第13話

エピローグ



2023年1月

スーツとワンピースに身を包んだ正人と紀子が騒がしい式場にこっそり入る。中にはざっと70人くらいがいた。舞台には“xx区立○○小学校同窓会”と書かれた横断幕がかかっている。

「やっぱめっちゃ怖い。行くべきじゃなかった。」

紀子が縮こまっていると「大丈夫だよ。」と正人が声をかける。正人がなんとなく前の方に進む。女子の集団を横切ったとき

「まって紀子じゃん!」と声をかけられる。

「あ、美香。」

小学校のときに比較的親しくしていた子と会い、紀子は安心する。

「めっちゃ綺麗になって気付かなかった。」と美香は親しげに紀子に近づく。

美香は後ろにいた正人の方を見る。

「もしかして坂本?」

「あ、うん。」

「え、二人って一緒に来たの?付き合ってるの?」

「ちょっと声が大きい。」

紀子はしーっと唇の前に指を立てる。

紀子達は一気に会場の視線を集める。

「あれって一条と正人?」

「やば。ガリ勉と不良の組み合わせじゃん。超意外。」

どんどん周りに人が集まってきた。紀子は恥ずかしくなり美香のグループに混ぜてもらう。


正人は何人かと当たり障りのない挨拶をしたがずっと一人でいた。皆正人を少し警戒していた。小学校時代の懐かしい映像を見るために会場の電気が暗くなると、パーマをかけた男がゆっくりと近づいてきた。栄田惠介だった。

「栄田か。」と、正人が言う。

「正人、久しぶり。」

「うん、久しぶり。」

「あのさ中学のとき本当ごめん。お前に罪なすりつけて。」

栄田が小さく頭を下げた。

「うん、もういいよ。」

正人がニッと笑う。

「ずっと謝りたかった。」

「いや俺だって、お前だけじゃねえけど色んな奴にひどいことしてきた。ごめん。」

正人も頭を下げる。栄田が笑って「なにこれ謝罪大会じゃん。」と言う。二人は顔を見合わせて笑う。

「てか一条とお前付き合ったんだな。」

正人は照れくさそうに小さく「うん。」と言う。

「俺は全然驚かないけどな。」

「なんで?」

「だって一条ずっとなぜかお前のこと好きだったもんな。」

「あーみたいだな。」

正人がフッと笑う。

「だってさ、あの盗撮事件の後俺に『正人に謝って。』って会うたびに言われたぞ。」

「まじで?知らなかった。」

「本当にしつこかったんだよ。」

「まあ頑固な奴だからな。」

そう言って正人は笑った。



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ティーンズ ちまゆう @timayuu

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