第4話 二人の少女の心情

side―天原 雪菜

私の幼なじみで彼氏―芦屋 優斗は、地味だが、優しい人だ。私と優斗は産まれた時からずっと一緒だった。


「おはよう!優斗君!」


「ああ。おはよう、雪菜。」


彼は毎朝眠たそうな顔をしている。そこが可愛いところでもあるんだけど。でも最近何か足りない。どこか心に取っ掛りがあるような気がする。


「どうした雪菜?何か悩み事か?」


「ううん!なんでもない!」


嘘をついた。優斗に嘘をついたことは今までほとんどない。でもこの問題は私個人の問題のような気がする。それから、いつも通り学校に到着して、私は友達に相談した。


「うーん。やっぱりレスなんじゃないの?」


レス…。私でもどういう意味なのかは分かる。でも、本当にそうなのかな。確かに私たちはまだ一度のキスもしていない。また今度誘ってみようかな…。


「かもね…。ありがとう!」


それから私は、男子の心情が気になり、放課後のゲームセンターで、仲のいい男の先輩に相談した。


「雪菜ちゃん。無理しちゃダメだよ。きっとその彼氏は君にはもう興味が無いんじゃないかな。こんなに可愛い雪菜ちゃんをほっとくなんて僕じゃ無理だよ。」


か…かわいい。そういえば、最近優斗から『可愛い』と言われたことがない。昔はよく言ってくれたのに。やっぱり私に飽きちゃったのかな。


「そうだ。雪菜ちゃん。僕と少し体験してみない?彼氏よりも先にさ。」


「え…?」


その言葉に心が揺らいだ。即答できない私に自分でも驚いた。この人ならいいのかもしれない。


「ね? まずは手を繋ぐところから……ね?」


私は、優斗に飽きられているのかもしれないと言う不安を紛らわせたかった。その心の油断が、先輩の誘いに乗ってしまった。


「ほら。雪菜ちゃんの手…。とっても温かいよ。」


私はその先輩に恋をしてしまいそうになった。でも、まだ優斗のことが決まった訳ではない。これじゃ自分から優斗を捨てたみたいだ。


「すみません。先輩、少しだけ考える時間をください…。」


「うん。待ってるよ。」


その言葉にまた心が揺らいだ。明日、優斗としっかり話そう。


でも、次の日、優斗は学校に来なかった。


side―雨宮 蛍


私は、男の人が嫌いだ。別に全員が嫌いというわけではない。だが、私に近づいてくる男はみんな私の体目当てだ。今日だってそうだ。またナンパされた。しかも悪手。最悪だ。


「いいじゃんかよ。俺たちと遊ぼうぜ?」


「嫌です!離してください!」


本当に最悪だ。この見た目は、周りからは羨ましがられるが、この見た目のせいで、中学校では、男子に色目を使っているといじめられた。

ほんとうに。男なんて滅びればいいのに…。


「おまわりさーーーん!ここで女の子に手を出そうとしている変態がいまーーーす!助けてくださーーーーーーーい!」


突然声がした。ナンパ野郎達は焦ったのか、一斉に逃げていった。叫んだであろう人にお礼を言わないと。


「待ってください!」


恐らく後輩であろう男の子だった。彼も他の男と同じなのかな…。でも、お礼は言わないといけない。


「あの、ありがとうございます。」


これで助けた代わりに『おもてなし』をしろなんて言われたらどうしよう。


「いえ、大丈夫ですよ。それより怪我とかありませんか?」


私はその時、この男の子に恋をしたのかもしれない。生まれて初めて、恋をした。この紳士的な彼に…。あっ。連絡先交換しないと…。


「大丈夫です。それよりも、あなたの連絡先を教えてくれませんか?」


彼の名前は何かな。趣味は?住所は?特技は?

彼のことがとても知りたい。彼のことを考える度に体が疼く。


「いえ!大丈夫なら、良かったです。急いでいるので、サラダバー!」


行ってしまった。連絡先ぐらい知りたかったな…。でもそんな紳士的なところを好きになった。


「また会えるかな。」


いいや……。どんな手を使っても会わないとな〜…。


それからの行動は早かった。彼の連絡先を知っている子に連絡先を聞き、さらに今日は学校を休んでいると聞いた。


「大丈夫かな……。心配だな……。」


そう考えていると授業なんて受けている場合じゃなかった。私は授業を抜け出し、彼に電話した。どうやら、大丈夫らしい。良かった……。

そういえば、優斗君、彼女とかいない…よね?

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