第12話 スカートの代わりにスパッツを履いているエッチな先輩(しかし付いてる)
「らんららんららーん♪」
お肉買えたよ、お酒も〜、しゃけとばちゃんも!
これで今日も完璧、最高だね〜。
あとは家に帰って⋯⋯あ、そうだ!
あき君のお家で待ち伏せしよう!
鍵の位置バレバレだし⋯⋯にひひ、あき君びっくりするだろうな!
☆
「……その、速子さん一つ聞いても良いですか?」
「……どうしたんだい、若葉君?」
委員長に元に戻ってもらいたい―そんな僕の声にならない願いとため息は空のかなたに消えていき、それを聞かなかった委員長たちは次なる会話を始める。
「えっと、その……速子さんって本当に男の人なんですか? その、淫乱だし、えっちだし……やっぱりあまり信じきれなくて」
もじもじしながらそう言う委員長……やっぱりおかしいって、普段は淫乱とか言わないもん、絶対!
「淫乱、えっち、そんなに……こほん。ふぅン、そうか。まあ、確かに僕の性別は分かりにくいとよく言われるからね。でも本当に男だよ、確かめてみるかい?」
「……確かめる?」
「ああ、簡単なことだ。こういうのは局部をみれ「何セクハラかましとんじゃ、この馬鹿野郎!」
タイツとカーディガンの隙間に手を入れた先輩の頭を後ろから思いっきり殴る。
良かった、僕もぽけーっとしてたけど、反応出来て良かった!
「何するんだい、明良君!? 痛いじゃないか、僕の灰色のおつむが傷んだらどうしてくれるんだ!」
「先輩の頭はそんな貴重じゃありません! 女の子の前でボロンなんて……とんでもないセクハラですよ!」
何しようとしとんじゃ、この先輩は!
普通に犯罪やろがい!
でも、先輩は僕の怒りも何のその、頭をポンポン払いながら呆れたような顔で僕を見てくる。
なんだ、その顔腹立つ!
「しないよ、そんなこと! 冗談だ、冗談に決まってるだろ! ぼくはえっちじゃない、本当に見せると思うかね!」
そうやって、ぷくっと顔を膨らませながら腕を広げる。
……
「はい、思います。先輩なら見せると思います」
隣の委員長も、僕の言葉にうんうん頷く。
いや、本当に先輩ならマジで出しかねない。本当にそう言う人だから。
それに、淫乱えっちなんだもん(委員長談)
「うそ、僕そんな⋯⋯こほん。あ、あ⋯⋯えー!? 本当に二人ともそう思ったのかい? それは悔しいね、寂しいね、悲しいね……しくしく……ちらっ、ちらっ……しくしく」
落ち込んだ、泣くような演技をしながらチラチラ僕たちの方を見てくる先輩……なんだかこれ今日の朝見たぞ、めんどくさい!
「そのごめn「速子さん、もう一個聞きたいことがあるんですけど良いですか?」
僕が言おうとした言葉を遮って、委員長がバシッと声をあげる。
もう委員長ちょっと黙ってもらった方がいいかも……無理だけど。
「もうや……ん、んん。どうしたんだい、若葉君? 何を聞きたいんだい?」
くるっと振り返った先輩の顔は仏のように優しくて、でもどこか辛そうで……いや、誰だこの人、知らない人!
「あの、その……速子さんってスカート履いてるんですか! そのカーディガンとタイツの見えない空間……そこにスカートは存在するのでしょうか!」
振り絞るような大きな声で、そう叫ぶ委員長……そう言えば気になるって言ってたな、さっき。
もうあれだけど、まあ、確かにそっちは気になる……かも。
「それは⋯⋯ふぅン、気になるかい?」
「はい、だって……もし履いてなかったらえっちなのに、もっとえっち度が増すじゃないですか……! 速子さんはえっちだから……きやっ!」
恥ずかしそうに、顔を隠しながらそう言う委員長……あんたさっき淫乱とか言ってたでしょ、これくらいじゃ恥ずかしくないでしょ?
「……もういいか……なるほどね、確かめてみるかい?」
「……確かめる?」
「ああ、簡単なことだ。実際に見てみれ「全く同じ流れでセクハラしようとするんじゃねぇよ、バカ!」
この流れさっきも見た!
数分前に同じ流れで、同じように僕が頭をスマッシュしたところまで同じだよ、なにこれ!?
何なのこれはマジでナニコレ?
もしかして先輩と委員長ってめっちゃ相性良い? それともすごく悪いからこうなってるの? どっち?
