第25話 夏ももうすぐ終わり

 8月X日


 あれから数日、学校の課題を済ませ、久しぶりに地元の友達と遊んだり、稽古やレッスンに行ったりと充実した日々を送っていた。


 夏休みももうわずかだ。夏休みが始まった頃には思いもしなかったな。毎日ゲームして課題して、たまに友達、、地元の友達と遊ぶのかなとか思っていた。稽古で引き締まったことで浮き出てきた自分の腹筋をなでる。なかなか形がいいと道場の先輩にも好評だ。


 さて、今日はモデルの仕事が入っている。そう、『モデル』の仕事だ。最初に林マネージャーから話を聞いた時は思わず「へぇーすごいですねぇ。モデル、モデルかぁ。えっ、モデルですか?」と段階を踏んでも半信半疑だったのだが、掲載予定の誌面を見て納得した。


 スマート系からジャラジャラ系まで取り揃えた

 ヴィランズタレント御用達のファッション雑誌だった。なんならサンプルとして渡された8月号には日向先輩が載っていた。チョイワル大人ファッションで普通にかっこよかった。


 時刻は朝の5時と早朝なので眠気もあるが、初めての仕事にちょっとワクワクしながら林さんの送迎で現場入りする。公園・遊歩道・ショッピングモールで撮影を予定している。


 まずは公園、何着か着替えつつ撮影をしていく。暑い。この雑誌が発売されるのは冬を目前にしたころ、手に取った読者さんが参考にするのを見越して撮影するのは冬服。照りつける夏の日差しの中、涼しげな表情をしなければいけないのだ。林さんやスタッフさんが大きなうちわであおいでくれたりメイクさんが汗を拭いてくれるがとにかく暑い。なんなら人生で初めてうっすらメイクをされたのだがそのメイクも暑い。


 水分補給も挟みつつ公園での撮影を終え遊歩道へ、風が吹いており幾分かマシに感じる。カメラマンさんのオーダーに答えてポーズをとっていく。スーツ系の服が似合うねと褒めてもらえた。


 最後にショッピングモールへ、開店前だが冷房がきいており涼しい!これまでで1番リラックスした表情で撮影できた。青果コーナーや本屋さん、カフェを間借りして撮影をして外ロケは終了。あとはスタジオでインタビューを受けて紹介写真と表紙に使うかもしれない写真を撮ればお仕事完了である。


 少し時間があくとのことで、林さんと開店したショッピングモールで食事をとって、ウインドウショッピングをする。メガネ店を見た際ブルーライトをカットするメガネが目に止まった。さすがに学校でサングラスをするわけにもいかないが、これならいけるのではないか?と思いつき、色の濃いものを購入。


 その後移動して出版社さんでインタビューと写真の撮影をこなす。インタビュー中に今日撮った写真を見させてもらった。モニターに映る自分はなかなかかっこよく見えて不思議な気分だった。お気に入りの写真はありますか?と聞かれたので、悪ぶってそうな写真と無邪気な写真、色気がだせた写真の3枚をピックアップしておいた。


 夏の終わりに楽しい仕事ができたと思う。

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