Column5 「激賞」
先日、本屋さんのDMにとある本が紹介されていたのですが、「〇〇さん激賞‼」というキャッチコピーを見ました。
私のなかで「激賞」は、本の帯ではほぼ見たことがなかったので気になってしまったのですが、皆さんはいかがでしょう。
「激賞」とは「大いにほめたたえること(『明鏡国語辞典 第三版』より)」です。良さそうなキャッチコピーなのに、「〇〇さん推薦‼」や「絶賛!」「イチオシ!」ほど見かけない印象です。
それはもしかすると「激賞」に「ほめる」……という意味があるからかもしれません。
「ほめる」ですが、現代では目上の人には使えない言葉です。『三省堂国語辞典 第八版』や『大辞林 4.0』にそれについて記載があります。
*****
【ほめる】『三省堂国語辞典 第八版』
〔同等・目下の人などのことを〕すばらしい、よくできた、と言う。
[区別]「ほめる」には相手を評価する気持ちがあり、目上には使わない。「称賛しょうさん」 「絶賛」は、すばらしいと感動した気持ちを示すことで、目上にも使える。古くは、目上・目下の区別なく「ほめる」を使い、「ほめたたえる」には その意味が残る。この辞書では、目上にも使う ことばの意味も、わかりやすく「ほめる」と説明することがある。なお、目上に「おじょうずですね」などと直接 評価のことばを使うのは、もともと失礼。
*****
+++++
【誉める・褒める】『大辞林 4.0』
〔②が原義〕
①高く評価していると、口に出して言う。たたえる。
②祝う。祝福する。
〔「ほめる」という動詞は、目上の人に対しては用いることができない。それに対して「たたえる」は文章語的で、ある人が社会的に見て好ましいことをした場合に、目上にも目下にも使えるが、自分の家庭内の人には使いにくい〕
+++++
上記の引用で、「ほめる」が目上の人には使えないことが分かりました。
しかし「ほめたたえる」や「たたえる」には目上・目下の区分なく使えると書いてあります。とすると、「激賞」を「大いにほめたたえること(『明鏡国語辞典 第三版』より)」とするならば、確かに目上・目下関係なく使えそうな気がします。
ちなみに、「〇〇さん激賞‼」と紹介された本は、片付けに関する内容のものだったので、きっと「とても褒めたくなる」ような内容だったのでしょう。……でも、やっぱりちょっと腑に落ちない点があります。
例えば、私は大野晋氏の本を愛読していますが、もし仮に新人賞を取ったばかりの若い子(仮に、〇〇先生とします)がお勧めしていて、「〇〇先生、大野晋氏の著書『大野晋の日本語相談』を激賞!」みたいなことが本の帯に書かれていたら、「ちょっと偉そうではないか……?」と思ってしまうかも分かりません。
つまりは、その人が大野氏の著書を「高く評価」したり「ほめている」ということ。多分、私は現代の「ほめる」の意味で捉えているために、「目下の人が何故?」と何となくしっくりこないのかもしれません。
それなら「〇〇先生、大野晋氏の著書『大野晋の日本語相談』推し!」とかのほうが、いいなぁと思います。若者っぽいですし、何より「推し」というのが、「ファンである」とか「支持している」という意味で、本を評価しているというよりも、内容を信頼しているというような印象があるせいかもしれません。
「激賞」を最初に見たとき、「こんなにいい言葉があるならいくらでもキャッチコピーに使ったらいいのでは?」とか最初は思ってしまったのですが、よくよく調べてみるとちょっと使い方が難しそうな言葉だなと思いました。
とはいえ、片付けに関する内容の本に「〇〇さん激賞‼」と書いてあったのは嫌な感じはしませんでした。〇〇さんの人柄的に、きっと手が痛くなるほど拍手して「本当にこの本、すごいんです!」とか「考え方が変わりました」と言ってそうなイメージだったからです。
「激賞」は人を選ぶ言葉かもしれませんね。
以上で「激賞」のお話は終わりになりますが、いかがだったでしょうか。
それと「激賞」ですが、私があまり見かけないだけで結構使われているんですかね? もし見かけたことがあれば教えて下さると嬉しいです〜。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます