第2話

俺はその後高校に向かったが、結局着いたのは3時間目が始まってからだった。結構気を失っていたらしい。

周りにさっきの出来事について聞いたら、やはり誰も気が付かなかったと言う。終いには俺の頭がおかしい扱いをされた。

ここまで誰も俺に共感してくれないと流石に自分が夢を見ていたのか?とも思ってしまうが、腕のケガがそれを否定している。

この日俺はモヤモヤした気持ちを抱きながら、ベッドで眠った。


万全の状態で眠れなかったので、翌日俺は寝不足のまま学校に行くことになってしまった。どうせなら早く行って昨日受けれなかった授業の復習でも簡単にしようと思い、普段よりも早く行くことにした。

学校に向かっている途中、ふと昨日の場所が今どうなっているか気になり行ってみることにした。


着いてみて、俺は驚愕した。

昨日まではちょっとした山みたいな場所で、あの出来事以降は荒野のようになってしまっていたのに、 今日来てみると、家が一軒建っていた。

頭がどうにかなりそうだった。ここに昨日まで家が建っていた、なんてことはたしかに無かった筈だ。ここに居るとまた頭が混乱してしまいそうなのでさっさと俺は学校に行くことにした。


勉強をしようと息巻いて来たのは良いが、やはりさっきの出来事で頭が混乱していて全然集中出来なかった。ちょっとでも気を抜くとさっきの出来事が頭に浮かんできてしまった。そんな事を繰り返していると段々クラスに人が集まりだした。なので俺は教科書をしまってスマホを弄ることにした。何故ならガリ勉キャラに認定されたくなかったからである。


スマホを弄っていると後ろから声を掛けられた。振り返ると、俺の数少ない友達の黒崎が登校してきたところだった。

「よぉ、今日は隕石降ってこなかったのか?」

「あぁ、そうみたいだな。」

こいつは昨日一番最初に相談したら、最初は笑っていたが後半はガチで頭の心配きやがった。なので結局俺が寝ぼけてたってことで話を終わらせた。そしたら俺が授業中居眠りしてると「今回は隕石降ってきたか?」とかからかうようになってやがった。


「てかそんなことよりもニュースだぞニュース!」

俺が黒崎から目を離しゲームをしようとしていたら突然黒崎が叫びだした。

「なんだよ、緑のうんこでも出たのか?」

「いや、それは結構出るけど…、てかそうじゃなくて! 転校生だってよ!転校生!」

「てんこうせい? こんな中途半端な時期に? なんでまた?」

「なんか聞いたところによると、外国からの転校らしいぜ、親の都合でここに来たって。」

「へぇ…それはまた、大変そうだな。」

「なんだよ、テンション低いな~。 お前この前転校生シチュがどのぐらい素晴らしいかって!、とんでもない熱量で語ってたじゃんか。」

「だってさ…、どうせ転校してきても関わり持つことそんなにねえだろうし、昔結婚を約束した相手!とかでもない限りテンションなんか上がんねえよ。」

「そんな転校生殆どいねぇだろ…。」

その通りなのだが、やはり俺は転校生には何か特別な事情を持ってきて欲しいのだ。


ホームルームの時間になるとクラスの奴らが集まってきた。しかも朝黒崎が言っていたように皆転校生が来ることを知っているらしい。一体どこで知ったのか。俺は全然知らなかったのに。俺だけが入ってないクラスラインでもあるのだろうか。

そんなことを思い一人悲しみに浸っていると、担任が入ってきた。いつもより若干顔に微笑みを感じる。クラスに新たな人間が入ってくる事に喜びを感じているのだろうか。


「えー、皆もしかしたら知ってるかもしれないが、このクラスに転校生が来ます。しかも外人です。みんな仲良くするように。」

クラスから歓声が起こった。俺はやっぱりテンションが上がらなくて、窓から空を眺めていた。今日は快晴とは呼べないがまぁまぁ晴れていた。今日は学校が終わったら何をしようか、等と考えていたら転校生が自己紹介を始めたらしい。なにか聞こえてくる。 しかし何故だかこの声に聞き覚えがあった俺は教卓の方を見てみた。


青空みたいな髪、そして宝石みたいな目。俺が知らない筈の転校生は、昨日会った好みドストライクの見た目をしたアイであった。


え?なんで? 俺が呆気に取られている最中もアイの自己紹介は続いていた。

「親の仕事の関係でこっちに引っ越してきました。 よろしくお願いします。」

一通り自己紹介が終わり、拍手が起こった。クラスの中から「日本語上手だな…。」とか「めっちゃ可愛い!」とか聞こえてくる。取り敢えず好感触の様だ。


「えーじゃあ、アイさんの席は…、最上の隣が空いているな、じゃあそこで。」

こんなこと、ホントにあるんだ…。 取り敢えず俺の隣の女子はアイになった。

決して初対面では無いが一応形式上挨拶をした。

「えっと…、俺の名前は最上幸平。よろしく。」

するとアイはクスっと笑い、俺の耳元に口を近づけてきて囁きかけてきた。

「知ってるよ…。これからよろしくね。コーヘイ…。 」


黒崎ごめん。俺さっき転校生に全然テンション上がらねえとか言ったけど、あれ取り消すわ。 転校生、最高だわ!


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