三首目 忌引き 短文付

 姿変え

  大空に発つ 

   白煙に

    探す面影

     語らず蒼く



 母が死んだ。


 私に世界を与え、世界を広げ、世界へ送りだしてくれた人。

 たった一人、かけがえのない人が死んだと言うのにこの世界表は表情一つ変えない。

 空が悲しみ、雨を降らすどころか雲一つ無い晴天だ。

 私は火葬場の煙突から上がる白煙を見上げて頬を拭う。

 話したいことは生前に話したはずなのに、まだ何かを母に語り掛けて欲しい。

 けれどそこに有るのはただ立ち上る白煙だけ。

 そよぐ木々から野鳥のさえずりが聞こえる。

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