◇閑話◇ 和製英語の話

 先日、何気なく『新選国語辞典 第十版』をぺらぺらと捲っていたら「ノーカット」という見出しを見つけました。

「こんな言葉も辞書に載っているんだ」と感心したのも束の間、下には「和製英語」と記載されているではありませんか。この瞬間、私がそれまで「ノーカット」が、和製英語であるかどうかすら意識しないまま使っていたことを認識させられました。


 和製英語に関しては、クイズ番組や教育系番組などで取り上げられることがあり、その度に「それを英語で使ったら通じませんよ」ということを聞いていました。そのため、自分のなかでは「気を付けなくては!」(といっても、英語を使う機会なんてないんですけど)、と思っていたのですが、よくよく調べてみたら、あれもこれも和製英語で結構驚きました。


 英語単語も、語源を辿るとラテン語やギリシャ語を組み合わせた造語が沢山ありますが、日本語も色んな組み合わせをして独自の言語の中に入れているんだなと思います。それも英語+英語のときもあれば、フランス語+英語、ドイツ語+英語という組み合わせもあって選り取り見取り。


 日本で作られた和製英語の感覚というのは、英語圏の人たちにはいまいち伝わらないようなので、意味が分からなかったり、時にはとんでもない誤解を招いたりしてしまうので使えません。しかし日本語以外の言語を元に作られているのに、日本人にだけ通じるなんて面白いなぁと思います。


 さて、サッカーワールドカップのこともありますので、サッカー関係の和製英語の話で締めくくろうと思います。(サッカーに詳しい方、温かい目で読んで下さい……(。-人-。) )

 私はあまりサッカーのルールは詳しくないのですが、「ロスタイム」という言葉があるそうですね。意味は「サッカーなどで、負傷者の手当てに費やされた時間など、競技時間に算入しない時間(『明鏡国語辞典 第三版』より)」などと書かれています。

 しかし、英語圏の人たちからすると小首を傾げてしまう言葉です。『和製英語 伝わらない単語、誤解される言葉』を執筆なさっている、スティーブン・ウォルシュ氏は「loss」が敗北という意味なので、サッカーの試合を観ていた際に「このアナウンサーは何て悲観的なんだろう」と思ったそうです。

「ロスタイム」というのは、「loss of time(時間のロス)」から来ているそうなのですが、日本では省略した言葉で通じても、英語を使っている人たちからすると頓珍漢な意味になってしまうんですね。


 ただ、この「ロスタイム」。日本でしか通じない言葉なので、2010年に試合で使う言葉は「アディショナルタイム」として統一することにしたそうです。メディアでは「ロスタイム」と言っていたこともあるようですが、12年も経っていることもあり、現在ではほとんどが「アディショナルタイム」としているように思います。

 ちなみに、国語辞典には「ロスタイム」も「アディショナルタイム」もどちらも掲載されています。(『明鏡国語辞典 第三版』『新明解国語辞典 第八版』『三省堂国語辞典 第八版』確認)



*参考URL*

日めくりオトナ稼業 その疑問、解消します!

アディショナルタイムとロスタイムの違いは何?いつから変わったの?

https://neirof.com/3945.html


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る