Column3 「ボーリング」と「ボウリング」
前回のColumn(11月のColumn2)で、「ボール」と「ボウル」についてお話しました。外国語表記の延長戦ということで、今日は「boring」と「bowling」について取り上げようと思います。
「boring」とは、穴を開ける意味もありますが、日本では多くの場合「地質調査のために地中深くに細い穴を掘る」のことを示すと思います。
一方の「bowling」は、「レーンの上にボールを転がして、その先にある立ててある10本のピンを倒した数で得点を競い合う競技」のことです。
これらについて、私は前者(boring)が「ボーリング」、後者(bowling)が「ボウリング」と認識していたのですが、後者に至っては「ボウリング」と「ボーリング」どちらでもいいようです。
ただ、この二つの表記を採用している辞書は少なく、前回のColumnの補足で紹介した『新選国語辞典 第十版』にも「ボウリング」のほうが標準的な書き表し方であることが記載されていました。そのため、「bowling」を「ボーリング」と表記することに違和感を持つ方が、比較的多くいらっしゃるかもしれませんね。
ちなみに私は、これまでの経験で「boring」は「ボーリング」、「bowling」は「ボウリング」とするのがしっくりくるのですが、皆さんはいかがでしょう。
◇こぼれ話◆
今回『明鏡国語辞典 第三版』の「ボウリング(bowling)」の語釈も引いているのですが、そこには「レーンの上にボウルを転がし」という表記がありました。前回、「ball」は「ボール」だとやったばかりにも拘わらずです……(苦笑)
この表記について説明が書いてあったので読んでみると、「ボウル(bowl)は、ボウリングやクリケットの球の意」とあります。「bowl」はサラダボウルのボウルじゃなかったのかと、今度は『ウィズダム英和辞典 第4版』を引いてみると、サラダボウルとは別の、しかし同じ綴りの「bowl」が出てきて、確かに「球」という意味が出てきました。それもボウルズ・ボウリング・クリケットの球は「bowl」を使うとあるのです。
何故、この三つの競技だけ?
しかもクリケットってベースボールに似ているじゃない。ベースボールは「ball」なのに、クリケットは「bowl」ってどういうこと?
……という疑問が出て来そうですが、これについては解答を用意することはできませんでした。すみません。
『ウィズダム英和辞典 第4版』の語釈を読んで分かることは、ボウルズ・ボウリング・クリケットの共通点として、ボールを転がしたり、投げたりするところがあるから……なのですが、それだったら他の競技にも似通ったものがあるので謎です。競技が生まれた年代や地域にもよるのかもしれませんが、真相は闇の中。それこそ『オックスフォード英語辞典』(10月の◇閑話◇を参照)を引いてみれば分かるのかもしれませんが(苦笑)
それにしても『明鏡国語辞典 第三版』の「ボウリング」の項目に、「ボウル(bowl)は、ボウリングやクリケットの球の意」と書いておくなら、ちゃんと「ボウル」の項目にもそう書いてもらえたら良かったのに、とちょっと思っていたり、いなかったり……。
『三省堂国語辞典 第八版』の「ボウル」の項目には「アメリカンフットボールの対抗試合」のことと、「ボウリング(のボール)」ということが書いてあるだけに、少しモヤッとします。
ちなみに「アメリカンフットボール」が「ボウル」と言われるのは、「観客席の形がすりばち形であることから」だそうです。
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