「痛いじゃないか、明良君! 今回のはセクハラじゃないぞ!」
「これがセクハラじゃなくて何がセクハラですか! またボロンしようとしてたんでしょ! バカなんですか先輩はバカなんでしょうね知ってました!」
「バカ? 僕が!? そんなわけないじゃないか! こんなに聡明で美しい僕がバカなんて……天地がひっくり返ってもあり得ないよ!」
「……ふっ」
「あー、笑った! 笑ったダメなとこなのに笑った! 酷いぞ、明良君! ……それに今日はスパッツを履いている! だからセクハラじゃない、えっちでもない! ほれ見納めしろ!」
「ちょ、先輩セク……あ、本当にスパッツ履いてる」
赤い顔でぷりぷり怒りながら、バシッとカーディガンの裾をまくる。
そこから現れたのは黒くて短い一部丈のスパッツ。
アレの形は……うん、あんまり見えてないけど、ぴっちりと密着するタイプのスパッツ。
細い身体によくフィットしている。
本人は自慢げに「どうだ! 僕はえっちじゃないぞ!」という風に胸を張っているが、萌え袖白衣に黒いスパッツ、そして黒タイツ……どう考えても変態スタイルだ。
局所的な需要を満たす、変態えっちスタイルだ。
「見たか、明良君に若葉君! 僕はスパッツを履いてるんだ、だからえっちじゃない! 考えを改めてくれ!」
「……先輩、その恰好は変態です、普通にえっちです」
「えー!? なんで、スパッツ履いてるのに!?」
「スパッツ履いてるからですよ、余計にえっちです。ね、委員長もそう思うよね?」
「はい、えっちです、淫乱ビッチちゃんです。ん、むむむ! えっち度が増しています! ぴぴぴぴ、大変です、えっちメーターが振り切れそうです……ぴぴぴ、ぼふっ……けぷっ、やっぱり速子さんはえっち星人です」
口でロボットみたいな演技をしてニコッと微笑んで先輩の方を見る委員長。
……何その演技? 委員長今日楽しそうだね?
もしかしておかしくなったんじゃなくて、楽しいだけ? 今もすごくニコニコだし。
そんな委員長と対照的なのは、スパッツを見せびらかしたまま、「ガーン」と謎の指の形で立っている先輩……いや、それ本当に何の指ですか?
「えっち、なんで……ふぅン、そうかい、そうかい……そうですかい」
少し落ち込んだように肩を落としてうなだれる先輩。
その背中は少し哀愁に満ちていて、しばらくそっとしてあげるのが正解な気がする。
そのスキにトントン、と委員長の肩を叩いて、こっそり耳打ちする。
「ねえねえ、委員長。先輩ってどの辺がえっちなの? スパッツは分かるけど……他は全然わかんないんだけど」
そう聞くと、委員長から帰ってくるのはハァ? というような表情……ちょっとムカつくかも!
「えー、斉藤君わかんないの? そのね、速子さんがえっちなのは所作だよ、所作!」
「所作?」
所作って何ぞや。行動の事?
「そうそう、そんなところ。まあ、ちょっと見ててよ、えっちポイント解説するから」
コソコソそう呟きながら、先輩の方を指さす。
先輩は少し前にかがんだ格好で、悩まし気に「僕ってそんなに……」という風に呟きながらう~んとほっぺを指でなぞっていて……うん、わからん。
「ハァ、じゃあ解説だね……まずはかがんだ身体。そもそもその恰好がえっちなのにさらに、さらにだよ、首元見てみて」
「首元?」
「うん、首元……ほら、速子さんのくっきりと浮きでた鎖骨がちらちら見えるでしょ? それに汗も浮いてて……エッチだと思わない?」
言われた首元には、確かに汗ばんで少し桃色の鎖骨と首の境界線がチラチラと見える見えないを繰り返して……ああ、これはちょっとエッチかも。
「でしょ、じゃあ次は手の動きだね。さっきからほっぺをうーん、ってなぞってるでしょ? もうあの手つきがえっち! それに呼応するような悩まし気なひょうじょうもえっち!」
……うーん、これはわからないかな?
表情も先輩がぬぐえ切れなくて……うーんだわ。
そう言うと、委員長から帰ってくるのは心底意外そうな顔。
「えー、わかんない? あの指つきと悩まし気な真っ赤な瞳がものすごくえっちなのに……わかんない?」
「んー、わかんないかも」
「むむむ、えっち道は難しいね……あとは先輩独特の雰囲気というか、オーラというか、匂いというか……そう言うのがすごいえっちなんだけど、これはわかる? 後服装もえっちだよね」
そう言って、パンと手を叩く……先輩に聞かれるよ、そんな音出したら。
「うーん、服装は分かるけど……他はわかんないや」
「えー、なんで? むー、斉藤君とえっち道の共有できないのかなぁ……」
こっちもこっちで少し残念なように肩を落とす委員長。
……取りあえず、委員長が結構むっつりだってことはわかった。
☆☆☆
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