そして新しい物語②
黒崎鈴夢は『忘れてはならない過去の負債』の一つだ。
多国籍企業G.E.H.E.N.Aという表は真っ白、裏では真っ黒の倫理観ゼロの外道魔境が存在した。それは英雄が興した会社が潰して、G.E.H.E.N.Aの行っていた研究は一度漂白され、そして有用なものは徹底的な監視体制のもと、進められている。
その旧G.E.H.E.N.Aの被害者が黒崎鈴夢だ。
デストロイヤー引き寄せる因子を埋め込まれて、爆弾や陽動として使い潰される予定だったが、幸いにもの英雄に助けられて彼女の庇護下に入った。
魔力とデストロイヤー細胞を使った技術は多岐に渡り、戦闘はもちろん医療やライフラインの形成にも使われている。
地獄から救い出された彼女は、投薬治療とカウンセリングを受けて、こうして武器を手に取る決意をしてここにいる。
「ふぅ」
案内された部屋の中。
鈴夢はこの横浜衛士訓練校の意味を考えていた。
ここ、横浜衛士訓練校は複雑な背景を元にして建設された女学院型前線基地である。
元はアルトラ級デストロイヤーの巣穴だった。だが、オペレーションルシファーで土地を奪還。地球奪還計画を推進する地球奪還勢力と、地球外への脱出勢力が火花を散らす中、ソ連が首都機能を北米に移転、アメリカ合衆国のユーコン川以北のアラスカ州の租借を要請。
国境を直に接することになった米国とソ連、その緩衝地帯でもあり、中立地帯でもある方がいいと判断された結果、出来上がったのが姉妹基地であるユーコン基地。更に極東防衛戦の要となる横浜衛士訓練校に、ユーコン基地で行われている技術研究所の実施場所として選ばれる。更に『どうせやるなら世界中の技術を集めた方が良い』ということで、各国の試験武装と衛士、支援要員、技術者達が集結している。
含まれた意図は多い。あらゆる陣営を超越して協力するポーズを見せることなど、政治的なものがほとんどではあるが。だからこそ、表面上は争いなど起きては困るのだ。
部屋の中では、アネモネ試験小隊の隊長である『東雲千香留』は、隊員である『金色一葉』『今流星』『蒼風』達――――特にトラブルを起こしがちな『蒼風』に念入りに『黒崎鈴夢』の説明が成されていた。
「つまり彼女はデストロイヤーを呼び寄せる体質で、それを利用して戦術機や装備の試験を行う。なので黒崎さんは最低限の戦いしか行わないってことですか?」
「つまりお姫様ね」
「珍しいー、デストロイヤーを引き寄せるなんて嫌だね。でもこれからは私が守ってあげるから大丈夫!」
「よ、よろしくお願いします」
黒崎鈴夢の死は最悪この極東防衛戦の要所たる横浜衛士訓練校の崩壊する危険まで発展する可能性もあった。
(………そうした危機感を共有しておかなければまずい、って判断ですね)
そして、口頭での報告だけで済ませる理由も。
鈴夢は、東雲千香留が鈴夢の特異体質を隠さず、忠告するのに対して、アネモネ試験小隊の隊員達に一目置いているか、あるいはこの鈴夢の防衛に必要不可欠な存在であると判断しているか、そのどちらかであると推測をつけていた。
鈴夢が思う。確かに、過去のデータからも納得はできると。
フェニックス構想――――既存の第一世代戦術機、第二世代戦術機を改修してアップデートし、第三世代機の域にまで押し上げる。
その有用性は先日証明された。
改修された第一世代は、2.5世代機と言われるグングニルに劣勢ながらも負けていなかった。
そのフェニックス構想は終了しているらしい。完成品が主力汎用量産戦術機弐型である。
アネモネ試験レギオンはフェニックス構想の完了と同時に、ダインスレイヴ改修計画に編入。
構想により完成した汎用量産戦術機はダインスレイヴ改修計画の比較戦術機として、そのまま計画として使用されるとのことだ。
