第5話 何故だか背筋が寒くなる
「……キミがさ、朝話してた、長い黒髪の女の子いるでしょ?その子とはどんな関係?」
そう雪音が問う。
別に何か、責められているわけでも、怒られているわけでもないだろう、ただそこはかとなく背筋が寒くなるような圧を感じる。
それに、彼女の顔は怒っているわけでもなく、或いは真顔だというわけでもない、微笑んでいるのだ。その笑みが圧を増幅させているようにさえ感じる。
あと特質すべき点を言うならば、目から光が消えているように感じなくもない。が多分気のせいである。気のせいなはずだ絶対に。
瑞希はカフェオレを一口飲み、グラスを手に持ったまま答える。
「それって雪音が来た後の時のことだよね?」
首を縦に振る。
おおよそ、彼女が指している人は予想が付くが、万が一間違えていたらあれなので、確認を取る。
「うーんそうだねぇ。一応友人かなぁ。」
大体彼女と話すときは和真が一緒にいる。
二人だけで話すこともあるが、あまりそうゆう機会はない。ただ瑞希としては友人だとは思っているので、そう答えたのだ。
「一応って?」
雪音もそこが気になったのであろう。瑞希にそう問いかけて来た。
「ん?あぁ、あいつとは今でこそそれなりに話すことも増えたけど、元々関わりがなかったからな。関わり始めた理由としては俺の親友の彼女だからってことが大きいからな。」
(なんだ、あの子は人様の彼女だったか。)
あぁ良かったと雪音は密かに安堵した。
瑞希と仲良さげに話すものだから、てっきり
「なるほどそうゆうこと。うん、わかった答えてくれてありがとう。」
「というか、なんでこんなこと聞いたんだよ?」
「えっ、キミの口から女の子の話とか全然聞かないからさ、ちょっとびっくりしただけだよ?」
彼女の答えたことは本心ではある。ただ大元が隠されているだけで。
「なるほどそうゆうことだったか。」
確かにあまり話したことはない気がする。
まぁそもそもそんなに話すことはないのだけれど。
そして──
「お待たせしました。」
タイミングよく?頼んだ料理が運ばれて来た。店員は全ての料理を置き終わるとすぐに戻っていった。
「それじゃあさっさと食べるか。」
その瑞希の言葉を合図に、食べ始める。
──────
食事中は他愛ない話をしているだけだった。そしてご飯を食べ終わり、もうそろそろ店を出ようかというところで二人は少し言い合いになっていた。
「だーかーらー、ボクが払うって言ってるの。」
「いや、駄目だ。俺が払う。それかせめて、割り勘だ。」
一体何を言い争っているかというと、どちらが昼ご飯代を払うかというだ。
はたから見ればこの人たちは何を言い争っているんだとツッコミを入れられそうではあるが、当の本人たちは真剣である。
……普通逆ではないだろうか。
二人の言い分はこうだ。
雪音は、ボクが急に誘ったのだからこれくらいは払わせてくれと。
瑞希は、俺がこの店を選んだのだし、それにだいぶ前、半年以上前のことにはなるが、雪音の両親と一緒にご飯を食べた時に奢ってもらったのだからその時の借りを少しでも返させてくれと。
これが各々の言い分だった。
結局のところ中々決まらず、最終的に、今度二人で食べるときは自分が奢るという条件付きで雪音が折れた。というか瑞希に言いくるめられた。
何はともあれ決まったので、会計を済ませてお店を出る。
「ありがとね、瑞希。」
そう言って頭を下げる。
「まぁこのくらいはな。……それで今日はこのくらいかな?この後用事があるんだろ?」
「うん、ごめんね。ボクとしてはもっとキミといたいんだけどさ。」
「そう言ってくれるのは嬉しいが、まぁもういつでも会おうと思えば会えるようになったんだし、それに、明日も会うだろ?」
「うん……それじゃあまた明日ね。」
「あぁ、また明日な。気をつけて帰れよ。」
後ろ髪引かれる思いではあるが踵を返し、
歩いて行く。
瑞希はそれを見届けてから、歩き出した。
──────
瑞希は帰った後、執筆をしたり、本を読んだり、晩御飯を作ったりして過ごした。
そして現在の時刻は20時である。
もう晩御飯は済ませてあり、これからある人と通話をすることになっている。
瑞希は両耳にイヤホンを挿し、通話に入ってくるのを待っていた。
そして、それから一分もしない内に、
ピコン
と、入室を知らせる音が聞こえて来た。
渋い男の声が、イヤホンから聴こえる。
「急にごめんね、瑞希くん。」
「いや、全然大丈夫ですよ。それでどうかしましたか、慎吾さん。」
瑞希に通話をかけて来た人物の名前は、
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