◇閑話◇ 『オックスフォード英語辞典』が作られるまで (前編)
今回は主に英国の方が使っている『オックスフォード英語辞典』について語りたいと思います。「日本語」を調べていたところの副産物みたいなものなのですが、もし興味があれば読んでみて下さい。
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英国で、英語の一言語辞典(日本でいうところの「国語辞典」のことです)が初めて作られたのは1604年。
それ以前は、ラテン語の辞書しかありませんでした。
理由は、教会で使われていた言語がラテン語であり、オックスフォード大学とケンブリッジ大学の教育機関で使われていたのもそれだったからです。その後他言語への関心が高まり、フランス語やイタリア語の時点も刊行されましたが、その当時はまだ英語の辞書は作られていませんでした。
1604年、ようやく最初の英語の一言語辞典とされる『アルファベット順一覧表』が出版されたのですが、残念ながらお粗末なものだったようです。
ロバート・コードリーが作ったとされる『アルファベット順一覧表』は、120ページ程度の小冊子で、収録語はたったの2,500語。印刷技術が今のようでなかったことを考慮しても、これは少なすぎです。(ちなみに日本の小型時点の収録語数は、最低でも7万語程度あります)
その上、内容は日常的に使われる英単語は取り上げられておらず、他言語から借用された難解なものばかりでした。
次に辞書が作られたのは1702年。
『新英語辞典』という辞書名で、著者はイニシャルしか残っておらず不明です。
収録語は2万8千語なので、『アルファベット順一覧表』より10倍近く見出し語が増えているのは分かります。しかし語源に触れていなかったことと、言葉の定義の説明が短かすぎたため、言葉を調べる道具として使用するには不十分でした。
欠点のある辞書を経て、1721年にナサニエル・ベイリーによって作られた『英語普遍語源辞典』は、広く使われる辞書となりました。収録語の数は約4万語。難解語はもちろん日常語も収録されただけでなく、辞書では初めてことわざも掲載されました。
1755年、今度はサミュエル・ジョンソンという人が『英語辞典』という辞書を出版します。
彼は『英語普遍語源辞典』に不満を持っていた人物で、資料などから推察するに、彼は英語を崇高な言語と捉えているようでした。
『イギリス文化55のキーワード』という書籍を参照すると、「英語はエリザベス時代には既に完成していたのであり、それ以降は堕落する一方であった。英語を固定するために、正当な語彙の一覧を確定し、正しい綴り字法、正しい発音の基準となるような辞典が必要であるとされたのである」と記載があります。
しかし、『NIHONGO』シリーズの読者の方はよくご存知かと思いますが、言葉とは生き物。そのため、時代によってその形を変えるので、固定することは不可能です。それでも彼は確固たる辞書完成させるために、自身が一流であると認めた作家の作品から単語を拾い集め、辞書を作りました。
ジョンソンは『英語辞典』が出版されたことで、功績を称えられ文壇の巨匠となりましたが、現在彼の辞書に載った定義は偏見に満ちていたことが知られています。
(長いので次話に続きます)
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