意外だ!こんな作戦が成功するなんて!

『レディ~ボーデン♪ 黄金の幸せをあなたに.. レディ~ボーデン♪——』


裕子ゆうこ、今から『傷だらけの天使』やるんだけど回していい? 」


「ダメだよ。これから『夏休み!アイドル!ホップステップ』に秀樹がでるんだから」

「そう! そう! 秀樹! 秀樹! 」


「なんだよ。秀樹よりショーケンだろ! 」

「ふん」


レディーボーデンのCMか....

     いや、それより莉子りこと悠馬君を!


「わたしちょっと海に行って様子見てくる」

「おい、動いて大丈夫? えーっと ..智夏ちなつ


「うん。わたし行くね」


わたしは2人が気になって、居ても立っても居られなかった。


「しょうがないな。俺が付いて行ってやるよ」


みかん畑を抜け道路を横切り、堤防へ。

いつものようにたどり着いた堤防は、いつもの堤防と違っていた。


この堤防、だいぶ古くてごつごつしている。

それに横にある電信柱もコンクリじゃなくて木だ....


そういえば風景もどことなく違う。

トラックとかも古いタイプだ。


それより海の様子は??


「事故があればもっと大騒ぎしてるよ」

追い付いた直哉なおや君が言った。


「うん」


海も陸も何事もないように静かだ。


「あ、ちょっと待ってて。 おーい、吉岡のおっちゃん! 」

直哉君は通りがかった軽トラを呼び止め、事故の事を聞いてきてくれた。

だがやはり事故などはなかったようだ。


「 ..智夏、どこから来たの? 」

「どこからって!? 」


一瞬、直哉君の質問の真意を取り違い、思わず聞き返してしまった。


「いや、智夏、どこかの家のお客さんだろ? 」


そういうことか....

でも、どうしよう ..なんて言えばいいんだろう

..そうだ韓流ドラマの定番を使おう。


「 ..ぁあ、ちょっと思い出せないなぁ ..頭痛いなぁ.... もしかして記憶喪失かも.. 」

「記憶喪失? 何も思出せない? ..病院行くか?? 」


「ちょ、ちょっと病院はまずい! 」


病院なんて行ったら、わたしが何者?ってことになるじゃない!

どうしよう....


「病院嫌いか? ま、とりあえず裕子ゆうこの家に戻るか」

「うん」


・・・・・・

・・


とりあえず、わたしは今、この場所を離れないほうがいい。

警察とか呼ばれて東京などに連れていかれるのは避けないと..


「あ、あのさ、もしかしたら そのうち記憶が戻るかもしれないから、わたしを直哉君のところに泊めてもらえないかな? 」

「え、俺のところ? それはちょっとなぁ.. だって智夏が誰かわからないし、俺が女を連れて来たら、家中が大騒ぎになるよ。特に弟が変な噂を流しかねない! やっぱり病院のほうがいいんじゃない? 」


「そ、そっかぁ.. そういう事になるよね.... 」


「あ、あのさ、そんなに病院いくの嫌なの? 」


わたしはうなずいた。


「 ..よし、名案が浮かんだ! まずは裕子のところに行こう」


・・・・・・

・・・



「——ということなんだ。そこで名案が浮かんだ! 裕子の協力が必要だ」


「直哉兄ちゃん、その協力って何? 」

裕子.. ちゃんは怪訝そうな顔をしてた。


「まぁ、慌てなさんな! 順序だてて説明する! ①智夏は俺の遠い親戚ってことにする。夏休みにうちに泊まりに来ている。かなりの秀才で学校の成績もトップクラス」


「直哉兄ちゃんとは大違いだね」


「うるせっ! ②裕子はあまり頭が良くない 」

「ちょっと待ってよ! 私、そんなに頭悪くないんだから! 」


裕子ちゃんは子供らしく頬をふくらませる。


「わかった、わかった。続きを聞いてくれ! 俺と智夏は2人でこの家に遊びに来た。たまたま裕子は智夏に勉強を教えてもらった。『すごい! 智夏お姉ちゃんに教えてもらったら勉強がわかるようになったの。裕子ね、もっと教えてほしいの! 』『いいよ。お姉ちゃんはしばらくここに滞在するからいつでも勉強を見てあげるよ』『じゃ、いっそのこと裕子の家に泊まりなよ!! そしたらいっぱい勉強教えてもらえるし! 』..ってことで裕子がおばさんを説得するんだ。うちの親戚だって事にすれば、おばさんも承諾するだろう。


「ばか! ばかよ! 」

「何がだよ。」


「そんなのうちのお母さんが直哉兄ちゃんの家に電話したら、智夏お姉ちゃんがアカの他人だってばれちゃうじゃん」

「う~ん。そういえばそうだな。よし、そこは和樹かずきに頼むか。おばさんから電話が来たら和樹にでてもらって話を合わせてもらおう。あいつは俺より口が達者だから」



驚きだ!

意外にもこの作戦はすんなりと成功してしまった。

素朴な田舎だから成功したのかもしれない。



こうしてわたしは過去の『望月家』に数日間泊まれることとなった。


その間に莉子と悠馬君のことを調べないと!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る