【其の十一】

 祥吾と耕平は葵、司、莉子の三人と合流していた。空はオレンジ色に染まっており、外では人が忙しなく行き交っていた。


「私たちじゃ、なんの解決もできない……だから、力を貸して」


 葵は真直ぐに祥吾の目を見て、両手を合わせ懇願した。早くこんな日常から解放されたい、普通の生活を送りたいと、葵の目はそう語っている。


「まずは、女の身体を探した方が良い」


「女の身体?」


 ため息を吐きながら言った祥吾の言葉に葵は聞き返す。葵の両隣にいた司と莉子の二人は、お互いに顔を見合わせた後に祥吾の方へ視線を移し首を傾げていた。


「あぁ、意識を失う前に言葉が聞こえなかったか?」


「言葉……あっ!!」


 葵が何かを思い出したかのように両手を叩く仕草をして、目を見開いた表情をした。


「そういえば、私の身体探してって頭の中に聞こえてきて……」


 ――やっぱりな。何が目的で身体を探しているのかはわからないが、この件を解決するには、女の身体を探すこと。それに早くしないといずれここにいる三人も……


「用務員のおじさんに聞いたんだ。過去にも同じように女に追い掛けられる体験をした人がいたって……。その経験をした五日後にその人は亡くなったそうだよ」


 祥吾の言葉に目を見開き、驚きの表情をする三人。耕平は咄嗟に祥吾の腕を引き「おい、どういうことだよ?」と口にする。


「だから、この体験をした人は……」


「違うって!!」


 祥吾の言葉を遮り、耕平は更に言葉を続ける。


「なんで死んだなんて言ったんだよ!言って良いことと悪いことがあるだろ」


 いつになく真剣な表情の耕平は、祥吾にそう言った。


「いずれ分かることだろ?それに、あの三人が死ぬ前に解決すればいい」


 さらっと受け流す祥吾。


「じゃ、あの女の身体を探せば俺たちは助かるのか?」


 祥吾と耕平の間に割って入って、司が思ったことを口にした。


「あぁ、確証はないけど助かる可能性は十分にあると思う」


 祥吾がそれだけ言うと、葵だけを残しあとの二人を帰らせた。


「何で私だけ?」


 疑問を祥吾にぶつける葵。


「少し話がある」


 葵の問いに祥吾は短く答える。


 そっと葵の耳元で何かを言っている祥吾。そんな光景を耕平は少し離れた所で見ていた。


****


葵は自室に籠って一人考え事をしていた。


 ――祥吾君、なんであんなこと聞いたんだろ?司の苗字なんて関係ないと思うけど?


 祥吾が言っていたことが気になり、考え込んでいたが全く分からない葵はスマホの待ち受けを確認した。時刻は二十三時五十分になっていた。


 ――あともうちょっとであの声が聞こえてくる……


 不安な表情をする葵。心臓の音が徐々に早くなっていき、両手で胸のあたりを押さえている。そんな時、葵のスマホが鳴りだした。


 スマホの待ち受けを確認すると、司からの着信だったようで葵は通話ボタンを押して耳にスマホを当てた。


『葵か?』


「うん……どうしたの?」


『あぁ、女の声が聞こえる前に話しておこうと思って』


「話?」


 葵はこんな時になんの話があるのだろうと思い、司に聞き返す。


『時間ないから手短に言うけど、校舎に来たらまず皆で合流しよう。三人で探せばきっと身体が見つかるかもしれない』


 ――たしかに、一人で探すよりも皆で探した方が見つかる確率が上がる。


「分かった!」


 葵はそれだけ言うと通話を切る。スマホの待ち受けを見ると、深夜の〇時になっておりまた女の声が頭の中で響き渡る。


”私の身体……探して”


 その言葉を最後に葵の意識は途切れ、ベットに倒れ込んだ。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る