第7話 襲撃
「海がいない!」
「あいつはまた。放っておけよ」
「放っておけだと?!もし昨日みたいに一人で修行しようとして何かあったらどうするんだよ?!」
「海もそこまで馬鹿じゃないさ。今は一人で考えたいんだろ。
もういい加減父親代わりをするのはやめたらどうだ」
その言葉に空は一瞬大きく目を見開いてからグッと鷹斗を睨みつけた。
「俺たち兄弟のことに口出しするな」
「友人として心配しているんだ。お前の人生はお前のために使うべきだ」
「……もういい、俺一人で探してくる」
空が鷹斗に背を向けたその時だった。
「!」
これまでに経験したことが無いくらいの邪瘴の気配に二人はハッと同じ方向を見た。
「おい、なんだこれは。村の外れの方から有り得ないほどの邪瘴を感じるぞ。
……いつも俺たちが修行してる辺りか?」
「海!」
空は顔面を蒼白にして走り出した。
◇。..◇。..◇。..◇。..◇。..◇。..
ガキン!
海は必死に身を
「ああ?なんてこった、抜けねぇぞ!」
大鉈を抜こうと四苦八苦する血黒丸に、地面へ倒れ伏した海は息を殺してそろりそろりと這いずって大岩から離れると一気に立ち上がり竹林の中へと逃げ込んだ。
「あ、待てコラ!!」
血黒丸の怒鳴り声が辺りに響き渡る。海は恐ろしさに崩れ落ちそうになるのを堪えながら
(見つけたって何のことだ?!しかも邪瘴の気配がした)
海はガチガチと鳴る奥歯を無理やり抑え込むように噛みしめた。恐怖を感じてしまっている自分が、そして何もできず逃げるしかない自分がただひたすらに悔しかった。
(僕も言祝師として戦えたら……)
「追いついたぞクソガキが!」
ハッと横を見ると先ほど襲い掛かってきた男がそこにいた。
「今度こそ仕留めてやる!」
おおきく振りかぶられた大鉈がギラリと光る。海は慌てて距離を取ろうとしたが焦って足を滑らせてしまった。
「ッ!」
「終わりだ!」
海が恐怖に目をぎゅっと閉じたその時だった。
「
轟音と共に水の砲弾が勢いよく血黒丸に襲い掛かった。
「ゴボッ!」
「海!大丈夫か?!」
全速力で駆け寄ってきた空は海の様子を見て
「どうしたんだこの怪我、あの男にやられたのか!出血が酷い。すぐに手当てしないと」
「兄ちゃん……」
助け起こし手当をしようとしてくれる空に海は安堵のあまり忘れていた腕の痛みを思い出し今更ながら
「空!!だからお前が突っ込むなって毎回毎回言ってるだろ?!俺を置いて行きやがって!」
「うるさい、お前だって曲がりなりにも俺の
遅れて到着した鷹斗は海をのぞき込んで息をのんだ。
「邪瘴に憑りつかれてやがる」
空が持っていた
「おいお前!一体何者なんだ?!なんでこんなことをしたんだ!」
すると血黒丸はバッと起き上がると妙に誇らしげに名乗った。
「俺様は
「シンジュ?何だそれは」
「俺たち九頭龍が邪龍を復活させるために必要なモノだ」
「邪龍を復活させるだと?!」
「そうだ。だからその珠を渡せ。渡さないなら殺す」
「そんなことを聞いて渡せるわけがないだろう?!お前はここで俺が倒してやる!!」
「落ち着け」
鷹斗は今にもいきり立ち突っ込んでいきそうな空を押しとどめた。
「まずは俺の刀を出せ」
「……。
空が早口で祈詞を唱えると龍心環から
颯馬はその細身で美しくありながらもしっかりとした刀を掴むと血黒丸に向かって構えた。
「今は海の邪瘴を祓ってやることが優先だろ?ヤツの相手は俺がするからお前は海を安全な場所へ連れて行け。
それと、悪かったな、お前が海を探しに行くって言った時放っておけなんて言って。お前たち兄弟のことについても踏み込んだことを言ってしまった」
「……もういい。頼んだぞ」
「おうよ、すぐ片づけるさ」
空は海を抱えると元来た道を駆けて行った。
「邪魔すんじゃねぇよ」
血黒丸は鷹斗をギロリと睨みつけた。
「邪魔?おいおい、先に俺たちにちょっかいかけてきたのはお前の方だろ?すぐに後悔させてやるぜ」
鷹斗は不敵に笑った。
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