時速30000km/hで落下してきた彼女とは恋愛できますか?
理系メガネザル
第1話
6月13日。今日も天気は曇りだった。俺はジメジメとした空気に今日も苛立ちながら、俺はこの春無事に合格できた高校を絶賛サボっているところだった。
この前梅雨開けを宣言されたというのに、まだまだ快晴を拝める日は遠そうだ。
高校に行けば何かが変わる。面白い仲間にも出会えるし、恩師にも出会えるし運命の相手との出会いもある。そんな事を俺は思い、自分の偏差値からではあまり合格率が高くない高校を、受験勉強を頑張って頑張って頑張って、何とか合格した。あまりにも偏差値が低い高校に行くとそんな出会いも無いと思ったからだ。しかしそんな俺を待っていた生活は、アニメの様に華々しくも、刺激に満ちている訳でも無かった。
退屈な授業。いい奴ではあるのは分かるが、いまいち仲良くなれない同級生。やる気のあまり感じられない先輩。値段の割にあまり美味しくない学食。ただ機械的に授業を教える教師。そして俺が一番期待していた彼女との運命的な出会い、そんなものは存在しなかった。
入学してから約2か月。最初の頃のやる気に満ちた新入生は何処かへ霧散して、ここには只の自堕落な高校一年生しかいなかった
今日も遅刻ギリギリに家を出て何とか間に合いそうではあった。しかし、俺のやる気を削ぐものが降ってきた。雨だった。もう梅雨は開けたとテレビで言っていたので、いつもは持っている折り畳み傘も今日は持っていなかった。
濡れてまで間に合う必要はないなと思い、学校から少し離れた裏山と呼んでいいのかは分からないが、とにかく俺はそこで雨宿りをしていた。
俺は草の上に寝っ転がりながら目を閉じて雨が止むのを待ちながらこれからどうすれば良いのかを考えていた。ここは静かで人もあまり来ないのでなにか考え事をするにはちょうど良かった。
考えながら目を瞑っていたので少しウトウトしていたころ、なんだかゴゴゴゴゴゴゴという様な轟音が聞こえてきて、俺の眠気はいつの間にか消えていた。
草や木々が震えていたので地震か?と思い、身構えていたが、一向に揺れる気配が見えない。しかし音は止むことも無く、寧ろさっきよりも大きくなっていく。
一体何事なんだと思い空を見上げてみると、「ソレ」は在った。
直径70cm程だろうか。隕石と呼ぶには人工的すぎるが、隕石と呼ぶ以外これにふさわしい名前を俺は知らないので隕石と呼ばせてもらう。それが落ちてきていた。
しかも偶然かもしれないがあの隕石はこの裏山擬き目掛けて落ちてきているような気がした。俺は流石にこんな場所で死にたくはないので走って逃げようとした。
その瞬間、やっぱり気のせいかもしれないが、隕石が加速したように見えた。俺は何とか直撃は避けたが、近くに隕石が落ちてきて、吹っ飛ばされた。背後からは「ドゴオオン!!!」というような轟音が聞こえてきた。
俺はそれを聞いたのを最後に、気絶した。
どれぐらいたったのだろうか。俺は頬に何かが触れている。そんな感触の為目が覚めた。目を開けると、そこには見たことがあるような感じがするが、決して見たことのない。そんな矛盾を感じるような女の子が俺の頬を撫でていた。
「うわぁ!?」
驚いて俺が大声をあげると、女の子は俺と目を合わせて少し微笑んだ。
「気が付いた?」
「君は一体…?」
俺が尋ねると女の子は一瞬困った様な顔をしたがすぐに微笑んで、こう返してきた。
「わたし…? …私はアイ。 アイだよ。」
そう自己紹介すると、アイと名乗る美少女は撫でていた手を離した。柔らかくていい匂いのする手だった。
「そうなんだ…。そういえばさっきの隕石擬き、どうした?」
俺が堪らず聞いた。しかしアイから帰ってきた答えは疑問だった。
「いんせきもどき? なに、それ?」
「さっきなんかデカいのが落ちてきたじゃん! それのせいで俺気絶してたんだけど…。」
「そうなの? でも私はそんなの見なかったけどな?」
あんな轟音だったんだ。見えなかったにしろ何か聞いていてもおかしくは無い。俺が「そんな訳…」と言い、辺りを見渡すと、さっきまでの景色は何処かに消えてしまっていた。
何も無かった。さっきまで木々が合った場所には、草一つも生えていない、荒野の様になってしまっていた。 俺が何も言えずに黙っているとアイが再び喋りだした。
「それで、どう? 何かあった?」
「いや…寧ろ何もないというか…。」
俺が次の言葉をどう紡ごうかと悩んでいると、突然腕に鋭い痛みが発生した。
「痛ッ…。」
見てみると腕から血が流れていた。
「どうしたの?」
「さっき吹っ飛ばされた時にぶつけたのかな…、ハァ…嫌だな…。」
「痛いのは、イヤ?」
「そりゃそうでしょ。 Mじゃないんだから。」
「そうなんだ…、見せて。」
「へ?」
俺が呆気に取られているとアイはどこから出したのか分からないがハンカチを傷口にあてがい、止血の様な事をしてくれた。
「これなら、どう?」
「あ、あぁ。さっきよりは楽になったよ。ありがとう。」
「えーっと、どういたしまして。」
今の俺のパニくっている頭でも、はっきりと分かっている事が一つある。アイはとても怪しい。という事だった。青髪で、とても俺好みの姿をしているから、無意識に警戒心を解いていたが、何故こんなところに居るのか。それも普通なら学校に行っているようなこんな時間に。色々な可能性を考えてしまい、遂にはさっき落ちてきた隕石に乗ってアイが来たのではないか?とさえ考えるようになっていた。
怪しむような眼で見てるのに気づいたのか、アイは俺に再びコンタクトを取ろうとしてきた。
「それで、あなたの名前は?」
「え? ああ、俺の名前は最上、最上幸平だよ。
俺が名乗るとアイは最初の時の様に微笑んで言った
「そう。 あなたはコウヘイ、っていうのね。」
そしてその時気が付いた。何故アイに既視感を感じたのか。似ているのだ。俺が大好きなアニメのヒロインに顔が。性格こそ違えど、見た目はかなり近かった。
その後アイは俺に「コウヘイ、またね」というと、何処かへ歩き出してしまった。
俺はもしかしたら警察や自衛隊などに連絡をしなければならないのかもしれない。
しかし、そんなことをする気にならなかった。もしかしたらアイは危ない奴なのかもしれない。しかしそれでも俺はどうでも良かった。
俺はこの時、興奮していた。つまらなかった日常が面白くなっていくのではないかと。そんな期待に胸を膨らませていた。 そして腕の出血のせいなのかは分からないが、心臓が痛いほど激しく鼓動をしていた。アイが去っていった方向を俺はずっと見つめていた。
俺はいままで一目惚れした。等と言ってる輩は全て尻軽だの、そんなことある訳が無い、などと言ってきた。しかし今の自分の状況をみて俺は考えを改めなくてはいけないと悟った。一目惚れは存在する。俺は15年生きてきてそれを頭に刻み込んだ。
そんな事を想いながらボーッとしていると、鐘の音が聞こえてきた。そして俺は遅刻どころの騒ぎでなく、2時間目もサボってしまった事を知った。
空を見上げると、雲は消えて、快晴が広がっていた。
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