細く分解したら

シヨゥ

第1話

「細かく細かく分解する。やがて分解できなくなる。それが本質というやつだ」

 兄貴にそう言われた。

「お前が好きで好きで仕方がないプラモデル。なぜ好きなのかを細かく細かく分解していく」

 そう言いながら本当に組み上げたプラモが分解されていく。

「そうして残った思い。それがお前がプラモデルを好きな理由になる。組み立てるのが好きなのか、デザインが好きなのか、それとも別のことなのか」

 そう言っている内に兄貴は分解し終えてしまった。

「プラモデルの良さがわからない俺にはさっぱり分からないけどな。とりあえず箱に始末まで片付けておいてくれ」

 微笑む兄貴。その顔にちらりと見えた怒り。それは散らかしたことへの怒り。それに抗うことはできないのだった。

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細く分解したら シヨゥ @Shiyoxu

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