全身の約90%をサイボーグ化させた桃太郎とミュータントドッグ&キジドローン&ゲル化モンキーVS工場長マツオカ(64) 定年前の聖戦(ラグナロク) #2
むかしむかし…程でもないむかしのこと
川上から流れてきた大きな桃をおばあさんが自慢のバイオアームで拾い上げると、中には謎の青年がおりました。
おばあさんは彼に【MOMO☆TAROU】と名前を付けました。
その後、なんやかんやあっておばあさんはMOMO☆TAROUを自身の所有するハーレーのサイドカーに乗せると都市へと向かいました。黒い革製のライダージャケットを羽織り、同じく黒い革製のグローブを手にはめてハンドルを握り風を切りました。
「あんたにいいもの見せてやろうかね」おばあさんはそう言うとMOMO☆TAROUのため、道路脇に立つ制限速度40㎞の道路標識に銃身の切り詰められたシングルショットガンの銃口を向け、引き金を引きました。撃ち放たれた散弾は一瞬で標識をハチの巣にし、弾みで宙を舞いました。
「おばあさん、なぜ標識を撃ったのです?」当然MOMO☆TAROUは聞きました。
「昔の血が騒ぐんだよ。あれは私がまだ若い頃だったのさ、おんなじバイクに跨ったオールバックでサングラスをかけたガタイのいい男が後ろに子供を乗っけてね、デカいクレーンの付いたトラックに追われてたのさ、その男が逃げる途中で片手で持ったショットガンで標識をぶち抜いたのさ…ほれ、あの標識だよ。」
そう言われてMOMO☆TAROUが言われた方に目をやると、ど真ん中に風穴の空いた標識がありました。
「綺麗など真ん中だろう?そいつを子供を乗っけて不安定な状態で片手でズドン、さ。」
「それで、その人たちは逃げきれたのですか?」
「さぁね、ただ最後に見えたのは宙を舞うトラックだったよ」
おばあさんの思い出話をしながらハーレーの空気を震わすエンジン音を聴くMOMO☆TAROU、風を切る感覚を味わいながら再び問います。
「今はどこへ向かっているんですか?」
「ん?あんたの装備を調達しようと思ってね、何も無しじゃ鬼には勝てないだろうさ」
「私にはこの刀があります。桃の中に私と一緒にあったこの刀が。」
そう言うとMOMO☆TAROUは胸元に抱いた刀を鞘から引き抜いて見せた。
ルビーのように真っ赤な刀身、ガラスのように透き通った刃紋を持った不思議な日本刀でした。
「それだけで勝てるかってんだい、防具だって必要さ。それにあんた、鬼を撃つ覚悟があるって言っただろう?」
「はい、鬼は必ず私が討ち取って見せます」
「例えそれが、人の身体を捨てることになっても誓えるかい?」
「構いません、私の使命です」
そう言われておばあさんはニカっと笑うと、運転を続けながら言いました。
「今あんたを連れて向かってる場所はそういうモノの取り扱いの多い町さ」
「なんと言う町なんです?」
「ナマヤケチキンシティさ」
「なんですか、その…食中毒起こしてそうな町の名前は…」
「ああ、そうさ。そこじゃ年がら年中食中毒祭りさ」
「何というか…胃に穴が開きそうな町ですね…」
「ああ、そうさ。どいつもこいつも胃に穴が開いてるさ。ハチの巣じゃ。」
MOMO☆TAROUは一抹の不安を胸に町へ向かうのでした。
「ところでおばあさん」
「なんだい?」
「いつまで…MOMO☆TAROUなんです?」
「キラキラしてて今時でいいだろう?」
「いちいちチラつくんです…☆が…」
「なんだい、嫌かい?それじゃ…地味だけど桃太郎にするかい?」
「そうしていただけると幸いです」
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