第31話 お説教です!!!
「……ただいま~……そろ~り、そろ~り」
「ふふふっ、お帰り若葉。さっきはお庭で楽しそうだったね? あの男の子がいつも話してる明良君?」
「えへへ、バレてましたか……うん、あれが明良だよ。あれがいつも言ってる明良君」
「へー、あの子がねぇ……で、どこまで行ったの? 今日もお家行って、お料理作って、あんな時間までおしゃべりして……もうキスとかまでしちゃった感じ?」
「き、キス!? も、もう、お母さんからかわんといて……その、まだ何もないよ!
「え~! 絶対あるでしょ、さっきもキスとかしてたんじゃないの? 満天の星空の下でキス……ロマンティックじゃない!」
「それは、確かにロマンチックだけど……でも明良とはまだ、本当に何もしてないから。本当に何もしてなくて、だから……これから色々するの」
☆
「うい~、お帰り~あき君! 結構遅かったけど、若葉ちゃんといちゃいちゃしてたの~? もしかしてお外でいろいろしちゃったの~? も~、彼女できて嬉しいのは分かるけど、ダメだよ、あき君そう言うのは!」
若葉の庭で少しお話して、またまた夜道を歩いて僕の部屋。
お姉さんを説教しようと思って帰ってきたけど、やっぱり色々勘違いしてるお姉さんはビール片手にうい~、と陽気に絡んできた……なんか説教する気なくなってきたけど、でもダメです、今回も許しません!
「……お姉さん、ビール置いてください。鮭とばも置いてください、空っぽの状態で正座してください」
「ん~? なんで~?」
不思議そうに顔をん~? と傾けるお姉さん……なんで自覚ないんですか!
「何でもです! 早くしてください、もう12時前なんですから!」
「む~、あき君怖い! そんな怖いと若葉ちゃんに愛想つかされちゃうよ!」
「だから付き合ってないって言ってるでしょ! 若葉は友達です……ってそんなことはどうでもよくて! 取りあえず話とか色々あるので早く正座してください!!!」
「どうでもよくないよ、大事なことだよ、素直じゃないと嫌われちゃうよ~? …… まあ、でも分かったよ。あき君がそこまで言うなら、何もやってない無実で冤罪で可哀そうなお姉さんですが、ここは素直に正座してあげます! むん!」
少し納得のいかない表情でそう言いながら、とりあえずはかなりだらしない感じではあるけど正座をしてくれるお姉さん。
よし、これで態勢がが整った……それじゃあ、お姉さんよく聞いてくださいね!
「お姉さん、なんで今日僕に料理してるみたいな話したんですか?」
「……ギクッ!?」
お姉さんの肩がビクンと跳ね上がる。
心あたりありまくりじゃねえですか。
「なんで僕の部屋の掃除をして、お世話してあげてるみたいな話したんですか?」
「ギクギクッ!?」
「なんで僕の事を料理も何も出来ないダメダメ君みたいにしたんですか? なんで僕を女の子の前ではカッコつけてるけど実際は何もできないイキリ君みたいな感じにしたんですか? なんで真実を言おうとする僕を嘘つき扱いしたんですか?」
「ギクギクギクギクッ!?!?」
お姉さんの肩がビクビクビクビク痙攣したみたいに無限に動いて。
だから僕も、もうちょっと追い詰めようと思って。
「お姉さん、僕は怒ってるわけじゃないんです。ただ理由を聞きたいな~、って。なんでこんな嘘ついたのかな~、って知りたいだけです。だから僕は全然怒ってません、ただの知的好奇心で聞いてるんです。だから答えてくださいよ、お姉さん」
「え、あ、その……えへへ」
「笑ってるだけじゃ何もわかりませんよ? ちゃんと答えて貰わないと……だから言葉にしてください、なんでこんな嘘ついて、僕を嘘つき扱いしたんですか? ねえ、お姉さん答えてください、なんで嘘ついちゃったんですか?」
「あき君怖いよ、そんな怒んないでよ……それに嘘じゃないもん」
少し怯えたようにほっぺをしぼませたお姉さんはぷいっと外を見ながらそう答える。
そっか、嘘じゃないデスカ……へ~。
「あ、あれ本当なんですか? それならもう僕が料理作る必要も、お掃除する必要もないですね」
「……え?」
「だって、お姉さん自分でお料理もお掃除も出来るんでしょ? それなら僕がもうお姉さんのお世話する必要もないな、って」
「え、あ、いや、その……」
「いや~、お姉さんの料理しなくていいってなったら僕も楽になるなぁ! 結構大変だったし、色々するの! あ~、気持ちいい……これが一人暮らしの開放感ですか!」
「あの、あき君、ごめん……」
「それに、お姉さんが自立してくれるならお姉さんのお母さんも喜んでくれます。良かったですね、親孝行出来て……という事でお姉さんは明日から一人で……」
「ごめんなさーーーーい! お姉さんは一人では何も出来ないクズです、お料理もお掃除も何もできません! だから捨てないでください、見捨てないでください、あき君様! 本当に何でもします、何でもしますからこれからもお料理お掃除の面倒見てください、お願いします!!! ごめんなさい、あき君ごめんなさい! 許してくださいあき君様ーーー!!!」
僕の言葉にとうとう限界が来たのか、半べそかいたお姉さんがべしーっと思いっきりキレイなフォームで土下座を始めた。
……最初から認めとけばいいものの! って感じですけど、土下座はやりすぎです、顔上げてください! なんだか僕がクズに見えるじゃないですか!!!
