電話の前の日めくりカレンダー!

直哉なおや君につかまって歩いてみたが思ったよりも足取りが重かった。

縁側沿いの廊下を歩き居間へ向かう。


そこで裕子ゆうこちゃんと由紀子ゆきこちゃんがTVを観ている。

流れているのは若い西城秀樹が足を上げながらダンスして歌って..


それよりもこのTV!!


何かで見たことある.. そう家具調テレビというやつだ。

家にある液晶テレビとは違って大きい。

わたしの部屋のタンスと同じくらいの大きさだろうか。


そ、それにここは、間違いない!

改築前の叔母さんの家だ。

だから知ってる。


トイレはそこの玄関へ続く廊下の奥にある木の扉だ。

もちろん汲み取り式のトイレだ。

扉は引き戸なのだが引っかかってなかなか開かないんだ。

小さい頃、間に合わず漏らしてしまったことがある。


居間にある大きなテーブル。

テーブルの上には必ずハエたたきが置いてあり、頭上にはハエトリガミがぶら下がっている。

昔、叔父さんに抱きかかえられた時、髪の毛が絡まって泣いたこともあった。


そうだ、お風呂はそこの扉を開けたところだ。

脱衣所の奥に、もうひとつ扉があるんだ。

そこは表のにわとり小屋に続く扉で、小さいころ寄りかかったら扉が開いてしまい、外に転がり落ちたことがあった。

その時のケガがこの生え際にある傷だ。


ここは絶対に叔母さんの家だ....



「どうした? また具合悪くなった? 」


立ち尽くすわたしに直哉君が声をかける。


佐野..直哉、望月裕子.... だが由紀子は聞いたことがない。

ここは何十年も前の世界か?


これは夢?


そうだ。電話の前、あそこに日めくりカレンダーがあったんだ。


わたしは廊下にある切り株のような電話台まで足を速めた。

昔の電話だ..


目線を上げるのが怖かった。


『昭和50年8月4日』


昭和.... 50年..


「大丈夫か? 家の電話番号でも思い出したの? 」


「ねぇ、直哉君、昭和50年って西暦何年かな? 」

「西暦? 1975年だよ。ほら、カレンダーにも書いてあるだろ? 」


見ると昭和50年の下に1975年と書いてあった。

2022―1975=47年前!!


47年前..


「ねぇ、おかあさ.. 典子ちゃんは? 」

「あれ? 典子ちゃん知ってるの?」


典子ちゃんとはわたしの母の名前だ。


「おーい、裕子! 典子ちゃんとおばさんは? 」

「病院に行ってる。ノリちゃん、熱、出したから」


やっぱり.. お母さんも存在している。


「直哉君。弟さんいるよね? 」

「なんで弟がいること知ってるの? 弟の知り合いか?? 」


そうか、やっぱり.. 弟は和樹おじいさんの事だ。

まちがいない..


じゃあ.... どうしたらいいの? ..この先、わたし

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