◇閑話◇ 「ありがとう」と「オブリガード」

 私は知らなかったのですが、「ありがとう」は「ポルトガル語の『Obrigadoオブリガード』から由来している」という説が巷ではあるそうです。(『さらに悩ましい国語辞典』より)


 しかし、古典を習っている方であればお分かりかと思いますが、「有り難う(もしくは「有難う」)」は「有り」+「難し」の形で、「有り難し」として使われていました。これは「有ることがむずかしい、すなわち、めったいにない、まれである」というのが原義で、そこから近世以降、「感謝にたえない意に変化」しました。(『全訳読解古語辞典 第五版』参照)

 また、「ありがとう」自体は、「ありがたい」の連用形「ありがたく」がウ音便化した語です。


 そのため、ポルトガル語の「オブリガード」とは関係がありません。しかし「アリガトー」という音が近い感じがしますし、意味も「オブリガード」はポルトガル語で「ありがとう」なので、似ている言葉ということに少し驚いた、というお話でした。


<余談>

 ポルトガル語だけではなく、イタリア語にも「オブリガード」ならぬ「obbligatoオブリガート」という言葉があります。それは音楽用語として使われるのですが「助奏」という意味を持っています。

 ちなみに、ヴァイオリンの弦メーカーにも「Obligatoオブリガート」という名前があります。色々ややこしいですけど面白いですよね。

 日本語のカタカナに外国語を置き換えてしまうと、どれも近い音に聞こえますが、多分イタリア語やポルトガル語を母語にしている人や、話せる人たちにとっては、「どちらも似ているけれども、全く別物」のとして捉えていると想像します。

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