(私の着任をもって、事実上のスタート……この横浜衛士訓練校という名前の前線基地で)
横浜衛士訓練校では各国の衛士が技術交換を重ねながら、独自の計画を進行しているという。
主に言えば、戦術機の開発計画。対デストロイヤー戦略や戦術に関してはもちろん、整備の事も各国の交流が深められているという。
とはいえ、国籍の違う者達だらけである。
ローカルルールや宗教的なこと、細かい所を上げれば際限がないほどに、世界が違う者たちが集まっているのである。
そうした中での相互関係を保つための独特なルールがある。すれ違いから時には口論や喧嘩など、実際に衝突する者たちが居る―――が今の所、概ねは問題なくやれているらしい。
(でなければ、すぐに中止だよね………一部、分かっていない人も居るみたいだけど)
『やらかし』を行ったのは蒼風だ。。
先日の研究所から逃げたデストロイヤーを倒そうとして、重要な施設を破壊したのだ。
(けど、まぁ愛される馬鹿なのかな)
叱咤はあれど許されているし、彼女の態度に文句を言う人はいない。意識を逸していたところで東雲千香留が黒崎鈴夢を指し示す。
「彼女は最重要護衛対象です。くれぐれも怪我をさせないように。そのため、デストロイヤーと衛士、あとは装備関連についての説明を改めて説明します。鈴夢ちゃんできる?」
「はい」
◆
【デストロイヤー】
・宇宙から来訪して、南極に着陸したアルトラ級が作った巣で生産され、ケイブと呼ばれるワープホールで出現する謎の生命体。その細胞は万能である。
・スモール、ミディアム、ミドル、ラージ、ギガント、アルトラと大きさと防御結界の硬さから六段階に区分けされている。
・戦闘では『数の暴力を生かした物理攻撃での正面戦闘』、『幻覚、幻聴などの同士討ち』、『ステルスと即死級の奇襲』、『電子欺瞞』、『5秒で即死のレーザー照射』などに気をつける必要がある。
【衛士】
・デストロイヤー細胞によって進化した次世代型人類。
・心臓にリンカーコアと呼ばれる魔力発生器官を内蔵。更にもう一つマギと呼ばれる特殊なエネルギーを発生させる器官がある。
・マギによってレアスキルと呼ばれる異能を扱い、リンカーコアのよって近距離型、汎用型、遠距離型と適性が決まる。
・身体能力は旧型人類の7倍で防御結界と呼ばれるバリアを展開している。
・先天的、後天的問わずデストロイヤー細胞の適合率を示す数値50以上100未満なら衛士とされる。それ以下は旧人類、それ以上はデストロイヤーとして扱われる。
【戦術可変戦闘兵器(通称・戦術機)】
・英雄がもたらした戦術機の情報を基盤にした衛士専用の兵器。
・36mmと120mmの遠距離射撃と、マギ鉱石を使ったブレードで近接戦闘が可能。
・主力となるのは第二世代のブリューナク、グングニル、ダインスレイヴ。サブとして第一世代の量産汎用戦術機が戦場にポットで投下される。
【その他】
『アンチデストロイヤーウェポン』
・スキラー数値が50未満の支援要員やアーマードコアに装着する。
『バトルクロス』
・騎士甲冑のような外付けの衛士専用パワードスーツ。マギの消費は激しいが、マギバッテリーとマギコンデンサーの登場で、実戦向きになった。
『アーマードコア』
・ノーマルヒューマンが扱う通常の弾薬が積まれた二足歩行型の戦闘マシン。主に衛士の壁役やミドル級までの掃討を主な任務とする。
◆
二〇〇一年五月三日
日本・横浜衛士訓練校・統合司令部地下1階 C-108ブリーフィングルーム。
そこは装飾の欠片もない壁と明度の低い蛍光灯の光が、ただでさえ狭い空間を野暮ったく、 味気なく彩っている。 たった5人が詰めただけでも狭苦しさを覚えるその灰色の函に押 し込まれてい鈴夢は、退屈という名の敵と格闘していた。
