◇閑話◇ 英語はどこから来た言語なのか(後編)

 前回の続きです。


 さて。

「英語」のネイティブであったアングル人ですが、ブリテン島へ渡ってから様々な種族との戦いや支配などがあり、それが「英語」という言語にも影響していきます。


 5世紀後半からゲルマン民族の大移動があったと前述しましたが、それ以後ブリテン島ではアングロ・サクソン人の王国(または「アングロ=サクソン人の七王国」。資料によって呼び方が違うようです)が築かれていました。

 しかし、1016年にデンマーク出身のクヌートに支配され、1066年にはノルマンディー公ウィリアムに征服されノルマン朝が開かれました。これによって、アングロ・サクソン人の王国の大半が滅ぼされたと言われています。


 その後はフランス系の王朝、15世紀はウェールズ系のテューダ朝、スコットランド系のスチュアート朝、17世紀はオランダ人のウィリアム三世、18世紀はドイツ人のジョージ一世のハノーヴァ朝といった外国人君主の支配下に置かれました。そして支配する王が変わることにより、「英語」は周囲の言語を取り入れていったのです。


「英語」のネイティブであったアングル人は、ゲルマン民族の一派です。

 そのため、英語で記された書物の中でもっとも古いとされている叙事詩『ベーオウルフ(ベオウルフ)』に記されている「古英語(初期の英語)」には、現代のドイツ語と似ている部分があると言う研究者もいます。


 しかし、現在使われている英語の語彙(約60万字)の語源を調べてみると、ゲルマン語系はそのうちの約4分の1しかありません。(資料によっては「全体の3割」としているものもあります)ではそれ以外はどこの言語が語源になっているのかと言うと、ラテン語やフランス語が全体の半分を占めています。

 特にフランス語は、1066年に支配したノルマン人が支配したことによるもので、この時は公的な場所で使われる言語が英語にとって代わっていったためと言われています。

 日本語のなかにも「元々は中国語」という言葉が多くありますが、現代英語も半分は外来語(借用語)で出来ているということですね。


 支配者がころころと変わる歴史も影響してか、英語は様々な国の人々の文化に馴染みやすく、その土地や人柄らしい言語の色になっているのかもしれません。


 いかがだったでしょうか。内容の大半が歴史の話になってしまっていて「どこが言語学?」という感じだったかもしれませんが、少しでも楽しんでいただけたのであれば幸いです。

「英語がどこから来たのか、そしてどう変化したのか」を知って得するとは言えませんが(披露する場所もありませんしね<笑>)、人類の歴史として知っておくのもいいのかなと私は思います。


 以上、「英語はどこから来た言語なのか」でした。


<内容信憑性について>

 念のため書いておきますが。言葉は変容するものですし研究者によって見解が違うこともあるので、上記のことが「絶対」とは言えない部分があります。ただ使った資料を重ねたときに被るところをピックアップしたつもりなので、大まかな部分は合っているかと思います。


<参考資料>

遠藤和宏ほか『時空旅人 2021年1月号 11月26日発売 Vol.59』(株式会社三栄 2021.1126)

大野晋『日本語の源流を求めて』(岩波新書/2007.9.20)

堀田隆一『英語史で解きほぐす 英語の誤解』(中央大学出版部/2011.10.7)

木村靖二・岸本美緒・小松久男『諸説世界史研究』(株式会社山川出版社/2017.11.30)

「世界の歴史」編集委員会『新 もういちど読む山川世界史』(株式会社山川出版/201.7.25)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る