第25.5話 キレイだね、斉藤君の部屋!

「ぴえ~、仕事が、仕事が終わりませぬ~」


 あき君へ。


 今日はお姉さん全然帰れそうにありません。

 明日から3連休だから色々してもらおうと思ってたのに……無念。



 ☆


「……以上21点で3627円になりまーす」

 レジ打ちをする店員さんの手が止まり、金額が映し出される。


 夜ご飯食べた後にはパーティー! 明日は休みだからだらだらお菓子も食べよう、映画も見よう! と楽しそうに言った委員長に押し切られて色々買った結果、結構いいお値段になってしまった。


 まあでも、楽しそうだし良いか。僕の家、結構映画のブルーレイあるし。

 それより、料理作って貰えるみたいだし、ここは僕がお金だそう。


「あ、委員長ここは僕出すよ。僕の夜ご飯でしょ?」


「いいよ、いいよ。今日は斉藤君はお客さんだから! だからここは私が……あれ? あれれ? あれれれ?」


 ビシッと言い放った後に財布の中身を覗いた委員長が、慌てたように口をあたふたさせた後、申し訳なさそうに僕の方を見てくる。


「ごめん、斉藤君、お金足りない……」


「ハハハ、わかった。僕全部出すから大丈夫だよ。はい、5000円でお願いします」


「うう、かたじけない……ありがとう、斉藤君」


 シュンと悲しそうにうつむく委員長に「大丈夫だよ」と言って、ニコニコ微笑ましそうに僕たちを見つめる店員さんにお金を渡す。

 もともと僕が払う予定だったし、そこは気にしてくれないで大丈夫でありますよ!




「……ごめんね~、斉藤君。君にお金ださせちゃって。本当は私が全部する予定だったんだけど。今日は私が斉藤君のこと全部しようと思ってたんだけど」

 少し肌寒い外に出るとフルフルと震える委員長がペコリと申し訳なさそうにお辞儀してくる。


「いいよ、いいよ。全部してもらうなんて申し訳ないし! それに美味しいご飯作って貰えれば、僕はそれで満足だから! だから委員長、夜ご飯は気合を入れて作ってよね!」


「……ありがとう、斉藤君。よーし、それじゃあ、混ぜご飯とハンバーグ、後トマトのサラダを頑張って作っちゃうぞ! ……あ」

 慌てて口を抑え、てへへと笑う委員長。

 献立は結局ヒミツ! って言ってたのに、うっかりだな。


「ふふふ、献立はヒミツじゃなかったの? まあ、大体わかってたけど」


「えへへ、そうだったけど言っちゃったものはしょうがない! 斉藤君でっかくて美味しいハンバーグ作ってあげるからね! 後混ぜご飯もすっごく美味しく作るから……美味しすぎてほっぺがてるてるするよ、楽しみにしててね!」


