『才能の在処』よりも広く深く考える

 作者は三年前に『才能の在処』という創作論を投稿した。

 喜ばしい事にコメントまで戴いたのだが、当時の自分はなんとも視野の狭かったことであろうと悔いている。

 前記した著では、環境閾値説とか、遺伝とか他人の論説を盗――じゃなくて根拠にして才能がなんであるかを論じた。

 才能イコール才脳、という等式まで作成し、才能が脳に起因することを主張し、読者に訴えかけた。

 けれども、才脳を得られる方法は何も書かなかった。

 当時の自分には方法が全くわからなかったのだ。


 厳密な数値とか調査記録が無いので証明のしようがないのだが、現時点作者が思いついた才脳を作る方法としては、脳を鍛える、というのがある。 

 とりわけ記憶力については、作者の実体験だが創作に影響を与えている能力であることは断言できる。



物書きとして記憶力を鍛えるのに作者がお勧めするのは『デュアルNバック課題』と『クロスワード』である。

『デュアルNバック課題』はN回目前の数字やマークの色や音、位置などを自力で思い出し答える脳トレの一つだ。

 Nの数字が高いほど難易度が上がり、作者は4~6の間を上下している。

 作者は二種の『デュアルNバック』をスマホにインストールしており、日ごとに交互でプレイしている。どれくらいが上級者なのか知らないが、初期はN2さえ出来なかったことを考えると、かなりの成長だろう。


 もう一つ『クロスワード』は覚えるよりも思い出す方に重きを置いたトレーニングとなっている。

 脳に眠っている知識やアイデアを掘り出すためには、やはり思い出す力が必要不可欠であるという考えに則り、作者は取り入れることにした。

 読書では得られないアウトプット感覚を『クロスワード』はもたらしてくれる。

いくつかの情報から答えを思い出すという行為は、執筆中の脳の活動と酷似していると思う。一人でチマチマ枠を埋めるのは詰まらない、という方は対戦型の早押しクイズでも代用できる。ぜひ日課にして、アウトプット感覚を自分のものとして欲しい。

執筆中にアウトプットの質と反応が向上していることに後に気が付くだろう。


 そもそも、記憶力と言っても大別して二つある。

 読者も一度は耳にしたことがあるであろう、短期記憶と長期記憶だ。

 さらに類別すれば、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感による記憶もあれば、ワーキングメモリへ保存することによる記憶もあるし、歩く、食べる、呼吸などの復習行為による習慣的な記憶も存在する。

 

 各人それぞれで鋭利な記憶、鈍麻な記憶があるのに、創作界隈で目にする能力向上の方法と言えば、模写とか音読とか昔から変わらない。

 よく考えてみれば模写は復習行為による記憶で、音読は聴覚記憶。二種の記憶だけでは人によっては向上効率の悪い人だっているだろう。

 才脳と称すからには、自分の脳の特性や弱点を見極め鍛えることで才能が伸びることも充分にあり得るであろうと思うのだが、あなたはどう考えるだろう?


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