【其の十三】
「このままじゃ全滅する!とりあえず別れるぞ!!」
そう言って司は渡り廊下を渡り、新校舎の特別棟へと移動した。莉子はそのまま三階の一番近い教室に入り身を隠す。葵はそのまま三階の廊下を突っ切り、反対側の階段から二階に戻る。
女の甲高い笑い声は三階から聞こえるようになり、莉子のことを心配するも自分ではどうにも出来ないと思い、二階の廊下に足を一歩踏み入れた瞬間あの笑い声が葵の鼓膜を刺激した。
「キャハハハハハ!!」
――なんで!?さっきは三階から聞こえていたのに……
戸惑う葵の耳にはまだあの甲高い笑い声が聞こえてきている。恐怖で足が動かない葵の元へ徐々に笑い声が近付いて来ている。
葵の呼吸は荒くなり、身体からは大量の汗が噴き出す。
――もう、ダメだ!!
声が出ないように両手で手を覆い、両目を固く閉じる。もう目と鼻の先まで近付いて来ていた時、後ろから腕を引っ張られる。咄嗟に後ろを振り向く葵だが、考える暇もなく今降りてきた階段を今度は駆け上がっていた。
三階の廊下を駆け抜け、一番奥にある生徒指導室の扉を開け身を隠した。段々暗闇に慣れてきたのか、葵を助けた人物が誰なのか
「祥吾君!?」
そこには何故か祥吾の姿があった。祥吾がこの場にいることが不思議で葵は疑問に思っていることを聞こうとした。
「自分で確かめる方が早かったからね」
葵が疑問を口にしようとするよりも早く祥吾が答えていた。何を言っているのか分からないといった表情で、葵は祥吾を見つめていた。
****
時は遡り、時刻は二十三時四十五分。祥吾は旧校舎へと来ていた。彼の目的は理科準備室で、決意の籠った表情で扉の前に立った。
——どんどん色が濃くなっている。そこまで猶予もないのかもな
理科準備室の扉に手を掛け開けると、祥吾は中へと入っていく。理科準備室の中は埃がかぶっており、至る所に蜘蛛の巣が張られている。祥吾は室内の中央まで来ると、足を止め顔をしかめた。足を止めた付近の床を、祥吾はずっと見つめていた。
祥吾が見つめていた床だけ、埃はかぶっておらず、代わりに血のシミのようなものが、床にこびり付いていた。
シミが付いている床を剥がしていくと、祥吾はあるものを発見した。
「これか……」
そう呟いた瞬間、祥吾の頭の中に言葉が聞こえてきた。
”私の身体探して”
咄嗟にスマホの待受けを確認すると、時刻は深夜0時になっていた。祥悟がその言葉を聞いた瞬間、意識は途切れその場に倒れ込んだ。
****
「……ということで、今ここにいる」
表情一つ変えずにそう言ってのける祥吾に、呆気にとられる葵。
——ホントになにを考えているか分からない。自分が危険になるのにどうして?
葵が頭を抱えて悩んだ時、ずっと疑問に思っていたことを思い出し祥吾に問い掛けた。
「ねぇ、なんであの時司の苗字を聞いてきたの?この件とは関係ないよね?」
「関係ないとは言い切れない。関係ないかどうかをこれから確かめに行くんだよ」
祥吾はその場から立ち上がり、生徒指導室を出て行こうとする。もう、あの甲高い笑い声は聞こえなくなっていた。葵も立ち上がり、祥吾の後を付いて生徒指導室を出て行った。
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