エプロン姿好きだもんね? 大好きだもんね? 

 よっしゃー! お仕事終わった! やっと帰れる!


「すみません、お先に失礼しまーす!」


「あ、安海さん、ちょっと待って! これあげるよ、貰ったんだけど、私食べられないから。安海さん好きでしょ、これ」


「……これは!!! ありがとうございます! ありがとうございます!」


「ふふふ、いつも頑張ってるからね。だから3連休楽しんでおいで」


「はい、ありがとうございます、部長! それじゃあ楽しんでまいります!」

 ピシッと敬礼をして、スキップしながら帰っていく。


 えへへ、良いもの貰っちゃった……にへへ、今日はビールいっぱい買わなきゃ!


 あ、そうだ! あき君にもおすそ分けしてあげよーっと!

 多分あき君もこれ好きだから! 多分だけど!


 だから待っててね、あき君!!!



 ☆


「それでは今からお料理タイムです! 若葉委員長のお料理をお楽しみに……とその前に」

 エッヘンと胸を張りながらそう言った委員長が、学校のカバンをゴソゴソとあさり始める。


「ええっとこの辺に……あ、あったあった! ふふふ、斉藤君、私が良いというまで、ちょっと後ろ向いてて!」

 お目当てのものを見つけたのか、ニヤッと笑いながらそう言う委員長に従ってくるっと後ろを向く。


 なんだろ、なんだろ?

 かわいいぬいぐるみでも見つけたかな?


「ん、ん……あれ? ちょっと届か、いや行ける、頑張れ……よし! ん~……よし、完璧! 斉藤君、もう振り向いていいよ!」

 少し困惑したような声をあげた委員長だったけど、何となったみたいですぐに楽しそうな声で僕の事を呼ぶ。


 それじゃあ、僕も振り返って……おお!


「えへへ、可愛いでしょ? このエプロン、すっごくお気に入りなんだ~! どうどう? どうどう? エプロン若葉ちゃんどうどう?」

 ふわりスカートをなびかせて、くるりと1回転。


 淡い緑色に四葉のクローバーが控えめにプリントされた可愛いエプロンを制服の上にピシッと着こなして……おお、可愛い似合ってる!


 調理実習の時のピンクのエプロンも良かったけど……こっちのエプロンもすごく可愛い!


「にへへ、そうでしょ、そうでしょ! ふふ~ん、そう言ってくれると嬉しいな~……ふふふっ」

 エプロンの裾を持ち上げながらそう言ってにへへと照れくさそうに笑う委員長。


「うん、うん、委員長似合ってるよ、可愛いよ! そのエプロン、ちょっと控えめというか奥ゆかしい感じの可愛さで、それが制服とベストマッチというか! 取りあえず可愛い!」


「も、もう、そんな褒めないでよ、照れるじゃん……ふふっ、ふふふっ……えへへ、本当に斉藤君はエプロン好きだよね~! 調理実習の時も私のエプロン姿チラチラ見てくれてたし!」


「え? い、いや、見てないよ! 見てませんから!」


「ふ~ん、本当に~? でもでも、チラチラ視線感じちゃったけどな~? う~ん? 見てたよね~? う~ん? 隣で作業してて結構目があっちゃったけど~?」


「……見てました、ちょっとだけ!」


「ふふふっ、素直でよろしいぞよ! 本当に斉藤君はエプロン姿が好きだよね~! 大好き大好きだもんね~! エプロンの若葉ちゃん好き好きだもんね~?」

 そう言って、からかうような表情で僕を見てくる。


 いや、でもさ……

「だって、その……エプロンって可愛くない? 家庭的というか、安心するというか、制服の上に着るとギャップがあるというか、なんかちょっと嬉しいというか、可愛さ3倍増しというか……わかる?」


「ふふふ、ちょっとだけわかるよ。それ以上に斉藤君がエプロン大好きなのもわかったけど! それとも……?」


「……エプロン大好きです、本当に好きデス!」

 エプロン大好きなのは事実なんだけどそれをエプロンつけてる女の子の前で言うのは……ちょっと恥ずかしい! 

 委員長エプロン姿すごく似合ってるし……だからやっぱり恥ずかしい!


「むー、素直でよろしいけど、もっと……こほん。でもでも、今日は私のエプロン鑑賞会じゃダメだよ! 斉藤君はゆっくりテレビでも見て休んでて! 今日キッチンに立っていいのは私だけだから!」


 そう言いながら、委員長が元気よくパンと手を叩く。


 ……うーん、でも全部やってもラうのはちょっと申し訳ないな、ちょっと手伝おう。

「委員長、手伝うよ、何でも。さっきは任せようかと思ったけど、やっぱり一人じゃ大変だろうし」


「良いから、大丈夫だから! ここは若葉ちゃんに任してください、斉藤君は映画でも見てなさい! それに、斉藤君は私のエプロン姿鑑賞会したいだけでしょ!」


「違うよ、3割くらいはそうだけど、委員長のエプロン姿似合ってるから! でも手伝うって言うのも本当だから!」


「さ、3割は本気ってことでしょ! だだ、だからダメデス、ソファにお帰りです! ゆっくり休んで、斉藤君!」


 ぐいぐいと強引に背中を押され、ソファのところに連行されて。

 ぽすっとソファに収まると、ほっぺを赤く染めた委員長が僕の方に向かってビシッと指をさす。


「そこでゆっくり休んでなきゃダメだからね! お手伝いに来たり、のぞき見したりするのダメなんだからね! 来たら怒っちゃうよ、若葉委員長ぷんぷんだよ!」


「……もう怒ってない?」


「怒ってない! ぷんぷん! とにかく、来ちゃダメだからね!」


「ちょっと怒ってるじゃん……でもわかった、キッチンにはいかないよ。委員長のご飯、楽しみに待ってるね」


「……うん、待っててね! 最高に美味しいもの作って見せるからね!」

 グイっと腕をまくりながら、軽い足取りでキッチンに戻っていく委員長。


 さーて、僕は……言われた通り映画でも見ようかな?




 ……えへへ、明良君可愛いって言ってくれた。

 私のエプロン姿好き好きって言ってくれた、えへへへ、嬉しいな……えへへ。


 ……どうしよう、さっきまで色々で我慢してたけどなんだかほっぺが下がってニヤニヤが止まんなくなってきちゃった、どうしよ、どうしよ……ふふふっ、まあいいか、だからキッチンで一人になったんだし!


 垂れ下がるほっぺに気合を入れるためにパンパンと叩く。

 よーし、ここでお料理頑張って、毎日斉藤君にエプロンな私を見せられるようにするんだから! 


 だから頑張れ私、待っててね斉藤君!


 ……でも嬉しいからニヤニヤは止まんないや!



《あとがき》

 この前、「制服エプロン可愛いよな~」と家庭科教師の友人と話しました。

 ちょっと心配ですが、大丈夫だと思います。


 すごく長くなりそうなので切りましたが、多分12時過ぎぐらいにもう1話上がる気がします。


 感想や☆や評価などいただけると嬉しいです!!!


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