第三章 僕チン、女の子とデート宣言!
第十一話 お○ぱいが大きくなった&週末デート宣言
― 翌日 身体測定と体力測定が終わった放課後 ―
「んじゃ、ミーティングを始めるぞ。明日から実力テストだから簡潔にな」
「うん」
来海は鞄からノートパソコンと、付箋紙の貼ってあるパッド型コントローラーを三個取り出し、一つずつ机の上に並べた。
「これが俺の持っているe7公認のパッド型コントローラーだ」
「どれも同じに見えるけど? 付箋の番号は何?」
「三つともe7公認、《Magicool》社製、《Magical Pad @e7》だ。でも三個ともチューニングを変えてある。やりやすいのを選んでくれ」
「わかった」
「あ、接続するのはBluetoothじゃなくこのUSBケーブルでスマホに直にな。その方がコマンドがダイレクトに反映されるし、フェスでも
「うん、やってみるよ」
心雪は一つずつ接続し、対CPU戦を行う。
「う〜ん。①と②よりもやっぱり③のコントローラーが一番やりやすいかな?」
(③は俺がもっとも使いやすくチューニングした、《オメガ・オークスペシャル プロトタイプ№000》。①と②はプロトタイプがピーキーすぎてマイルドにした一般販売用のオメガ・オークスペシャルで、チューニングは初心者用と中級者用。まさか俺と同じチューニングを好む奴が現れるとはな……)
「よし。残り二つも同じチューニングにして、予備機としてフェスに持って行くから」
来海はノートパソコンにインストールしたチューニングソフトを立ち上げると、①のコントローラをつないだ。
「えっ? 一つあればいいんじゃないの?」
「プロなら同じコントローラーをいくつも持っていくなんて当たり前さ。フェス中に壊れた時の予備機や、対戦相手によってチューニングを変えたコントローラーを使うプロもいる。それに……」
「なに?」
「言い辛いがフェスに参加して、そしてプロになるなら知っておいて欲しい……」
「うん……」
「試合前に相手のコントローラーを隠したり、
『いいコントローラーだな。ちょっと貸してくれ』
って、持った途端わざと床に落としたり、指につけた潤滑油をスティックやボタンの上に付けて摩擦をなくしたり、塩水を隙間に流して壊す輩もいるからな」
”ゴクリ!”と、
「……ゲーム喫茶で読んだ歌劇団の少女漫画みたいだね」
「それ以外にもなんだかんだちょっかいをかけるヤツはいる。ま、そういう奴らからガードするのもコーチでありセコンドである俺の仕事だからな」
「大丈夫?」
心雪は不安そうな顔をするが
「その辺は安心してくれ。何しろ“あの”オメガ・オークさんの付き人をやった俺だぜ。絡んでくる奴らまとめて追い返してやるからよ!」
「う、うん。お願い来海。でも、無理しないでね」
心雪は若干、瞳を潤ませる。
(って、なんでここで乙女モードになるんだよ。やりにくいじゃないか……。おっと、まだ《Unlimited Mode》は筐体に実装されていないから、スティックやボタンは《Standard Mode》にしておくか……)
「よし、出来た。とりあえずフェスまでは①のコントローラで練習してくれ。あ、あと……」
来海は咳払いをする。
「ウォッホン! あ、あくまでコーチとしてだな、今日やった体力測定の結果を見せてくれないか?」
「いいよ。学園のアプリからスクショに撮ってSNSで送るね」
(こういうの女子は恥ずかしがると思ったが、意外とあっけらかんとしているんだな……)
”♪~ピロピロ~”
「!!」
来海はスマホのSNSを見ると、心雪はモジモジしながら……。
「や、やっぱり、きょ、去年より胸が大きくなって……。あ、体重も増えているけど胸の分だけ! ……だと思う」
「誰が身体測定を見せろと言ったぁ! 体力測定だぁ!」
心雪は慌てて体力測定のスクショを送る。
「……どう?」
「握力は男子並みだけど、そのほかは
「それって何か関係あるの?」
「入学式の日、最初に俺と対戦した後、心雪は汗びっしょりでゼイゼイ言ってただろ? 何でだ?」
「あ……」
「ただゲームをすると言ってもeスポーツの名の通り、最後に勝敗を分けるのは体力、スタミナだ」
「う、うん」
「勘違いしないで欲しいんだが、スタミナってのはただ長くゲームできることじゃない。
