第二章 身体探し

【其の八】

 三人が話し合ってからどれくらいの時間が経っただろうか。話し合いを一時中断して一息していると、司の腹の虫が鳴き出した。


「悪い……腹、減っちゃって」


 アハハと恥ずかしそうに笑う司の姿に葵と莉子は笑い出した。


 ――久しぶりだな、こんなに笑ったのは。これも司のお陰かも


 司のお陰で少しだけだが、場の雰囲気が良くなった。時刻も昼時なので軽めに食事をすることにした三人。


「ねぇ、もう一度祥吾君に相談してみよ?私たちだけじゃ限界があると思うんだけど」


 食事を済ませた莉子が机に置いてあるお茶を口に含んだ後に、二人の顔を交互に見ながら提案をした。


 その提案に二人は頭を縦に振り、莉子は早速弟の耕平に連絡を取ることにした。しかし耕平からの返答は


『あいつ、学校来てないよ。連絡も繋がらないし……何処でなにやってんのか分からないんだ』


 とのこと。莉子が通話を切ると、二人に祥吾が学校に来ていないことを伝えた。


 ――学校に行かないで何してるんだろう?私もだけど……何かあったのかな?


 葵はそんなことを思っていたのだった。


****


「少し話良いですか?」


 祥吾は学校に昔からいるという用務員の男に声を掛けていた。


「何かな?」


 優しそうな口調で答えるのは、六十代前半の白髪頭の男。その男に祥吾はあることを聞くために来たのだ。


「この学校で過去に起きた事件ってあります?」


 その言葉に用務員の男は視線を天に向け考え込んだ。暫くの沈黙の後、用務員の男は喋り出した。


「あれは、十年前になるか。一人の女生徒が行方不明になってね。何と言ったかな……たしか、"藍沢麗華"といったかな?」


「その人は見つかったんですか?」


 祥吾の言葉に用務員の男は首を左右に振ると、「見つかってはいない」と答える。更にそのまま言葉を続けた。


「なんでも、行方不明になる少し前からストーカー被害に遭っていたらしくてその犯人に監禁さてるんじゃないかって噂が流れていたよ」


 ――ストーカー被害に遭っていた?だとしたら……殺されている可能性が高い。そして、先輩たちが追い掛けられたっていう謎の女は……


「祥吾!」


 考え事をしていた祥吾の耳に、聞きなれた声が聞こえてきた。振り向くと耕平が祥吾の元へと駆け寄ってきていた。


「お前学校休んで何してんだよ?」


「ちょっと気になってね。話を聞いてた」


「だからって学校休んでる奴が学校に来てるのっておかしくないか?見つかったら先生に怒られるぞ」


 耕平の言葉を無視して用務員の男にお礼を言うと歩き出した。


「おい、無視すんなって!祥吾!!」


 スタスタと歩いていく祥吾に耕平は声を掛けるが、また無視をされた。急いで祥吾の後を追う耕平なのであった。


 


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