 そう言ってニコッと僕の方に微笑む委員長に、僕も「楽しみにしてる」と微笑みかける。


 ……ていうか「ほっぺがてるてる~!」ってお姉さんも言ってたけど……この言葉、どっかで流行ってんの? 僕まだ意味がよくわからないんだけど。



「……あ、委員長、荷物重いでしょ? 僕持つよ、片手空いてるから」


「いいよ、これくらい。そんなに重くないし、斉藤君も一個持ってるじゃん。一個ずつで大丈夫だよ!」


「ううん、持たして。委員長には料理作って貰わないといけないし、手が痛くなったら大変だし。だから持ちますぜ、委員長さん」


「……わかった、ありがとう斉藤君。卵入ってるから落としちゃダメだよ」


「落とさないよ、しっかり持つから」

 そう言って委員長から荷物を受け取る。

 しっかり重くて、ずっしりとした感覚が手に伝わってくる……ちゃんと帰りまで持たなきゃね。






「あ、見てみて! こっちのほう言ったら私の家だよ! 私の家、また遊びに来てね! こっち行けば私の家だから、いつでも来ていいよ!」


「この前送ってったから知ってるよ、委員長の家」


「アハハ、そうだったね……だったら絶対遊びに来てよ! いつでもいいから!」


「うん、考えとく」


「考えないで来てもいいんだよ? いつでも歓迎若葉ハウス!」




 ☆


 委員長の家の近くを素通りして、着いた僕の部屋があるマンション。


「おー、ここが斉藤君のお家……私の家の数倍はある大きさ……!」

 マンションを見上げながら委員長が感嘆の声をあげる……そりゃマンションなんだから当たり前でしょ。


「もう、そうだけど……まあいいや。斉藤君のお家は何階?」


「僕の部屋はね……」


「あ、待って当てるよ、当てさせて……うーん、5階! 意外と高いところ!」

 僕の言葉を遮って手を大きく広げて指で5! と自信満々に示す委員長。

 自信満々なところ悪いけど、正解は3階です、5階じゃないです。


「う~ん、残念! 正解は3階、もうちょっと低いとこ。そんなに高いとだと学校行くの大変だしね」


「へー、そうなんだ。まあ荷物あるから低い方が良いけど! じゃあ3階行こっか、斉藤君、案内してよ!」

 ふふ~ん、と鼻歌を歌いながら階段を登る委員長を案内するはいつもの207号室。


 隣の208号室のお姉さんは……今日はいないみたいだ、最近雰囲気というかオーラでお姉さんがいるかどうかがわかるようになってきた。


 鍵穴をガチャガチャしてカギを開ける。

 昨日掃除したし、即委員長を部屋に入れても大丈夫でしょう。


「それじゃ、汚いけど我慢してね。入っていいよ」


「はーい、お邪魔しま~す……ってめっちゃきれいじゃん! 全然汚くないじゃん! しかも冷蔵庫キレイ……! これ本当に男の子の一人暮らしの部屋なの、斉藤君!?」


 僕の部屋の中を見た委員長がものすごいびっくりしたような、それでいて喜んでいるような、そんな声をあげる。

 そんな驚くことかな? 昔は家族で住んでたし。


「今は一人暮らしだけど、半年前までは親と暮らしてたからね」


「それはそうかもだけど、半年したら汚くなりそうじゃん! それでもこのキレイさ……斉藤君本当にすごいよ、これは! 快挙だよ、素晴らしいよ、ノーベル賞だよ、斉藤君!」


 パチパチと手を叩きながら、感動した様に矢継ぎ早に僕の部屋の事を褒めてくれる委員長。

 そんなキレイな部屋だとは思ってなかったんだけど……これだけ褒められると嬉しいな。


「本当にすごいよ、私も部屋キレイにしてたつもりだったけど、まだまだだね……という事でお部屋がキレイな斉藤君にはご褒美です! はい、あ~ん」


「あーん……って何入れようとしてる? その白い物体は何?」


 思わずあーんと口を開けてしまったけど、委員長の持ってる白い物体を見て口の動きを止める。


 この前の先輩の萌え袖は何ともないチョコレートだったけど……あーんされるものは気をつけないといけない! この前お姉さんは塊わさびを入れてきたし!


 なんか丸くて白い……悪い薬物さんじゃないよね?


「違うわ、悪い薬物さんじゃないわ! ヨーグレットだよ、ヨーグレット! さっき買ったの! ほら、あげるからあーんして!」

 そう言いながらふんすふんすと鼻先にヨーグレットを押し付けてくる委員長。


 ……冷静になると恥ずかしく思えてきた。

「……自分で食べるからいいよ、渡して」


「だーめ、食べさせてあげる! 両手ふさがってるでしょ?」


「荷物置けばいいから。もう置いたし」


「むむむ……でも食べさせてあげるです、ご褒美だからね! ほら、あーん!」

 ムムムとうなりながら、ちょっと強引にヨーグレットをふんすふんすしてきて。


 ……しょうがない、あーんするか、別に嫌な気はしないし。


「ふふ~ん、最初からそうしなさい! それではご褒美のヨーグレットです、味わって食べなされ~!」

 委員長の指からパチンと弾くように入れられたヨーグレットをバリボリとかじる。


 甘くてちょっと酸っぱいヨーグルトの……うん、いつもの美味しいヨーグレット。


「ふふふ、どうどう? 美味しい、ヨーグレット? いつもより美味しい? 私があげたヨーグレット美味しい?」


「うん、ヨーグレットはいつも美味しいよ……ありがと、委員長」

 何かを期待するようにくるっと回りながら聞いてくる委員長にそう言ってニコッと微笑んだ。





「……むー、もっと違う答え欲しかったけど」


「ん? なんか言った?」


「何も言ってません! それよりお料理作るから、ちょっと待ってね!」



《あとがき》

 ヨーグレット美味しいですよね。

 この前飲みに行ったら財布に1200円とローソンの無料券しかなくて笑っちゃいました。


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