【其の十二】
「おい、葵?起きろ」
「んっ……」
司の声で目を覚ました葵は、周りを見渡している。どうやら今度は昇降口ホールで寝ていたようだ。
「いつまで寝てんの?早く行こ」
莉子の手を握り立ち上がると、三人は例の女の身体を探すことにした。目的が出来たことによって、三人の足取りは軽かった。しかし女に見つかれば、一貫の終わりだ。
「まず、一階から調べよう」
司がそう言って、三人は一階にある職員室から調べることにした。扉を開け、スマホのライトを頼りに机の下や棚の中など次々と探していく。だが、身体が見つかることはなかった。
「よし、次行くぞ」
司の言葉に二人は頷き、職員室を出て次に向かった。それから一階を調べ尽くすも女の身体は見つからなかった。
「一階は見つからなかったね」
直ぐに見つかると思っていた三人は意気消沈した。このまま見つからなかったらと考えているのか三人の表情が曇る。葵たちの周りには重苦しい空気が漂っている。
その空気を払拭するかのように、司が声を上げた。
「でも、まだ二階と三階がある。そこで身体が見つかるかもしれない」
その言葉に莉子は頷き、「そうだね」と答えた。一方葵は何かを思い出そうとしているのか、腕組みをして考え事をしている。その姿を見た莉子が葵に声を掛けた。
「どうしたの?葵」
「うん……二階と三階の間になにかあったと思うんだけど、何があったのか思い出せなくて」
スッキリしないといった表情を浮かべている葵に、司は「とりあえず先に進もう」と言って二階に続く階段を上り始めた。その後を二人が歩いていく。
二階には二年の教室が並んでいる。三人は二年一組の教室から順に探していく。
「二階にもないのかよ……」
途方に暮れる司と莉子。そんな中、葵は何かを思い出したのか二人の方に視線を向けて口を開いた。
「二階から三階に行く階段の踊り場……」
「踊り場?」
葵の言葉に莉子は聞き返す。
「そう!さっき思い出したんだけど、二階から三階に行く階段の踊り場にある鏡に血文字で数字が書いてあるって言ったでしょ?それ見に行こ?」
葵が以前言っていた踊り場にある鏡に書かれていた血文字の数字。司と莉子がまだ見ていないということで、三人はそこに向かって歩き出す。
****
「これって……」
葵が問題の鏡を前にしてボソッと呟いた。
――前に来たときは四って書かれていたはずなのに、なんで三になってるの?
どういうことだろうと額に手を当てながら考え込む葵。頭が混乱して考えがまとまらない葵を尻目に、司と莉子は奇妙なものでも見るような目で鏡を見ていた。
「キャハハハハハ!!」
鏡を見つめている三人の耳に、何度も聞いた女の甲高い笑い声が聞こえてきた。周りを見渡す三人。笑い声は一階から聞こえてきているようだった。慌てた三人は、急いでその場から走り去り三階へと向かった。
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