Column4 「嘘をつけ!」って、嘘をつくこと?
今日はクイズを出しましょう。ちょっと長めの文章問題です。
Q、
太郎は中学生で、同じ学校に通っている外国人のオリバーと仲良しです。
ある日、オリバーは太郎に、
「今日は、テストだネ」
と何気なく言いました。それに対し、
「嘘つけ、そんなわけないだろ!」
と太郎は言い返します。テストが嫌いな彼は、事前に知らされていないテストがあると信じたくなかったのです。
するとオリバーは顔をしかめます。太郎は、「あ、まずいことを言ったかな?」と思いました。オリバーは分からない日本語があると、太郎を質問攻めにするのです。何が彼のレーダーに反応したのかは不明ですが、「ヤバイ」と思ったのも後の祭り。案の定、彼は太郎にこう質問します。
「タロウ、『ウソをツケ』って言ったネ? ボク、太郎にウソをつかないといけない?」
オリバーの頭にはクエスチョンマークが沢山出ています。落ち着け、太郎。ちゃんと説明すれば分かってもらえる。
「いや、違うよ。それは『嘘をつかないでよ』っていう意味だよ」
しかし、オリバーはさらに首を傾げます。
「だったら、ドーシテソウ言わない? 何故、『ウソヲツケ』と命令する?」
太郎は「うっ」と言葉を詰まらせました。確かに、どうして命令形の「嘘をつけ」で「嘘をつかないでよ」という意味になるのでしょう。
「え、ええ? ど、どうしてって……」
……さて、オリバーの質問に対しどのように説明すると分かってもらえるでしょうか。
以上が、クイズの内容です。
要約すると、この場面で使われていた「嘘をつけ」という命令文が、どうして「嘘をつかないでよ」とか「嘘をつくんじゃない」という意味になるのか、です。
太郎はオリバーに質問されてたじろいでいるようですが、読者の皆さんは上手く説明できたでしょうか。
以下、解答・解説です。
A、
正解は、「本来『嘘をつけ』の前にある言葉が、省略されてしまったから」です。
すでに太郎が「それは『嘘をつかないでよ』っていう意味だよ」と言っていましたが、それとはちょっと違います。
大野晋氏の著書『大野晋の日本語相談』には「『(見え透いた嘘をつくなら、いくらでも)嘘をつけ』という気持ちで使っている」と書いてあります。つまり「嘘はお見通しですよ」ということを言っている言葉なんですね。
この省略の例は「さようなら」や「おはよう」「こんにちは」も当てはまります。
「さようなら」は「左様ならば」の「ば」が省略された形です。慶応三(1867)年のヘボンの『和英語林集成』には「Sayonaraba サヨウナラに同じ」と記載されているそうです。
「おはよう」は「お早くお越しくださってありがとうございます」、「こんにちは」は「こんにちは、とてもご機嫌がいいですね」の省略。結構挨拶に多い印象です。
挨拶の省略に関しては、NHKの番組『チコちゃんに叱られる!』でも取り上げられていたこともあるようなので、もしかするとご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。
日々当たり前に使っている挨拶も、よく考えてみるとちょっと変。でもそれは省略されている部分があるからなんですね。
そして「嘘をつけ」も同じ原理。ということで、オリバーが納得してくれればよいのですが(笑)
以上、クイズでした。
【参考URL】
「チコちゃん こんにちはの由来は?なぜこんにちわじゃない?」
https://tmbi-joho.com/2022/01/28/chiko162-kon/
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