◇閑話◇ 『オックスフォード英語辞典』が作られるまで (後編)

 イギリスでは前述したような人たちが辞書を作ってきましたが、ここでようやく『オックスフォード英英辞典(OED)』の登場です。これは1927年に完成した『歴史主義に基づく新英語辞典』を元に、1933年『オックスフォード英語辞典』として再刊されたものです。


 収録された定義数は41万語4825語、用例は182万7306例というとんでもない数に上ります。日本でいうところの、『日本国語大辞典』に相当するものと言えそうです(ちなみに『日本国語大辞典』は50万語収録しています)。沢山の言葉が載っているので、当然のことながら一冊ではまとまりきらず全十二巻に及びます。

 ちなみに「オックスフォード」という名前が付いているのは、オックスフォード大学出版局が辞書を出版する会社として決まったからです。


『オックスフォード英語辞典』が作られることになったのは、ジョンソンが作った『英語辞典』が時代にそぐわなくなってきたから。結局英語を固定化することが出来ず、人々は新たな辞書を必要としていました。そして求められたのが「全ての英単語の語彙と歴史を示すような辞書」だったというわけです。


 辞書編纂者として白羽の矢が立ったのは、言語協会に所属していたジェイムズ・マレー。

 彼は辞書を作るにあたり、ありとあらゆる文献から様々な単語を集めはじめたのですが、膨大な数を集めるのはマレーとその補佐をする人たちだけでは到底無理でした。そのため、彼は多くのボランティアに協力を仰いだのですが、この辞書編纂に最も貢献したボランティアというのが、アメリカの軍医ウィリアム・マイナーという人物でした。

(残された写真を見ると、どちらも立派な白い口髭を生やしたおじいさんです)


 しかしマイナーは独房に収監されており、精神的に病んでいました。それでも彼は励ましてくれるマレーの要求に応えるように、古本屋から集めた貴重な本から驚異的なスピードで、単語とそれが含まれる文章、詳細な出典を記したカードを作成し、マレーに送ったと言われています。


『オックスフォード英語辞典』の大元となった『歴史主義に基づく新英語辞典』が完成したときは、すでにマイナーもマレーもこの世から去っていました。


 現在、『オックスフォード英語辞典』は2010年8月に第3版が出版されています。収録されている数は約60万語。

 しかしこれからさらに様々な専門分野の用語を含めると、単語の数は数百万を超えるとも言われています。英語母語話者でも、6万語程度知っていればかなり教養があるそうなので、60万語というのはとんでもない数字であることがわかりますね。

 ヨーロッパ系言語のなかでも、群を抜いて多いようなのですが、その理由についてはまた別の機会に。



☆補足★

 ちなみに、『オックスフォード現代英英辞典』というものがあるが、こちらは「英語を母語としない外国人学習者のために編集して日本で出版した辞書が元になった」(Wikipediaより引用。引用元は下記参考URLを参照)辞書である。発行元はオックスフォード大学出版局になっているが、日本国内では旺文社が版権を有しているとのこと。



☆注意★

 Wikipediaで調べたところ、『オックスフォード英語辞典』の初版は1998年となっている。しかし、当内容を執筆するにあたって使用した『イギリス文化55のキーワード』には1933年と記載があったことと、『大辞泉』で検索したところ1884~1928年という記載があったことから、『イギリス文化55のキーワード』の内容を採用している。


 またWikipediaでは、第二版が2003年に出版されていることになっているが、『イギリス文化55のキーワード』では1989年と記載がある。第二版の発行年は、『大辞泉』と『大辞林』でも同じであったので、1989年の方を採用している。



<参考URL>

Wikipediaより、「オックスフォード英英辞典」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%89%E8%8B%B1%E8%8B%B1%E8%BE%9E%E5%85%B8


Wikipediaより、「オックスフォード現代英英辞典」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%89%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E8%8B%B1%E8%8B%B1%E8%BE%9E%E5%85%B8

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る