第19.5話 名探偵聖花ちゃんはぽんこつちゃん

「ぬぬぬ~? あき君まだ~? 酢豚まだ~? お姉さんお腹ペコペコのぺコリーヌ何だけどぉ……ぷはぁ」


「……ビールずっと飲んでるじゃないですか、もう少し我慢してください。それにお姉さんお肉しか買ってきてなかったし……本当に作ってあげるだけ感謝してくださいよね」


「ぬふふ、酢豚なんて豚肉さえあればいいのだよ! 後は玉ねぎ君ときゃろちゃんで美味しいの出来るから! 間違ってもピーマンは入れない様に! あれは悪魔の食べ物でーもんフードだから! 天使の聖花ちゃんには効果抜群だから!」


 そう言ってぬへへとたるんだ笑みを見せるお姉さん。

 美味しくできるって……お姉さん、料理全く出来ないからわかんないでしょうに。


 恥ずかしくて消えてしまいそうな黒歴史的エロ同人を発掘されてしまったため、僕は自称天使の鮭とばお化けのお姉さんのために酢豚を作ることにした。


 ……お姉さんお肉買ってきた! って言ってたけどマジでお肉しか買ってきてなかったし……それでどうやって酢豚作れと、ただの豚だよ。


 たまたま冷蔵庫にあったから良かったけど……酢豚作ってほしいならせめてニンジンと玉ねぎくらいは買ってきてくださいよ、もう!


 まあ、そんなこと考えていても過去は変えられないし未来に進むだけだから、とりあえずお料理の続きをすることにしよう。

 今日は油を使いません、めんどくさいから全部フライパンで作ります!



「ぷはぁ……ところで、ところであき君やい。あき君あき君あき君やい。お姉さんがあき君にお話があると申しておりますぞ!」


「……何ですか、その言い方。普通に呼んでくださいよ」


 片栗粉をお肉につけていた僕に話しかけてきたお姉さんは、そう言われて「ぬふふふ」とへにょへにょ笑顔で笑う……お姉さん、飲み過ぎです。

 ご飯食べれますか、それで?


「心配するな、ご飯食べれるやい! 聖花お姉ちゃんをなめるんじゃありませんですよ! それよりそれより、あき君あき君、お話があるから聞いてほしいでありんす!」


 ぷぷぷと怒ったような声でピシッと腕をあげるお姉さん。

 話か……同人誌の話じゃなければいいけど。


「よしよし、それでいいのだよあき君は。それでお話だけどね、今日あき君なんで買えりこんなに遅かったのかなー、って思って。誘拐されてないんだったらもっと早くく、お姉さんのお世話するために学校終わったらすぐ帰ってきてほしーなー、って思って! もっと自覚持ってほしーな、って思って!」


 相変わらずの可愛いぷんすか顔と声で、僕の方をぷりぷりにらんでくるお姉さん……うん、やっぱり先輩はえっちだったのかもしれない。


「自覚って何ですか……遅くなった理由は友達とご飯行ってたからです。その後本屋さんにもよって帰ったので少し遅くなりました」


「友達!? 友達と夜ご飯食べてきたの!?」


 ものすごく大きなリアクションで驚くお姉さん……いや、僕高校生ですよ?

 友達とご飯食べに行くことくらい日常茶飯事あるよ、最近はあんまり行けてなかったけど。


「ううっ、名探偵聖花ちゃんの推理が外れてしまった……残念無念味噌ラーメン……でもでも切り替え切り替え! 弘法にも筆の誤り、イチローのショートゴロ、明智警視の雪夜叉! 誰にでもミスはあるさ、きばってけー名探偵聖花ちゃん!」


 よくわからない掛け声をあげながらほっぺをポンポンと叩くのはお姉さん。

 誰だよ、名探偵聖花ちゃんって。

 なんかものすごくポンコツな香りがプンプンしますけど、その人大丈夫? 長嶋警部じゃない?


 そんな僕のツッコミは聞こえてないみたいで、ポンポンとほっぺを叩いたお姉さんは、僕の方をもう一度キュッと見てくる。


「あき君、あき君! 友達とご飯って……なんでそんなことしたの!」


「いや、友達とご飯くらい行くでしょ? お姉さんもたまに行くじゃないですか」


「そうだけど、そうだけど! でもでも今日はお姉さんがいたんだよ! この聖花お姉さんが! 友達以上の特別なすごい関係の聖花お姉さんが待ってたんだよ! それをないがしろにするとは何をやっているんだ、あき君は!」


「そ、その、すみ……え、特別? ……そのお姉さん、友達以上の特別な関係って……僕とお姉さんの関係って、そのもしかして……」


 お姉さん僕の事、もうそんな感じに思ってくれてたとかあるかな?


 だって、毎日くらいご飯作ってあげてるし、部屋の掃除もしてあげてるし、おねえさんとその……良いこともしてるし、それに合鍵もあげたし、夜とかお休みの日とかは大体一緒にいるし……お姉さん口にしてないだけで、僕の事……


「うん、特別な関係だよ、友達以上だよ!」


「……その特別ってことは、そのやっぱり……」


「うん、あき君は私のお手伝いさんだからね! あき君と私とはいうなればご主人様とメイドさんの関係、お世話係さん! 友達以上の特別な関係だよ!」


 ……


 ……!!!


「痛い!? あき君急に何するの! 急にピーナッツなんて投げて……お姉さんの可愛いおめめに入ったらどうするつもりなの!?」


「うるさいです、狙ってないから入らないです!」


「なんでそんなに怒ってるの、あき君! もしかして反抗期なの!? 反抗期だからエッチな本みたいにお姉さんに乱暴したくなったの!?」


「違います、もう同人誌の話は良いです! どうせ僕はフェレットでお手伝いさんですよ、どうせ! そろそろ出来るんでそこでおとなしく待っててください!!!」


「むー、痛かったのにあき君め……ん? フェレットぉ? お姉さんペットなんて買ってないけどなぁ……んー?」


 もう、今日あげて落とされてばっかだよ、こんちくしょう!!!

 お姉さんのバカ、片付けもお料理も出来ないポンコツ探偵!


 本当にもう……こうなったらピーマン入れてやる! 

 冷蔵庫にピーマンあったから入れてやるもん!


 ちゃんと食べてくださいね、お姉さん!!!




 ☆


「……姉さん、少しいい?」


「ん? どうした弟よ」


「その……僕ってえっちなのかな? 学校の後輩にそう言われたんだけど……僕ってえっちなのかな?」


「ふむ、なるほど……弟よ、結論から言うと君はえっちだ」


「うう、姉さんまで……一応聞くけどどの辺がえっちなの?」


「まず体のラインが男とは思えない、絶対に女の子でえっちだ。表情もあざとい、誘ってるとしか思えない時がある、えっちだ。あとは「もういいもういい! やっぱりいい! ね、姉さんも僕のそんな風に見てたの……?」


「安心しろ、一般論だから。だから大丈夫。弟はえっちだが、私はえっちじゃない」


「大丈夫じゃないよ、意味わかんないよ……うう、僕はえっち……」



《あとがき》

 金田一少年の話、妹以外で出来る人がいなくて寂しいです。

 世代じゃないからかな……本当に面白いから全人類にマンガ読んで欲しいし、今やってるドラマも見てほしいです。


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