◇閑話◇ 「校正」とは何か

 突然ですが、皆さんは「校正」が何であるかご存知でしょうか。

 もしかすると「文章を添削すること」または「校閲と同義語」と思っていらっしゃるかもしれませんが、実は少し違います。


「校正」は、このように漢字二つで表すことができますが、その世界は実に深く難しいものです。

「校正」を辞書で引くと、下記のように書かれています。


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【校正】『明鏡国語辞典 第三版』

 校正刷りと原稿を照合し、文字の誤り・体裁・色調などを正すこと。

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「校正刷り」(「ゲラ」「ゲラ刷り」とも言います)とは「校正をするために仮に刷った印刷物」のことです。


 実際「校正」の勉強をしてみると、辞書の内容の通り、原稿の中身のことではなく体裁や表記の指摘作業を行いました。誤字脱字のチェックや、誤った意味で言葉を使っていないか、表記が統一されているか否か。最近はデータでの入稿が多くなっていますし、印刷所でもPC処理がされているので、体裁の揺れ(ずれ)などはあまりないようですが、それでも万一のことがあるので、文字の大きさや書体、見出しやノンブルなどの位置も、特殊なスケールを使って全て確認します。


 では、「原稿の内容の確認はしないのか」と疑問に思うかもしれませんが、「校正」では原則として行いません。校正の基本は、「あくまで原稿に忠実に」です。

 それは著作権法で保護されている通り、著者のものは絶対に尊重されなければならないことになっているため、勝手に訂正することは許されないのです。


「校正」では、直すべきものの指示をするとき、赤で指示書きをします。これを「入朱」というのですが、これをしたものは「直すように」という意図が秘められています。つまり、原稿の内容に入朱をしてしまうと、原稿を変えてしまうことになってしまうので、確実な誤り以外の指摘は「やってはいけないこと」になっているのです。


 ただ、そうは言っても原稿を見る人は何人でもいた方がいいに決まっています。そのため、校正者は原稿の「誤り」については、著者に分かるように、疑問を提示する方法でお知らせはします。(ただし鉛筆で)


 では次に、「校閲」とは何かについてお話いたしましょう。こちらもまずは、辞書を引いてみます。


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【校閲】『明鏡国語辞典 第三版』

 原稿・印刷物などの不備や誤りを調べ正すこと。

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 このようにあります。つまり、「校閲」ですと原稿の内容に対しても確認作業が入るということです。


 出版社や校正を委託する場所にもよりますが、原稿の全体的なチェックを行うのは「校閲」と一括りにして作業をしているところが多いような気がします。何故なら「校閲」としておけば、「文字の誤り・体裁・色調などを正す」だけでなく「原稿・印刷物などの不備や誤りを調べ正す」まで網羅できるからだと思います。


(もちろん、「校正」と「校閲」をきっちり使い分けているところもあるようです。この世界は簡単に線引きすることができず、中々にややこしいです)


 私が「校正」として勉強したテキストでは、原稿の内容を確認することを「原稿編集」として学びました。思うに「校閲」は「校正」+「原稿編集」という事なのだと思うのですが、「原稿編集」は編集者も行う作業なので、一括りに「校閲」とせずに、「原稿編集」という項目を立てて受講者に学ばせているのだろうと推察します。


 ちなみに、校正用語には「著者校正」という言葉もありますが、この場合はこれまで話してきた「文字の誤り・体裁・色調などを正すこと」には当てはまらず、「校閲」や「推敲」という意味の方が近くなります。


 ということで、「校正」と「校閲」の違い、お分かりいただけたでしょうか。

 上手く説明できたか分かりませんが、基本的に「校正」は「文字の誤り・体裁・色調などを正すこと」ということを知っていただけると幸いです。



*私が学んだ校正内容を書いているので、出版社や校正・校閲の委託先によって若干内容が異なるかもしれません。その点はご了承下さい。

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