◇閑話◇ 当て字 「剣橋」と「牛津」

 今日はちょっと当て字の話をしようと思います。


 最近日本語関連の書籍を読んでいたら、「剣橋」と「牛津」という言葉が出てきました。どちらも当て字なのですが、皆さんはこれが何の当て字なのかお分かりになるでしょうか。(私は分かりませんでした……)


 ヒントは地名です。有名な大学にも付いている名前です。

 ……それにしても「剣橋」は何となく分かりそうですけど、「牛津」はだいぶ無理があるんじゃないかと思います。これ、知らなくて最初から読めた方がいらっしゃったら凄いです。


 では、答え合わせをしましょう。

 正解は「剣橋」で「ケンブリッジ」、「牛津」で「オックスフォード」です。

 これがそうだと言われても、ちょっと納得しがたい当て字ですね……。当て字なんてそんなもんだと言われればそうなのですけども。


 これらの当て字について調べていたところ、ちょっと面白い記事を書いていらっしゃる方を発見しました。荒川清秀氏という方の論文のようなのですが、少しそこに書かれていた話をお話いたしましょう。


「剣橋」の当て字の組み合わせについて記載があったのですが、それをきちんと言葉で言い表すと、「音訳+意訳=半意訳」という形を取っているそうです。言葉なのに、なんだか算数のような話ですね(笑)


 さらに詳しく見てみると「剣」は音読の「ケン」という音を採用しているので「音訳」に当てはまります。英語で言ったら「ソード」ですからね。その一方で「橋」は英語の「ブリッジ」という発音を活かしているので「意訳」となり、これらの二つが組み合わさっている、ということになります。読者の方もそのことはよくご理解されたかと思いますが、何ともみょうちくりんな形だなと思います。


 一方で、「牛津」は「純粋意訳」という形をとっているそうす。

 それは「牛」を「ox」、「津」を「ford」と英語読みしているからです。ただ「牛」=「ox」と捉えるのはいいとして、「ford」は英和辞典で調べると「浅瀬」と訳されています。それと、「津」がどうしてつながったのかは謎である、と荒川清秀氏の論文にも記載がありましたが、想像するに「『さんずい』があるし、水系だから『津』でも当てておこう」みたいになったのかもしれません。


 ちなみに「剣橋」「牛津」とよく一緒に紹介されるのが、「聖林」と「桑港」という当て字なのですが、こちらは読めるでしょうか。このColumnの最後に答えを書いておきますので、良かったら少し考えてみてから答え合わせをしてみてください。


 当て字は沢山あるので、取り上げると結構な数になりそうな予感なのですが、また面白そうなものがあったら、Columnでご紹介しようと思います。



<参考資料>

外国地名の意訳 —「剣橋」「牛津」「聖林」「桑港」—

https://leo.aichi-u.ac.jp/ic/aic/civilization21/files/conts005/arakawa.pdf



<「聖林」と「桑港」の読みの答え>

「聖林」……ハリウッド

「桑港」……サンフランシスコ

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