ブリーフィング開始からかれこれ2時間、昨日の研究用デストロイヤー脱走事件のデブリーフから在り来りの訓話という流れは、彼女にとって目新しい情報も少なく、苦痛以外 の何物でもなかった。
それに対する唯一の救いは、アネモネ試験レギオンがこれまで携わっ てきた『フェニックス構想』なる会社の第一世代戦術機強化プランについてのく だりであったが、ブリーフィング開始直後に話された上に、そのプランが各国合同開発計画である 『ダインスレイヴ改修計画』に編入されるという事から概要説明に止まったため、その後90分以上は、メモパッドに妙な幾何学模様を描き続けたり、それらの線を太くして連結 したりする作業を続ける他なかった。だが、無意識に前衛アートを量産する事にいい加減飽き飽きしていた鈴夢は、レギオンメンバーの観察を、退屈に抗う新たな手段に選んた。
ブリーフィングルームには、9脚のテーブル付パイプ椅子が置かれていて、それらは 3列×3席という配置になっている。 演壇に向かって左端最後方という鈴夢の座席位置は、 千香留の目を盗んでチームメイトを観察するには格好のポジションであ った。
鈴夢がまず目を付けたのは右隣の蒼風、行儀悪く脚を広げて座っている衛士だった。
その衛士が最初のターゲットに選ばれた理由は、鈴夢をそれなりに苛立たせて いたからである。
鈴夢は姿勢正しく座ったまま、横目で見遣った。 紫色のリボンと長い銀髪と、深く落ち窪んだ眼窩からのぞく優しげな瞳。彼女も退屈しているらしく、お気に入りの曲でも思い浮かべているのであろう――これが苛立ちの原因なのだが――リズミカルに身体を揺すっている。
対照的に鈴夢の前に座っている女性は、ブリーフィング開始以来、彫刻の如く微動だにしていな軍人のような衛士だ。
鈴夢は入室時に彼女の横顔をチラと見たが、日本人らしい見事な黒髪と白い肌が眩しい、どこか冷たさと覇気を感じさせる美貌を持つ― まさに彫刻のような衛士だった。その際に彼女も鈴夢を一瞥したが、片方の眉毛をくいっとあげると、すぐに視線を戻してしまった。以降は鈴夢の存在一切を無視するかのような態度を続けている。
鈴夢の人間観察はあっという間に終わってしまった。当然である。人には向き不向きというものがあるのだ。元々他人にあまり興味がない内向的な鈴夢には、「暇つぶし」としての人間観察のハードルはかなり高めだろう。
最後に仕方なく、 衛士としての興味を振り絞って蒼風を眺めてみた。彫刻美女の斜め前、最前列の中央に陣取っている。昨日の一件から、蒼風に対し『気が強く自己中な跳ねっ返り』という印象を持っていた鈴夢は、演壇の真正面に座り、尚かつブリー フィングに対し真剣に向き合うその姿を見て「意外に根は真面目な奴なのかも知れない」と感心した。
少なくとも突発的なデストロイヤーの襲来に対して制圧できる腕を持つ以上、才能だけではなく、 地道な努力を積み重ねているのは間違いない。
鈴夢は衛士としての蒼風の印象を細やかに上方修正した。しかし見ているのがバレたのか後ろで手を振って笑いかけてくる。
(大丈夫なのかな? このレギオン)
この先しばらくこれが続くのか――鈴夢は軽く頭を振った。ただでさえ気が乗らない護衛対象としての任務に、更なる暗雲が立ち込める。 正直なところ、鈴夢は蒼風の態度に対するリアクションに窮していた。
初対面の人間に対し、ストレートに友好的な感情を露わにする衛士はそれほど珍しい訳ではないが、しかし友好的に接せられるほど人生経験が豊かなわけでもなかった。
その点、 銀髪と軍人の外見及び態度は至ってノーマルの範疇であり、彼等のスタンスは鈴夢にとってはとても有り難いものだった。
