第27話 未知との遭遇! たーたーたかたかたーたー!

「やっほー、あき君! お姉さんが帰ってきたよ!!! お姉さんの帰宅をあがめるがよい!」


 扉を開けると、そこにいたのほ仕事帰りのお姉さん。

 どこで買ったのか、浮かれたサンタ帽を頭に乗っけて、左手には缶ビール……良かった、まだ空いてないみたい、飲んで帰ってきたわけじゃないみたい。


「おーいあき君? あき君? いつもみたいにお姉さんを褒めてえらいえらいしてくれないの? おーい、あき君? あき君?」


 ……そして、今家に入れるのは危険な気がする。


 お姉さん、絶対に委員長に変な絡み方するだろうし、それに……取りあえず今はいられるのはダメ!


「……ん、あき君? どうしたの、あき君? なんで外に追い出すの? お姉さんいじめるの、あのエッチな本みたいに!?」


「違います、変なこと言わんといてください! 今日は友達が来てるんで、自分の部屋でゆっくりしていてください!」


 ふやふや文句を言うお姉さんの背中をずいずい押して、部屋の外に放り出す。

 ……お姉さんあのエッチな本の子といじりすぎだよ、もう忘れて!


「……友達? 友達ならいいじゃん、お姉さんとあき君は友達以上のお手伝いさんでしょ? だから紹介してくれていいじゃん、お姉さんがいていいじゃん。お姉さんはね、3連休のスタートだからあき君の料理が食べたいの!」


 ぷくーっとほっぺを膨らませて、不機嫌そうにそう言うお姉さん。

 いや、お手伝いさんって……そう紹介される僕の身にもなってくださいよ、それお姉さんにもダメージありますからね?


「別にお姉さんは気にしないし……だから部屋に入れて! お姉さんのためにお料理して! 今日はお土産もあるから!」


「ダメです、友達が来てるので却下です、部屋でカップ麺でも食べててください! ……ちなみにお土産って?」


「うん、巨大鮭とば! 会社の人から貰ったんだ……だからだから! これ少し分けてあげるからお部屋に入れて! お姉さんのお世話して!」


「……ダメです、絶対にダメです!」

 ずんずんと地団太を踏んで駄々をこね始めるお姉さんをそう一喝する。


 鮭とばって……天下の女子高生がそれで喜ぶか! 

 それにこんな感じで駄々こねてる大人を見せられないでしょ、イメージ壊れますって!!!



「むー、なんでなんで……はっ!? まさかあき君……彼女が来てるの!?」


「……え?」


「だって、そんなにお姉さんを部屋に入れたくないなんて……彼女でしょ、彼女が来てるからなんでしょ! もう、あき君も隅に置けないな~、ていてい、ていてい!」

 急に機嫌を直したお姉さんがニヤニヤとからかうように顔を緩めて、僕のわき腹をつんつんつんつんしてくる。


 いや、委員長はそんなんじゃ……


「またまた~照れちゃって! わかってるよ、彼女ちゃんが来てるからお姉さんを入れたくなかったんでしょ? もう、あき君! そう言う事なら、隠さなくて素直に言った方がいいぞ~?」


「いや、だからそんなんじゃ……」


「もうもう! 照れなくっていいって! あき君くらいの年齢なら彼女の一人や二人いた方が健全だし! お姉さんは応援しますよ! ふれーふれー、あき君!」

 応援団みたいに腕をピシパシ振るお姉さん……僕が好きなのはお姉さんなんですから、委員長は本当に違います!



「お姉さん、本当に違くて……」


「あき君! そんな否定してばっかじゃダメだぞ、素直になりなさい! 彼女さんもそんなに否定されたらいやな気持ちになるでしょ! 後お姉さんにもちゃんと紹介しなさい!」


「いや、だから本当に友達で……だから紹介とか……」


「……明良、大丈夫? 何か困った事とか……そのキレイな人誰?」

 お姉さんと軽い言い争いをしていると、扉の向こうから心配そうな表情の委員長がひょっこり顔を出す……そしてお姉さんと目が合う。


 ……やば、最悪のタイミング!

 絶対めんどくさいことになるよ、これ絶対。


「……ねえ、明良、この人誰? 明良の知り合い?」

 真っ黒な目を大きく開いてそう聞いてくる委員長。


 どうしよう、なんて紹介しよう……隣の住人、でいいかな? うん、それで……



「はい、私はあき君の知り合いだよ、あき君のお姉さんだよ!」


「お、お姉さん!? え、明良お姉さんいたの……え!?」

 色々考えていた僕より先に、ニヤッと楽しそうなお姉さんの口が先に動く……誤解されるような言い方やめてください、委員長困惑してるじゃないですか!



 でも、そんな僕の叫びは通じずに、お姉さんはでーんと胸を張りながら話を続けて。


「うん、お姉さん! 私はあき君のお姉さん! だからエプロンのかわい子ちゃん、ぷりーずてるみーゆあねーむ!」


「あ、お、お姉さんですか! そ、その……こほん。こんばんは、私は前野若葉と申します。その明良君とは学校のお友達で、いつもお世話になっております! よろしくお願いします! お姉さんとも仲良くしたいです!」


「ふふふ、若葉ちゃんね、よろしく。本当のお姉さんじゃないけどね!」


「本当のお姉さんじゃない……? それって明良とはどういう……えっと、もしかして……私は!」


「もう、そんな事どうでもいいの、いい関係だから! それより若葉ちゃん! あき君とのこと、隠さなくていいんだよ? お姉さんは二人の事応援してるから!」


「隠す? 二人の関係? いい関係? ……あ、明良の一体何なんですか!?」


「ふふ~ん、あき君も若葉ちゃんも照れ屋さんだね! わかってるよ、二人は恋「はーい、ストップお姉さん! それ以上話しちゃダメだから! もう話しちゃダメだから!」


 ニマニマしながら余計な事を口走ろうとしていたお姉さんの口を背伸びでふさぎ、強引に話すのを止める。


 ふごふごと何か言いたげに、僕を睨むお姉さん……でもダメです、何話そうとしてるんですか、委員長にドン引かれたらどうするの!



 ほらみて! 現に委員長かなりびっくりした感じでこっち見てるし!

 真っ黒な目でこっち見てるし!

「……あ、あの明良なにを……そのお姉さんはどういう……本当に、私は……」


「ごめん! ごめん委員長ちょっと……」


「むー……名前、それに色々……」


「……若葉、ごめんだけど少しだけ中で待っててくれない? 僕ちょっとお姉さんとお話があるから! 後でお詫びとかもちゃんとするからだから待ってて!」


「……わかった。わかったよ、少し待ってる……でもすぐ帰ってきてよね。帰ってこなかったら、許さないから。本当にすぐ帰ってきてね、本当に!」

 どこか怒ったような納得のいかない表情の委員長だったけど、素直にドン! と勢いよく扉を閉めて中に入ってくれる。


 良かった、お姉さんとの未知との遭遇だったけど、なんとか耐えてくれた。


 それより……この僕の手の中でふがふが言ってるお姉さんだ!

 なんか可愛いけど……余計な事しか言ってないし、もう!



《あとがき》

 長くなったので半分にカットしました、残りはまたいつか。

 今週はエールちゃんにソングラインにファインルージュにアカイイトに……幸せな週末であります!


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