Column8 「ぞっとしない」は「怖くない」という意味ではない?
だんだん季節が夏に近づいて参りました。空に浮かぶ雲の形も、もくもくと縦に大きくなっている積乱雲を見ることが増えて来たのですが、皆さんのお住まいの地域ではいかがでしょうか。
さて、夏になるとお化け屋敷に入ったり、ホラー映画を見たりするのがお好きという方もいらっしゃるのではないでしょうか。怖さで背筋がすうっと寒くなるのがいいとか、なんとか……。といいつつ、私はホラーは苦手なのでご遠慮いたします(笑)
怖いものを見たときや感じたとき、またそれによって寒さを伴ったとき「ぞっとする」という表現を用いますよね。一方で怖くないとき「ぞっとしない」という風に使うことはあるでしょうか。
実は「ぞっとしない」という言葉には、怖いものを見たときや感じたときに感じる感覚を否定する意味はありません。
では、どういうときに使うかといいますと「ぞっとしない作品だ」「ぞっとしないアイディアだ」という具合です。意味は「面白くない」「感動しない」になります。
恐怖によって体が震えるような感覚を表現する「ぞっとする」を否定形にすると、ちょっと違う方向の意味に変わってしまうので、使うときは少々注意が必要な言葉といえそうですね。
ちなみに『三省堂国語辞典』で「ぞっとする」を引いたところ、「恐怖によってふるえあがるような感じ」というような意味だけではなく、美しいものを見たり感動したときにも用いられる表現であることが書かれていました。『明鏡国語辞典』『新明解国語辞典』『岩波国語辞典』『旺文社標準国語辞典』ではそこにはふれていなかったので、辞書によって解釈が微妙に違うようです。
ただ、「ぞっとする」という言葉が人の感覚的な部分を示す言葉なので、そこは意味の中心がぶれていなければ、使い手によって幅広く使うこともできるのかもしれません。
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【ぞっと】『三省堂国語辞典 第八版』
急に寒くなって鳥肌が立つ感じ。
「背筋が――する・おそろしくて――する[=身の毛がよだつ]・[感動で]——するほどの美しさ」
・ぞっとしない(慣用句)
感心しない。感動をおぼえない。
「あまり――アイディア」
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