Column5 「夏季」と「夏期」の違い
日本では今が大体夏休みの終盤くらいですかね。有意義な夏休みをお過ごしでしょうか。新型コロナや各地の大雨のこともあって難しいかたもいらっしゃるかもしれませんが、少しでも楽しい日々をお過ごしになっていたらいいなと思います。
さて、夏といえば「夏季休暇」と言いますが、もしかすると「夏期休暇ではないか」と仰る方もいるかもしれませんね。どれくらい気にして読んでいる方がいらっしゃるか分かりませんが、私の感覚ではそれほど多くないように思います。
それは企業や学校によって違うからだと考えています。中には、両方の表記をしているところもあるようです。じゃあ、どちらでも構わないのかといわれれば、そうとも言えるのですが、書き分けをしたい方にとってはもやもやしてしまうのでは……ということで調べてみました。
「夏季」と「夏期」の使い分けについて親切に書いてあったのが、『旺文社 標準国語辞典 第八版』でしたので、そちらに記載されていた内容を下記に引用いたします。
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【かき】『旺文社 標準国語辞典 第八版』
<使い分け>
夏季……一年を春夏秋冬の四季に区切ったうちの、夏の季節。天候や自然に関連した場合に用いる。「夏季休業」「夏季水泳大会」
夏期……一定の尺度のもとに取り決めたひと区切りの月日のうちの、夏の期間。人為的にさだめたことがらに関して用いる。「夏期実習」「夏期スクーリング」
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「夏季」の例は、「夏季オリンピック」も該当しますね。夏の季節のオリンピックですから、確かに夏という「季節」に関連していることが分かります。
「夏期」の例には「夏期実習」とありますが、「夏期講習」の方が世間一般でよく見かけるものでしょうか。どちらにせよこれらは、夏の中である期間を指し、さらに人為的に決められた事柄ですから、こちらの方がしっくりきそうです。
しかし「夏休み」となると、どちらも当てはまりそうですよね。
「夏休み」を辞書で調べてみると「学校や会社などの、夏の暑さを避けるための休み」とあります。大体の辞書は、その書き換えとして「夏期休暇」としていましたが、上記に引用した『旺文社 標準国語辞典 第八版』の「夏季」には「夏季休業」があります。これと何が違うのか、と言われると「休暇」と「休業」の違いを調べる必要がありそうです。
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【休暇】『明鏡国語辞典 第三版』
①学校・会社・官庁などで公的に認められた、授業や業務のない日。休み。
②会社・官庁などで、願い出によって認められる(欠勤扱いとされない)休み。
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【休業】『明鏡国語辞典 第三版』
①学校・会社・商店などが授業や業務を行わないこと。
②労働者が業務を休むこと。
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『旺文社 標準国語辞典 第八版』の書き分けに当てはめるならば、正直どちらも人為的な決めごとなので「夏期」でいいように思いますが、「休業」は多分「一定の尺度のもとに取り決めたひと区切りの月日」に当てはまらないのだと思います。「休業」はよく「臨時休業」と使うように、突然そのときに決めた休みを指します。もっと分かり易くするなら「臨時休暇」を考えてみるとよいでしょう。「休暇」は予定されたものなので「臨時」とするのは変な感じがします。そのため、「夏期休業」とは書かず「夏季休業」とするのではないかと推察します。
そう考えると「夏休み」というのは「一定の尺度のもとに取り決めたひと区切りの月日」に当てはまりますね。そのため「夏期休暇」と書けるのではないか、と私は推察します。
また一応、放送用語ではどうしているのだろうと思い、『NHK放送文化研究所』を調べてみたところ、NHKでは「法律文で『夏季休暇』が用いられているため、こちらを採用している」と記載がありました。
参考までに。
<参考URL>
『NHK放送文化研究所』「夏季休暇? 夏期休暇?」より
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/term/063.html
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