『ベストなパフォーマンスを続けられるスタミナ』
ってことだ。息も絶え絶えでコントローラーを動かしても、ボコボコにされたら意味がないからな」
「そ、そうだね」
「オメガオークさんだってああ見えて身体を鍛えていたんだ。それに格闘ゲームはプレイ中、息つく暇はない。一回のバトルで三十秒かかったとしても、これは心雪のような女子が百メートルを軽く走るようなモノだぞ」
「じゃあ、3match3charaなら……」
「ああ、1match三勝二敗の五戦ならなんだかんだで三分近く、2matchで勝てば六分、3Match目までもつれ込んで勝利数で勝っても、十分近くマラソンするようなモノだ。さらに予選トーナメントは次から次へと試合があり、勝ち進むほど休憩時間は短くなる……」
「僕のやってた競技カルタも、ああ見えてものすごくエネルギーつかうもんね……」
「ま、インターバル、ハーフタイムもあるだろうから、その辺はいろいろと考えておく。本格的なトレーニングは来週だ。あと俺が言うのもなんだけど、そのパッドで練習もいいが、テスト勉強もちゃんとやっておけよ。今日はこんなもんか……」
「あ、あの……来海……」
「ん? まだなんかあるのか?」
「テストが終わった土曜の午後、暇かな?」
「お、いきなりトレーニングか?」
「い、いや、その……ちょっと……
『デートして!』
……欲しいんだ……」
― 土曜の午後、
来海とて、健康的でエッチな妄想を思い浮かべる男子高校生である。
ただでさえ、周りが女子だらけの星福堂学園。
入学してから日は浅いが、絶え間なく視界に入る女子に溺れる毎日。
さらに、心雪に見せてもらった身体測定の結果。
とどめは、心雪からの、週末デート宣言。
『ねぇ来海。やっぱり来海の体で直に僕を身体測定してよ……』
胸は腕で、アソコは手で隠している裸の心雪を妄想する。
……さらに。
『パッドがうまく扱えないんだ。僕の胸を使って教えてよ……』
……さらにさらに。
『じゃあ僕は、来海の"堅いスティック"で練習するね……』
そしてテストが終わった土曜日昼、心雪の発言の意味を知った来海は、両手で吊り革を持ってうなだれていた。
(おかげで入試以上の賢者モードで、実力テストに挑むことができたぜ……)
「ゴメン来海。試験で疲れているのに付き合わせちゃって……。やっぱり一度、フェスの前に会場である《e7ランド》を下見したくてさ。一人で行くのも心細いし、オメガ・オークさんの付き人の来海なら、いろいろと知っているだろうと思って……」
― e7ランドとは、
もちろんe7の本部ビルもここに存在する。―
「き、気にするなよ。俺も受験勉強で半年以上ご無沙汰だったからな。フェス前に一度は見ておきたかったし……。あと寮生ってめんどくさいな。外出するのにいちいち許可がいるなんて」
「門限までに帰ればいいし、今じゃアプリのGPSでどこにいるか分かるから形式的なモノだよ」
「ほ、本当にいいのかよ。そ、その、し、申請の理由が……で、『デート』って……」
「うん、他の寮生に聞いたらみんなそうしているって」
(いや、それぜってぇ〜見栄張っているだろう! いや待て、星福堂のお嬢様ならむしろ、男を取っ替え引っ替え……か?)
「なぁ、学生服のままでよかったのか? 俺はかまわないけど、そ、その、で、デートなら、心雪も……それなりのオシャレを……」
「……来海」
ボソッと心雪は呟いた。
「ん?」
(しまった! なにか
心雪は頬を染めながらわずかに視線をそらす。
「僕には……デートで着る服は……これしかないんだ……。習い事も中等部の制服で通っていたし……」
「ああ、い、いや、わ、悪かった。それ以上言うな! てかフェスは大丈夫なのかよ!? 俺たち学校非公認だから、制服でいくわけにもいかないし」
「大丈夫だよ。購買部はリサイクルショップもやっていて、寮の先輩方が卒業するときに、いらなくなった家電や衣類も引き取って安く売っているんだ。何か適当に見繕ってみるよ」
「そ、そうか。い、いくら何でも女子のファッションまではコーチとして何も出来ないからな」
「ごめんね。気を遣わせちゃって」
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