第16話 緊迫
「ふぅ、大変だこの生活も……」
更衣室のシャワーを浴びながらひとりごちる。
初日からこんな調子で果たして一週間も一緒にいられるのか。そもそも他人同士が至近距離で一週間もいなければいけないという条件も無理がある。
だけど……、
『『魅力』のステータスが100以下の人とは付き合えないわ』
もう、めくりにあんなことを言われたくない。せっかく『魅力』が999になってまともに話せるようになったのに……。
「シャワーを浴びるときぐらい、その指輪を外したらどうなんだ?」
「⁉」
背後から女の声が聞こえ、飛び上がる。
「な、何で吹雪がここに⁉」
振り返った瞬間、吹雪が一気に距離を詰めて俺を壁に押し付けた。
いわゆる壁ドンというやつを女子からされてしまった。しかも今の吹雪は体を隠しているものがタオル一枚しかない。
「それはこちらのセリフだろう。貴殿が今いるのは女子更衣室だぞ? 貴殿が拙者を襲いに来たとしか考えられんが?」
「そうだったの⁉ ごめん考えごとして……って、別に襲わねぇよ! それ以外にもいくらでも考えつくだろうが!」
「ふむ、考え事。それはその指にはまっている不思議な指輪についての事かな?」
「⁉」
こいつやっぱり―――、
「それとも、貴殿のステータスが彼女と入れ替わっていることについてかな?」
俺と魔王の関係に気が付いている!
「何の、話かな? そんなことを言うなら、ステータス確認すればいいだろ?」
「今は確認できん。このフロアではジャミングがかかっていてな。貴殿のステータスも、あのミラ・イゼット・サタンのステータスも確認することもできなかった。聞かせて欲しいのは君とミラの本当の関係だ。どうして彼女と君はステータスを交換なんてしている? どうしてそんなことができるアイテムを持っている? そして……」
吹雪が俺の左手にはまっている指輪に指を這わせる。
「どうして、魔王と同じ名前の娘と一緒にいる?」
「⁉」
そうか、そういうことか。こいつすっとぼけておきながら、やっぱりそうだったんじゃねぇか。
「魔王の城」
「ん?」
「丘の上のゴミ捨て場にあった段ボールで作った魔王の城だよ」
魔王が不在の時に壊されていた魔王の現在の住居。魔王はあれを壊したのは通りかかった不良だと思い込んでいたが、指輪の説明書を探して段ボールを触っているときに見てしまった。
「あれは———刀で壊されてた!」
はっきりと刻まれてた刀傷を―――。
「…………」
吹雪は無表情で俺の目をじっと見つめている。
「今の世の中、刀を持っているような人間、お前以外会ったことがない。聞きたいのはこっちの方だぜ、雷亭吹雪! あれはお前がやったのか? どうして平和になった今、魔王を殺そうとする?」
「聞いているのはこちらの方だ。その前に答えろ。あのミラ・イゼット・サタンは何者だ?」
「…………」
吹雪と火花が散るかというほどにらみ合う。
「平行線だな……ちょうどいい、やる気がなかったが、ここは勝負する場所。俺とお前が戦って勝った方が話を聞く、そうしようじゃないか」
「今の貴殿が、この私に? ハッ……冗談だろう」
鼻で笑う吹雪。
俺のステータスを知らないはずはあるまい。それでも侮るとは、何たる
「いいぜ、かかって来いよ。俺の数値の大きさにお前は屈服するだろうさ」
「数値の大きさ……」
吹雪の視線がどんどん下へ下がっていく。
「フッ……今の貴殿の大きさを表しているようだ」
俺の股間を冷笑しやがった。
「上等だ! ゴラアアアアァァァァッッッッ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます