【其の四】
「俺も変な女に追い掛けられてたんだけど……職員室に逃げ込もうとしたら転んじゃって、もうダメだって思ったんだけどあの女何もしてこなかったんだよ」
「それで、その後どうなったの?」
「急に頭が痛くなって、気付いたら朝になってた」
司の言葉に、葵と莉子はため息を吐いた。
三人で話していると、いつの間にか学校の門の前に着いていた。校門を抜け昇降口に向かっていると、「あっ!」と今度は莉子が声を上げる。
「今度はなに?」
莉子の声に葵はビクッとする。これで二度目だ。
――なんで一日でこんなに何度もビックリしなくちゃいけないの?
「提案なんだけど」
「提案?」
莉子の言葉に葵は聞き返す。
「そう、私の弟の友達に霊感がある子がいるんだって。その子に相談してみよ?」
――確かに、この件が呪いの類なら霊感がある子に相談してみるのも一つの手かもしれない
「いいね!相談してみよ」
葵は二つ返事で承諾した。莉子は葵の言葉を聞くと、早速何処かへと連絡をし出した。
「OKだって!今日の放課後教室で待ってるって言ってた」
「じゃ、行こ」
葵と莉子の二人は期待に満ちた表情で校舎へと入っていった。一人の男を置き去りにして。
「お~い、俺は?」
****
授業が終わり三人は、莉子の弟がいる二年四組のクラスに向かっていた。朝の時とは比べ物にならない程足が軽い三人は、教室の扉を開けた。
「お断りだね」
葵たちの相談を開口一番そう言った彼は、出雲祥吾。幼い頃に交通事故に遭い、それ以降霊の感情が視認出来るようになってしまった。
「おい、協力してやれよ。俺の姉貴の頼みなんだから」
「お前は、何度もトラブルを持ち込むなよ」
耕平の言葉に祥吾は、面倒くさいといった態度でそう答える。
――なんなのよ、こいつ。年下のくせに……確かに相談してるのは私たちだけど、すぐに断ることないじゃん
葵は頬を膨らませて、祥吾を睨んでいた。
****
夕暮れのオレンジ色の光が、旧校舎の窓から差し込んでいる。祥吾はあれから葵、司、莉子の三人に押し切られてしまい旧校舎に足を運んでいた。
「なんで僕がこんなことを……」
「まぁまぁ、お前の力は頼りにしているから」
「僕は面倒ごとが嫌いなんだよ。そもそも、なんでお前まで来てんの?」
埃っぽい旧校舎の廊下を、祥吾は文句を言いながら歩いている。
「なんか面白そうだから」
耕平は平然とそう言ってのけた。
――こいつはまるで状況を理解してないな
耕平の発言に祥吾はため息を吐き、頭を左右に振った。そんなやりとりをしていると、いつのまにか問題の理科準備室に辿り着いていた。
扉の前に立った祥吾の表情が険しくなる。
「んじゃ、入りますか」
「お前何聞いてたの?」
「へっ?」
不用意に入ろうとする耕平を祥吾が止める。何も考え無しに行動する耕平に、苛立ちを覚える祥吾は
「呪われたいのか?」
軽い脅しの言葉を口にしていた。引きつった表情をする耕平は祥吾を見ていた。
――恐怖、悲しみの色が濃い……。この中に入ると僕も呪われるな
理科準備室から
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