恐らくは鈴夢の視線に気付いていながら、敢えて流している風なのだ。必要以上に互いに興味を持たず、干渉もしないという姿勢は、鈴夢にとって最も望ましいオトナの取るべき態度そのものであった。願わくば、彼等のその態度が「新参者」への通過儀礼などではなく恒常的であって欲しい ―鈴夢は心からそう願わずにはいられなかった。
「はい、じゃあみんな、紹介が遅くなったけど、彼女が本日付で編入となった黒崎鈴夢護衛対象よ。出身はなんとあの英雄の付き人、なんとも頼もしいエリート衛士ね」
思いがけない千香留の紹介に応え、鈴夢は一同に対して軽く目礼した。だが、 部隊員達の反応は予想を全く裏切らないものだった。蒼風は笑顔で手を振って、前を向いたまま、他のふたりは全くの無反応で、それまでと変わらぬ所作を維持していた。
まあいつもの事なのだろう、千香留は部下達の無関心な態度には特に触れず話を続けた。
「じゃあ私が、恥ずかしがり屋達に代わって、私が紹介するわね」
千香留は演壇に両手をついて体重を預け、鈴夢を見据えた。
「鈴夢ちゃんの右側に座っているのが、ボーニックス社日本支部から派遣されている今流星さん」
流星は相変わらず身体を揺すりながら鈴夢に顔を向け、上目遣いに一瞥した。 その時に鈴夢には流星が軽く頭を下げたようにも見えたが、身体の揺れなのか、 そうではないのかが判別できなかったため、取りあえずスルーを決め込んだ。
「前に座っているのが同じく日本支部から派遣されている金色一葉ちゃん」
千香留の言葉に呼応して一葉は横を向き、「はい! よろしくお願いします!」と軍人らしいハキハキとした返事を返した頷いた。
「そして、アイスランドから派遣されている蒼風ちゃんはもう十分に知っているな」
「はい」
千香留の最後の言い回しに対し、鈴夢は極力シンプルかつ、感情を一切排除し 返答をする努力をした。
それは蒼風の立場や感情に配慮したのではなく、彼女の性格を目の当たりにし、これ以上面倒くさい状況を産む事を避けるための最大級の努力だったのだ。だが蒼風は乱暴に脚を組み替えてパ イプ椅子をガタンと揺らして、手を振ってきた。
「最後に改めて私も日本支部から派遣されている東雲千香留よ」
そして。
「さて、自己紹介も終わったところで、いよいよ本題に入る。先程も説明したとおり、これまで我々が進めてきた、『フェニックス構想』に基づく 一連の実証実験は一応の成果を認められ、次なる段階として 『ダインスレイヴ改修計画』に協力する事になった。それに伴い、『ダインスレイヴ改修計画』の専任テスターとして、黒崎鈴夢さんが配属されたわけですが、チームにとって最も重要な信頼関係を醸成するため、さしあたって皆さんには、親交を深め合ってもらおうと思います」
やはり鈴夢も英雄の元ではしのぎを削る衛士の端くれであった。憂鬱な任務に腐れてはいても、腕の立つライバルと競い、打ち勝ちたいという戦術機テスターとしての本能というべき闘争心が燃えたぎっていた。だが、彼女の闘争心の源は、一般的な衛士からの差別や偏見から鈴夢を救っていて、他の者とは違っていた。
親交を深めるという言い回しに、鈴夢は何となく皮肉のニュアンスを感じ取った。
(蒼風はともかく、軍人と銀髪の腕がどんなものか見てみたい……)
彼女は技量こそが第一級の最前線での立場たらしめ、周囲にそれを認めさせているアイデンティティそのもなのである。従って深層心理的に見れば、自分以外の凄腕衛士の存在は、自身のアイ デンティティが脅かされているのと同義なのだ。対人関係では極力淡泊さを求める鈴夢が、こと戦術機が関わると、より積極的で攻撃的な言動を見せるのはこのような理由があった。
「そこで本日のカリキュラムだが、鈴夢ちゃんの着任祝い代わりに演習を行います 『CASE: 47』」
無関心を装っていた一同に一瞬の緊張が走った。
