Column9 「辛党」は辛い物が好きな人?
「辛党」と「甘党」。この二つは対義語です。
漢字の組み合わせや、周囲の人たちが言っているのを総合して、私は「辛党」は「辛い物が好きな人」、「甘党」は「甘い物が好きな人」とざっくり覚えていたのですが、きちんと辞書を調べてみるとどちらも違います。
「辛党」とは、酒類を好む人です。『明鏡国語辞典』『新明解国語辞典』を調べても同様のことが書かれており、前者に至っては「辛い物を好む人の意で使うのが俗用」と記載されています。
一方で「甘党」は単純に「甘い物が好きな人」ではなく、「酒よりは甘いものが好きな部類に属すること」(『明鏡国語辞典 第三版』より)というのが本来の語釈です。
ということは、子どもに「君は甘党だね」とは言えません。
その子が甘い物が好きだとしても、「お酒と比べて甘い物が好き」が甘党の本来の意味ですから、これは誤った言い方になるでしょう。
しかし「辛党」に関しては、「辛い物が好き」という意味で使われるようになってきているようです。『三省堂国語辞典 第八版』では「からい食品が好きな人」という意味が掲載されていました。
ふと、いつからその意味が受け入れられるようになったのかなと思い、ちょっとした好奇心で『三省堂国語辞典 第七版』もついでに引いてみました。
するとそこには「[あやまって]からい食品が好きな人」と記載されていたのです。つまり第七版の出版当時「辛党」=「辛い物好き」として使う人たちが出てきていたようですが、それはまだ「誤った使い方」として辞書を制作する側は認識していたということです。もしかすると第六版でも同じような語釈があったかもしれませんが、残念ながら第六版は私の手元にないので調べてここに書くことはできません。すみません。
第七版は2014年に発行されているので、8年の間に「辛党」=「辛い物好き」という使い方をしている方々が増えていき、現在の語釈に落ち着いたと考えられます。
ただ、私が持っている辞書のなかで『三省堂国語辞典 第八版』以外は、新しい意味を載せていません。上記に述べた通り『明鏡国語辞典 第三版』に俗用として載っているくらいです。そのため、「辛党」=「辛い物好き」が新しい意味として使うときは検討をする必要がありそうです。
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