【其の九】

 あまりにもしつこい耕平に対して「図書館に行く」とだけ言って、祥吾は学校を後にして現在は私立図書館に来ていた。


「これか……」


 祥吾は十年前の新聞を読み漁っていた。その中で祥吾が調べたい記事を見つける。


 その記事には“南雲高校に通う女子高生が行方不明”の見出しがあった。祥吾は詳しくその記事を読んでいく。


『南雲高校に通う女子高生がある日突然行方が分からなくなった。噂では行方が分からなくなる前にストーカー被害に遭っており、その犯人が誘拐したとして警察は捜査を開始するが結局女子高生は発見されず、捜査は打ち切りとなった。』


 そこで新聞の記事は終わっていた。祥吾は図書館を後にすると、ある場所へと電話を掛けたのだった。


****


 祥吾はある人物に調べ物を依頼し、自身が通う学校へと戻ってきていた。


「やぁ、君」


 校門をくぐった時に、先程話を聞いた用務員の男が話しかけてきた。


「どうしたんですか?」


 そう祥吾が聞くと、用務員の男は「ちょっと思い出したことがあってね」と言い祥吾に語り出した。


「実はね、私と同じ仕事をしていた人が急に亡くなってね」


「亡くなった?」


「あぁ、その人が死ぬ前に言っていたんだよ。自分は女の呪いを受けてしまった。直に死んでしまうだろうって」


 ——呪い?じゃ、その人は理科準備室に入ったってことか


 祥吾が何かを考えているが、そんなことはお構いなしに用務員の男は話を続ける。


「いつも同じ時間に女の声が頭の中に聞こえてきて、気が付くと学校の校舎の中にいるって言うんだ。変な女に追い掛けられて、捕まると腕や足を千切られるって言っていたな……。彼の状態が普通な感じじゃなかったから、嘘を言ってるとも思えなくてね。そのすぐ後だよ、彼が死んだのは······」


 そう言った用務員の男は、視線を遠くに移した。


「他にその人は何か言ってませんでしたか?」


 祥吾の問いに用務員の男は「う~ん」と腕組みをして考え込む。暫く考えた後に「これ以上思い出せないな」と申し訳なさそうに言った。


 用務員の男に頭を下げ、祥吾は旧校舎へと歩き出した。旧校舎の入り口まで来ると背後から声が聞こえ振り返ると、耕平が駆け寄ってきていた。


「なんだ、耕平か······。こんな所で油売ってて良いのか?そもそも学校はどうしたんだよ?」


 ため息を吐きながら祥吾はそう言うと、すかさず耕平が反論に出る。


「それはこっちのセリフだ!学校だってもうとっくに終わってる。お前こそ何してたんだよ?」


「少し調べ事」


 短くそれだけ言うと、祥吾は旧校舎へと入っていった。


「おい、待てよ!」


 耕平が慌てて追いかける。


「調べ事って何?まさか、姉貴たちが巻き込まれた件について調べてくれてんの?やっぱ、持つべきものは霊感のある親友だよな」


 ――気持ち悪い笑顔だな


「もしこの件で死なれたら目覚めが悪いだけだよ」


「へっ?」


 祥吾の言葉に驚くあまり変な声が出てしまった耕平の表情は強張っており、「どいうこと?」としつこく何度も祥吾に聞いていた。

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