第一章 第二話

夕方になって空も暗くなってきた頃。

私はあくびをしながら校舎と寮をつなぐ道を歩いていた。

「今日も遅くなっちゃったなぁ」

本当はあのあとすぐに帰る予定だったけど、来原先輩が職員室から帰ってくると大量の資料を持った状態で帰ってきた。

あまりの多さに明日だけでは終わらないと今日少しだけ整理してきた。

「今日は…宿題はいいから…ゲームやって寝ようかな。先輩流石にいないと思うし今日はオールで…」

ゲーム廃人みたいな台詞を呟いているといつの間にか自室の部屋の前にいた。

「えーと…かぎかぎ…」

カバンから鍵を探して挿してみると…、

「空いてる?」

ドアが開いていて中からは何か物音がする。

「ど、泥棒?!で、でも違ったらいけないし…一応確認で…」

私は静かに中へ…。

耳を澄ますと男の笑い声が聞こえて、多分テレビがついていることが確認出来る…て言うかそれじゃないと困る。

もし男性教員だったらすぐに逃げよう…。

少しづつ近づいてみてみると中から料理している…多分肉か魚を焼いている音だろう。

「・・・」

汗が滲んだ手でドアノブを握る。

それを捻って中へ…。

「あ、ユンおかえり」

「せ、先輩かぁ…良かったぁ…」

「え、なんかあったの?」

「玄関の鍵は空いてたのでてっきり不審者がいるのかと…」

「それはごめん…。今日はお買い物する時以外はここにいたよ」

「もう。自分の部屋じゃないですよ…。何もとったりしてませんよね?」

「ユンの下着以外は」

「ななななななな、何してるんですか!」

「うそうそ。ほらご飯出来たから一緒に食べよ?」

「はい…。いただきます…」

何か悔しいけど、仕事もしてきたし空腹には逆らえなかった。

「お皿準備します」

「ありがとう」

何枚か適当なものを持って先輩に持っていく。

フライパンを見て作られてたのはソーセージがシンプルに焼かれていた。

それ以外に見えたのはよくわからない…魚の料理だった。

「先輩その料理はなんていう名前なんですか?」

「これ?これはアクアパッツァだよ」

「なんだか難しい名前ですね…。その魚は?」

「ただの白身魚。ユン料理に興味あるの?」

「きょ、興味はあまり…。ただ先輩の料理がまた食べたくなったら名前を覚えとかないといけないので」

「確かに。私もユンの好きな料理知りたいな」

「本当ですか?いちごを使ったスイーツが食べたいです」

「調べとく」

「やった」

話しながら準備をして机には一人では考えられないほど豪勢な料理がある。

「先輩…すごいです…」

「これくらいユンも練習すればできるようになるよ」

「うーん…生徒会があるから遠慮します…」

「そっか。でも生徒会の疲れを私が癒してあげるのも悪くないかもね」

「そうですね」

アクアパッツァの魚の身を食べる。

味が染みていて美味しかった。

「美味しいです」

「それはよかった。明日も期待してて」

「はい」

先輩の料理に感謝しながら私たちは晩御飯を食べ尽くした。


ご飯を食べた後はゲームをすることになった。

コントローラーを隣の部屋から持ってきてついでにリビングで着替える。

「おおー絶景絶景」

「・・・先輩の変態」

「好きな人のおっぱいが無防備に露わになってたら誰でも言うでしょ」

「そういうものですか?」

「そういうもの。ユンだって中等部の頃私の胸見て恥ずかしがってたじゃん」

「あ、あれは…まさか先輩と海に遊びにいくなんて思ってもなくて…」

「不可抗力?」

「はい…」

「でしょ?誰しも好きな人のおっぱいは好きなんだよ」

「で、でも私はまだ先輩のこと好きって認めてませんからっ!」

「わかってる」

一つ歳が上なだけなのに先輩は妙に余裕そうだった。

「さて、ユンの着替えも終わったからゲームしよっか」

「はい。あ、そのゲーム私結構やりこんでるんで負けませんよ?」

「ふふふ。フラグとして受け取っておくよ」

この自信過剰は一体どこからきているんだろうか。

少なくともさっきの余裕とは違う、少しアホそうな自信だった。


ー30分後ー

私の予想は的中していた。

「わ、私が…負けた?」

「はい。完膚なきまでに」

「お、おかしい…。普通アニメとかだったら先にフラグ立てた人が負けるはずじゃ…」

「残念ながら現実ですし、練習量がものをいいます。それに先輩の自信ありげな姿。あれもフラグですよ」

「くっ…。折角えっちなお願い聞いてもらおうと思ったのに…」

「何言ってるんですか…。・・・それなら私もお願い聞いてもらえますよね?」

「ええっ!?」

「だって先輩私が負けたらお願いしようとしてたんですものね?それなら私がお願いしたっていいじゃないですか」

「そ、それは…そうだけど…。え、えっちなのはなしで」

「私を誰だと思ってるんですか。そういうのにはしません。でもそうですね…。特にしてもらいたいこともないのでキープでお願いします」

「ええーつまんないじゃん…」

「別にいいじゃないですか。さて、私お風呂入るので先輩もそろそろ自室に戻ってください」

「泊まってく」

「え?」

「今日は泊まっていく」

まさかの子供みたいな発言に私は固まってしまった。

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