第一章 決意の旅立ち
第4話 憧れの言祝師
やがて村の入口の門が見えてくるとちょうど目当ての人物がその下を潜るところであった。
「兄ちゃーん!お帰りなさい!」
海の呼び声にすらりと背の高い青年が長い髪をなびかせ喜色満面で駆け寄ってきた。海の兄、
「海ー!ただいま~!」
二人はあたかも幾年ぶりに会うかのようにぎゅっと
「相変わらず兄弟仲が良いことだな。たったの五日離れていただけなのに大げさなことだ」
空と海が感動の再会に浸っていると
「
「ばっちり
空は得意げににっこり笑った。
空はこの都から遠く離れた
「おい、何がばっちりだ。いつもいつも後先考えずに突っ込んでいきやがって。“
鷹斗はハァーっとわざとらしくため息をついた。
言祝師は通常守刃と呼ばれる守護者とともに邪瘴を祓う。これは言祝師が術を唱える間に邪瘴に襲われないようにするためである。
言祝師とその守刃として契約を交わすとお互いの右手の甲に同じ花の紋、“
そうして契約を交わした二人は“
「まぁまぁまぁまぁ」
空はへらりと笑って
「流石兄ちゃん!僕も早く言祝師になりたいなぁ」
「なれるに決まってるさ!
「ありがとう兄ちゃん」
海は嬉しそうに笑った。
と、そこへ一羽の
「それ何?」
「
胡蝶蘭の紋が刻まれているということは
「筆頭大師?!」
海は驚いた。
筆頭大師とは言祝師の中で最も力があり多大な実績を残した三名のみに送られる
文鶴を受け取ってからの空の表情は少し硬かったが、手紙を読み進めるうちにさらに厳しくなっていった。
「海、すまないが早々に村を出なければいけなくなってしまった」
「また邪瘴?いつ帰ってくる?」
「邪瘴がらみであるのは確かだが、いつ帰ってこれるかは分からない」
「どういうこと?」
「海も邪龍が復活するかもしれないという噂は知っているだろう。
そのせいで言祝師が都に集められているということも。
ついにこんなど田舎の言祝師も見逃してはくれなくなるらしい。都への召喚状だ」
「そんな!兄ちゃんがいなくなったらこの辺りの邪瘴はどうなるの?!」
「邪瘴が現れた際は都に報告して、都から言祝師を向かわせるらしい」
「都からなんて!ここまで来ようと思ったら二十日はかかるのに間に合わないよ」
「だからこそこれまでは
しばらく考え込んでいた空であったが、海が不安そうにしているのに気が付くとおどけた様に肩をすくめた。
「ま、決まってしまったことは仕方がない。兄ちゃんは一度村長と話をしてくるよ。何か知ってるかもしれないし今後の邪瘴対策についても決めておかないとだからね」
敢えて明るく振る舞う空に対し、海は深刻そうな表情で空を見つめた。
「僕、修行してくる」
「一人でか?危ないから駄目だ。修行するときは必ず兄ちゃんとって約束だろ」
「でも、これから兄ちゃんは都へ行っていつ帰ってくるか分からないんでしょ?そうなったら僕はいつまで経っても修行できなくて言祝師になれないよ!
大丈夫だよ。兄ちゃんだって僕の年にはとっくに言祝師の試験に受かってたじゃないか。僕だってできるよ」
「駄目だ」
「どうして」
「海のことが大切で心配だからだよ。いい子だから、先に家で待ってて」
空はまるで幼子を相手にしているかのように言うと、鷹斗と共に村長の家へと向かって行った。
海はその段々と遠くなる背中をじっと見つめていた。
(兄ちゃんが心配してくれるのは嬉しい。でも……)
「僕だって早く言祝師になりたいんだよ」
空が家の陰に見えなくなると海はぱっと身を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます