?」
「何のこと?」
「惚けるつもりか?」
「まぁでも瑞希には言ってた筈だよ。
『次に会うのを楽しみにしてるよ』ってね。」
「いや、まぁ、確かにそう言ってた気がするけど……」
「でしょー」
確かにそう言ってはいたけれど、てっきり言い間違いか何かだと思っていたのだ。まさか本当に言葉通りとは思ってもみなかった。
「まぁボクとしても、このくらいじゃ分からないだろうなとは思っていたんだけど、
単純にキミの驚く顔が見たかったからさ。」
そう答えると静かに笑う。
「それにキミのあの表情、すごかったよ?
めちゃくちゃ驚いてるのが一目見て分かるくらいにはね。」
「逆に聞くが驚かないとでも?」
本来で有ればそこに居ない、いるはずのないと思っていた人物が目の前にいたのだ驚かないはずが無い。
「確かにねー、ボクだってその状況になったら感情が爆発しそうだもん。」
……主に彼に対する想いの部分だか。
そう答えるとグラスを手に取り、アイスコーヒーを一気に飲み干す。
「ちょっと飲み物取ってくるね。」
「うん、行ってらっしゃい。」
雪音が飲み物を取りに席を立つ。
それから2分くらいが経過し、戻ってきた。
「長かったな。」
「混んでた。」
「なるほど……」
雪音が席に座る。
それを確認すると瑞希が話し始める。
「そういえばさ、制服、うちの高校の制服なんだな。」
改めて、彼女の姿を見た時、思ったのだ。わざわざ買い替えたんだなと。
「ん、制服ね、ちょうど買い替えようと思ってたし、ちょうどよかったんだよ。」
「へぇー、タイミングが良かったと。」
「ん、そゆこと。
キツくなってきてたからさ。」
「それってふとっ……」
「瑞希?それ以上は禁句だよ?」
瑞希の言葉に雪音が被せる。
……女性相手にその言葉はいけない。
「じゃあ、肉付きが良くなったと。」
「……言い方の問題じゃないからね?」
例え言い回しを変えようと女性にその話はダメなのだ。
「あっ、はい。すいませんでした。」
「うむ、わかればよろしい。」
許された。
「というか、大きくなったのはこっち。」
そう言って自身の胸を指差す。
瑞季の視線が指先へと向く。
暫くの間じっと見つめ、その後パッと目を逸らした。
「「……」」
「えっち……」
頬を朱く染め上げて、ジト目を向けながら、今にも消えそうな声で呟いた。
「……いや、お前が誘導したんだろうが‼︎」
その通りである。彼女が指差さなければ、気にすることもなかったのだから。
ただ一つ言うならば……
(破壊力が凄かったなぁ)
ただそれだけである。
「だって、思ったよりも恥ずかしかったんだもん。」
他の人に視線を向けられたとしても、ただ不愉快なだけだったのに、彼に見られていると思ったら物凄く恥ずかしくなってしまったのだ。
「「……」」
一旦この空気をどうにかする為に、瑞希はグラスに入ったアイスコーヒーを全て飲み干し、席を立つ。
「あー、飲み物取ってくるわ。」
「あっ、うん。」
それから少しばかり時が経ち、瑞希が戻って来た。
雪音が瑞希の持っている飲み物を見て一言。
「また、アイスコーヒーにしたの?」
「ん?あぁこれはカフェオレ。」
「なんだ、またアイスコーヒーにしたのかと思ったよ。」
暫しの無言。
先程までの気まずい空気ではないが、やはりさっきのことを思い出してしまう。
「ねぇ、瑞希、キミに一つ聞きたいことがあるんだけどいい?」
「なんだ?答えれることなら答えるけど。」
雪音が口を開く。
「……キミがさ、朝話してた、長い黒髪の女の子いるでしょ?その子とはどんな関係?」
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