☆
「ごめんね、あき君……そのお姉さんもカッコつけたかっただけなんだ。カッコつけたくて、完璧に見せたくてそう言っちゃった、ごめんね。あき君の彼女の前で恥かかしちゃってごめんね」
ふーふーと僕が入れたカフェオレを冷ましながら、シュンとした声でお姉さんが謝ってくる。
だから若葉は……今はもういいや、疲れちゃった。
「カッコつけたかったって……それ僕にずっと言ってたやつじゃないですか。カッコつけたいお年頃って……お姉さんがそのお年頃だったんですか?」
「うん……私さ、外では完璧な人間じゃん? あまり弱みとか見せない人間じゃん……カフェオレうまうま。ありがと、あき君」
「どういたしまして……まあ、とても信じられないし、信じたくもないですけどそうみたいですね」
最近忘れかけてたけど、お姉さんはそう言えばそう言う完璧超人的な人だった、家でこんな感じ過ぎて完全に忘れかけてたけど。
「信じてよあき君……だからさ、その、身内の人以外には完璧でいたいって言うか、信頼できる人以外には完璧でいたいから……だから嘘ついた、ごめんね」
ずずずとカフェオレを啜りながら、そう答えるお姉さん。
……
「……お姉さん、僕の事信頼してくれてたんですね。それに身内って⋯⋯」
「当たり前だよ、何を今さらだよあき君。毎日お料理作ってくれて、たまにお掃除もしてくれてすっごく感謝して、信頼してるんだよ。ありがとね、いつも」
そう言ってにへへと僕の方を見ながら笑う。
そっか、お姉さんに信頼されてるのか……それは嬉しいな、よかった。
身内で、信頼されてるか……ふふふっ、もっとがんばろ、頑張らなきゃ。
……まあ、それはそれ、これはこれなんですけど。
「取りあえず嘘ついたことは許してあげますし、これからもお料理も掃除もしてあげます!」
「え、本当に? 本当にしてくれる?」
「してあげます、隣人に倒れられても困りますし、お姉さんに信頼されてるなら……それくらいやりますよ」
「あき君……!」
お姉さんがキラキラ光るキレイな目でこっちを見てくる……これに何かを頼むの忍びないけど、でもしょうがない! お姉さんが悪いから!
「……まあ、それはそうなんですけど! 僕も恥かいたんで! 後嘘はいけないことなので! その反省のために明日はお姉さんにお昼ご飯を作って貰おうと思います!」
「え、お昼ご飯……でもお姉さん料理は……」
「ふふふ、たまにはいいじゃないですか……ああ、僕は今お寿司が食べたい気分です! ああ、明日のお昼はお寿司が食べたいなぁ!」
そう言って、お姉さんの方にパチッとウインク。
たまにはそう言う贅沢もしたいなー、なんて。
僕の言葉に、少し目を丸くしていたお姉さんだけど、すぐに納得した様に、でも不満気な表情に変わる。
「わかった、わかったよ、明日はあき君のためにお寿司を出前で頼んであげます! こうすればいいんでしょ、良いんだよね! もうあき君のいじわる!」
「はい、ありがとうございます! お姉さんのお寿司、すごく楽しみです!」
ぷんすかほっぺを膨らませるお姉さんに向かって、ニコッと満面の笑みを送った。
「むー、あき君だってお姉さんほっぽいて若葉ちゃんといちゃいちゃしてたくせに! 彼女といちゃいちゃしてたくせに! これはお姉さんの嘘より重罪だと思うんだけど!」
「だから若葉は彼女じゃ……」
「あ、あき君嘘ついてる! 若葉ちゃん彼女じゃななんて絶対ウソだもん、恥ずかしいからそう言ってるだけだもん! あき君も嘘ついたからこのお寿司はなしだ!」
「え、それはないですよ! それに、本当に若葉は彼女じゃないんですから……」
だって僕はお姉さんが好きなんですもん……だから若葉は彼女に出来ないです。
「むー、そんな嘘ついて……好きって気持ち伝えないと若葉ちゃんにフラれるぞ! 愛想つかされて逃げられるぞ!」
そう言って、プンプン怒るお姉さん……全く人の気も知らないで。
好きって簡単に言えれば……僕だって苦労しませんよ。
★★★
感想や評価や☆などいただけると嬉しいです!!!
星が欲しいってやつですね、はい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます