◆質問箱◆&Column6 「"V" の音を『ブ』の代わりに『ヴ』と書くのは、日本語として認められているのか」&「violin」の外来語表記

 今回は、当作品を読んで下さっている柊圭介さんより、外来語の表記についてご質問をいただきましたので、それに回答したいと思います。また、説明する上で例があったほうがいいと思ったので、「violin」(ヴァイオリン)を挙げています。


Q、"V" の音を「ブ」の代わりに「ヴ」と書いたりしますが、これは日本語として認められてるんでしょうか。


A、認められています(「ブ」の代わりに「ヴ」と表記できないものもありますが、それは次回のColumnで解説します)。その考え方について、「外来語の表記」を用いながら説明しましょう。


「外来語の表記」には、二つの表が存在します。

 それは第1表と第2表と言われており、第1表は「外来語や外国の地名・人名を書き表すのに一般的に用いる仮名とする」(平成3年6月28日内閣告示より)とあり、第2表は「外来語や外国の地名・人名を原音や原つづりになるべく近く書き表そうとする場合に用いる仮名とする」とあります。

 つまり、前者は「一般的な表記の仕方」、後者は「より原音や原つづりに近い表記の仕方」であることがここでお分かりになると思います。


 ではここで、「violin」の表記の仕方について考えてみましょう。

 第1表の通りに「violin」を当てはめると「バイオリン」、第2表の通りに当てはめると「ヴァイオリン」となります。「"V" の音を『ブ』の代わりに『ヴ』と書くことが、日本語として認められている」ということが分かりますね。


 では、「バイオリン」と「ヴァイオリン」はどんな風に書き分けられているのでしょうか。


 第1表は、説明にもありましたが「一般的に用いる仮名とする」とあります。つまり、こちらが一般的な表記に用いているということです。そのため法令や公用文書、新聞では第1表を用いた表記「バイオリン」を採用しています。

 しかし、より原音に近いもので表記したい場合は第2表の方法「ヴァイオリン」をとっても問題ありません。

 また、「外来語の表記」の本文には「第1表・第2表に示す仮名では書き表せないような、特別な音の書き表し方については、ここでは取り決めを行わず、自由とする」とありますし、用例集の凡例には「外来語や外国の地名・人名は、語形やその書き表し方の定まらず、ゆれのあるものが多い。(中略)ここに示した語形やその書き表し方は、一例であって、これ以外の書き方を否定するものではない」とも書いてあります。つまり、出版社等の組織の中で方針が決められている場合にはそれに従い、そうでなければ自由でよいということが分かります。


 とはいえ、あんまり自由にしすぎると読み手に理解されない場合もあるので、基本的には「外来語の表記」の考え方に従った方がよいとは思います。辞書も大体はその方針を取っていますしね。


 以上、質問への回答ですが、いかがだったでしょうか。お役に立つ回答になっていたら幸いです。


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