『CASE』は「戦術機を使用するテロリストとの戦闘を想定したカリキュラム」 という建前で各国に採用されている汎用対人類戦術訓練プログラムのひとつで、最小単位であるエレメント同士の廃墟市街戦を想定したものである。
(少なくとも退屈はしなくて済みそう……)
鈴夢はそう思った。ただ残念なのは2機編隊を組まなければならないことだった。彼女にとっては衛士個人の力量が明確になる1対1の近接格闘戦が望ましかったが、対デストロイヤー、対人類の何れに於いても、そのよ うな特殊な状況が現出する可能性が殆どない以上、それを想定した演習など余興以外の 何物でもなく、昨日の「事故」のような偶発的状況でもない限り実現は望み薄であろう。
「想定はギガント級が存在するデストロイヤー支配地域より一七〇キロメートル離れた市街地よ。従って飛行高度は制限されるものとする。 勝利条件はリーダー衛士の撃墜」
千香留の背後にある大型モニターの画像が切り替わる。 装備は前衛がグングニル、後衛がブリューナク。付加要素は両軍ともCPは壊滅。オープン回線は使用禁止。戦城データリンクは僚機とのアクセスのみに限定。
前衛と後衛で、装備を分けるのは人類戦装備を指す略称だ。。対デストロイヤー戦とは違い、各種センサーを使用不能にする妨害装置や光学器機を欺瞞するスモークディスチャージャーなどもそれらに含まれるのだ。
「演習の詳細については以上だ。何か質問は?」
ひと通りの説明を終え、 千香留は周囲を見渡す。全員が沈黙をもって質問がない 事を表明した。
「では編成を発表する。 A分隊レギオン、蒼風、リーダーは今流星」
蒼風が頷き、今流星が軽く右手を挙げた。
「B分隊レギオン、金色一葉、リーダーは黒崎鈴夢」
千香留を除く全員が、各々の基準に於ける驚きの表情を見せた。
「塩崎鈴夢には私に代わって、私のグングニルを使ってもらう」
「ちょ、ちょっと!」
分隊のリーダーに鈴夢がアナウンスされた時点で腰を浮かせていた蒼風が、驚きとの入り交じった声を上げた。
「なにかな、蒼風ちゃん。何か文句でもあるのかな?」
「……失礼しました·」
千香留はただ表情を消して見据えただけで、上官の発言を遮るという行為そのも のは咎めなかった。蒼風は何かに押し戻されるかのようにゆっくりと腰を下ろした。
「あの……異議ではありませんが……どうしてあの子が」
「ダインスレイヴ改修計画が始まれば鈴夢が私のポジションに着き、私は指揮所に入る事になるわ。これはその予行練習でもあるから」
「え……」
蒼風の顔が更に曇り、一瞬うつむいたかと思うと顔を上げ、鈴夢を睨み付けた。
(そんな……八つ当たりされても)
鈴夢にしてみればこの展開は全く望ましくないものだった。千香留が彼女に与えたのは、『皆が敬愛する隊長のポジションを奪った新参者という悪役』そのものだった からだ。とは言え、対人関係に於いてはとても面倒くさい状況ではあったが、衛士との真剣勝負として考えれば、それはまた別の話である。幸い、デストロイヤーを呼び込む体質上、疎まれる立場には慣れていた。
怒りの矛先が自分に向くことで凄腕衛士と本気で戦えるというなら、それはむしろ望むところなのだ。
「黒崎鈴夢ちゃん、英雄のレギオンでは通常訓練に対人戦演習が組み込まれているらしいな」
「はい、東雲隊長」
「だそうよ。みんな良い機会よ。トップガン仕込みのテクニック、たっぷり勉強させ てもらってね」
銀髪の今流星は『トップガン』で吹き出し、『勉強させてもらって』で蒼風が再び鈴夢を睨み付ける。 一葉は軽く首を動かしただけだが、恐らく失笑したのだろう。
「他に質問は?」
再び沈黙によって答える一同。
「よし、では一三二五に完全装備で第5演習場に集合」
『了解ッ!!』
「では解散よ」
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