◇閑話◇ 英語はどこから来た言語なのか(前編)

<はじめに>

 今回はタイトルの通り、「英語がどこから来て、イギリスに辿り着いたのか」について語ろうと思います。日本語のことを書いているのに何故? と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは単に私の趣味です(笑)


 しかし「日本語」という言語について調べていると、自ずと他言語についても調べる機会が増えてきます。それは言語学を学ぼうとする人たちにとっての宿命というか……自然な流れなのかもしれません(と言っても、私は研究者でも何でもないのですが〈笑〉)。


『NIHONGO』シリーズを執筆するにあたって、よく井上ひさし氏の書籍を参照しておりますが、氏は様々な言語に精通していたので(氏に限らず、ほとんどの日本語学者は他の言語にも精通しているようですが)日本語の話を書きつつも、その他の言語を引き合いに出して比較することもよくありました。


 中国語や韓国語といった日本の周辺国の言葉はもちろん、英語やイタリア語といったヨーロッパの言語のことも書かれていましたし、ハワイ語にも触れた記述もありました。そういえば、ハワイは日本語と同じように音節が少ない言語だそうです。また、巻き舌で発音する「r」がないので日本人にとっては馴染みやすいのだとか。


 他言語を知ることによって日本語の面白さを再発見できますし、単語の比較をすることで土地柄や人柄、文化が見えてくることもあります。今回は偶然にも英語に関する記述のある資料を発見したので、私なりに咀嚼したものをここに記すつもりです。


 ただ、こういうのは私の一方的な興味関心によるものなので、もしかしたら退屈する方もいらっしゃるかもしれません。そのため、少しだけ覗いてみて面白そうだなと思ったら読み進めてみてください。



<英語の起源>

 私は、英語の起源というものは「イギリス」だと思っていました。

「英国」の言語で「英語」。単純ですね(笑)


 しかし日本で言う「イギリス」というのは、元々ポルトガル「イングレス(Inglês)」に由来しており、当時の「イングランド」を示したものです。

 現在は皆さんご存知の通り、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドという四つの国で連合王国を形成しているわけですから、よくよく考えてみると「英語」の発祥地が「イギリス」というのは、ちょっと違うなということがお分かりになると思います。


 では英語「English」はどこから来たのか。それはアングル人が使っていた言葉なのです。


「アングル人」とはイングランド人の祖先のこと。イングランドという言葉自体、「Engla-land」という「アングル人の土地」から派生した呼称であり、「English」も「Angle」(アングル人)に接尾辞「-ing」を付けてできた言葉です。


 ではアングル人とはどういう人たちなのかというと、ゲルマン人に分類される人々のなかの一つです。

 それが5*1世紀半ばから、ゲルマン民族の大移動がおこり、サクソン人とジュード人と呼ばれる部族とともにブリテン島に渡ったのです。


 それが後にアングロ・サクソン人と呼ばれるようになったわけですが、このときの「英語」は大陸の一地域でほんの一部の人たちだけが使っていた言葉で、現在のように多くの人々が使うような言語ではありませんでした。


「英語」は19世紀に入るまで、言語のなかでも格下のものとして認識されていました。

 格式高い教養語としては、ラテン語やギリシャ語などが使用されており、それらは西洋世界では威厳を持った模範言語とされてきたためです。しかも、「英語」は18世紀の半ばになっても、発音と綴りの不一致問題や・文法の誤り、言葉の乱用などが問題視されていたのです。


 しかし、そうであったはずの「英語」が多くの人に使われるようになったのは、19世紀~20世紀にかけて起こったイギリスの産業革命や工業化、植民地支配などが影響したためです。ここで急激に「英語」話者が増えました。


 現在、英語は「イングリッシュ」とも言いますが、シンガポールで使用されている英語などを「シングリッシュ」、アメリカのヒスパニック系の人々が使う英語とスペイン語が混じったものを「スパングリッシュ」などと言われることがあります。英語が広がった地域でもさらに別の形へと変化して使われているということですね。


 しかし、これは「英語」という言語の辿る運命といいますか、「英語」だからこその変化であるように思います。


 次話に続きます。


*注意*

*1、ゲルマン民族大移動の時期については、辞書や資料によって異なる。辞書で調べると「4世紀後半」が多くを占めるが、歴史系の資料によると「5世紀半~6世紀」にかけてという記載があり、言語関係の資料だと449年と特定されている。どれが確かなのか、筆者が持っている資料でははっきりと分からなかった。そのため今回は、言語関係の資料が5世紀半ばだったことを考慮し、本文では歴史系資料の内容を採用している。


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