【其の十四】
祥吾と葵は闇に支配された廊下をひたすらに歩いていた。三階の階段から二階に行った時、葵が発見した血文字が書かれている鏡の前で祥吾は立ち止まる。
「なにか気になるの?」
「いや……なんでもない」
それだけ言うと、祥吾はまた歩き出す。その時の祥吾の表情が険しくなっていることに葵は気付いていない。そのまま二人は二階に降り立った。
「葵?」
二階の廊下を歩き始めた二人の背後から声がして、視線を後方に向けるとそこには司が立っていた。
「司?大丈夫だった?」
「あぁ、俺は大丈夫……ってか、なんでそいつがいんの?」
葵の横にいる祥吾が気になったのか、司がそう言った。
葵は祥吾から聞いていた話をそのまま司に伝えた。司は「ふ~ん」と言ったきり押し黙った。
——なに、この重苦しい空気は?
沈黙に耐えられなくなった葵は、ゆっくりと口を開いた。
「……ねぇ、とりあえず早く身体を探そう?」
司は頷き葵と共に廊下を歩き出す。その後を祥吾が付いて行く。
「キャハハハハハ!!」
「……!?」
三人が歩き出した直後、二階の廊下にあの甲高い笑い声が響き渡る。条件反射で、三人は笑い声が聞こえた方向を確認することなく走り出した。
笑い声は三人の後方から聞こえているようで、その笑い声は物凄い速度で近付いて来ている。長い間廊下を走っていた三人の体力はすでに限界に達しており、走る速度も落ちてくる。
「キャハハハハハ!!」
——やばい!?笑い声がそこまで来てる……
気付けば笑い声は三人の真後ろから聞こえている。葵はゆっくりと後方を確認した。すると、そこには血塗れの女が不気味な笑顔を浮かべながら追いかけてきていた。
葵がもう駄目だと思った瞬間、後方から物音がして振り返ると司が倒れていた。祥吾が司を転倒させ、囮にしたのだ。祥吾が葵の腕を引っ張り、近くの教室に身を隠した。
祥吾は身を隠した教室の扉の隙間からその光景を黙ってみていた。囮となった司は頭を抱え、その場に倒れ込んで動かなくなった。女は司には目もくれず、祥吾たちの元へと近付いてくる。その時の女の表情は不気味な笑みではなく、怒りの表情をしていた。
「……どうして?」
その一言で葵が何を言いたいのかを悟る祥吾。
「言ったろ?関係があるかどうかを確かめるって」
「だからって、司を囮にしな……」
葵が言葉を全て言い終わる前に止める。前方から視線を外せないでいる。葵と祥吾の前には、あの女が立っていたからだ。
「キャハハハハハ!!」
甲高い笑い声を教室内に響かせながら、葵の左足・祥吾の左腕を掴むと引き千切った。二人は激しい痛みに襲われ、教室の床に倒れ込んでしまう。
消えゆく意識の中で、祥吾は女を見上げていた。女の身体からはどす黒い霧状のオーラが視えていた。
****
祥吾が目を覚ますと、旧校舎の理科準備室で寝ていたことに気付く。上半身を起こし。左腕を確認すると、赤い手形がくっきりと付いていた。
——想像以上だな。まさか、痛みまで感じるとは……
立ち上がった祥吾は理科準備室を後にした。教室に向かう道中、耕平と遭遇し教室まで一緒に歩いていくことになった。
「どうした?すごい汚れてね?制服」
制服の汚れが気になったのか、耕平は祥吾に尋ねる。
「別に……」
祥吾はそれだけ答えると、教室の扉を開けて入っていく。それに続いて耕平も教室に入っていった。席に着いた祥吾の元に怒鳴り込んできた人物がいた。その人物は司だった——。
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